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喪失を知るからこそ、救える人がいるのかも  『エールは消えない』を読んで

本書を買った当初、1章の途中から辛くてつらくて
これ以上は、どうしても読み進められなくて
いったん本棚に戻しました。

たぶん半年以上は寝かしただろうか、
タイミングが巡ってきて読み始めたら、
やっぱり涙が溢れて胸が締め付けられて
たまらなかったけど、今回は一気に読了しました。

著者の志村季世恵さんは
日本でダイアログ・イン・ザ・ダークなどを開催する
ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」の代表理事。

そして、
大切な家族を病や自死、事故死などで失った方々と
向き合う人。

志村さん自身も含め、
深い悲しみを抱えながら
誰かのエールを受け取って再生していく
ノンフィクションの物語。
樹木希林さんの最期の日々に向き合った
ストーリーも掲載されていました。

『エールは消えない』というタイトルの通り、
エールを送られた人は、
また別の誰かにエールを送るのです。
それは循環していく、ということ。

それぞれに
簡単には癒えない悲しみを抱えながらも
誰かを助け、共に回復していく姿は胸に迫ります。

自分自身もそうですが
たぶん誰もが、
人に開示できない悲しみとか絶望とか
胸の奥底にしまっているんですよね。
「実は…」と誰かに打ち明けられたとしても
それは、人に言える状態にまで編集したもののはず。
時が来なければ言えないこと、
できれば墓場まで持っていきたいことは
きっとある。

だからこそ、
本書に登場する人たちの
喪失と再生のストーリーは
読む人すべての「ほの暗い」部分を
静かに優しく照らしてくれるのだと思います。
本書との「ダイアログ」を通じて、
少しでも救われる人はいるかもしれない。

ぜひたくさんの人に手に取ってほしい一冊です。
ダイアログ・イン・ザ・ダーク、
気になりつつ行けてなかったので
近いうちに予約したいなと思います。

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