実録 ドラキュラ菜園に立つ 9

悩ましのズッキーニ

受粉の必要な野菜は育てない、そう誓ったではないか。しかし人の心は移ろいやすい。ホームセンターでズッキーニの苗にときめいた私の心はコンマ5秒で変節したのである。転びましたとも、ええ。だってズッキーニは私の大好物である。せめて受粉の確率をあげようと2株植え、周りにもマリーゴールドやゼラニウムなどの花を配置し、虫達に「ちょっとここ、良さげなスポットじゃない?羽休めとく?花粉集めとく?」と思わせるべく昆虫フレンドリーな雰囲気を提供してみる事にした。それと後は、畑により近い距離に住んでいる母に受粉をお願いした。結局また母をこき使う作戦である。まったく困った娘である。

↑植えつけて二週間ぐらい。葉が展開してきた。ちなみに、葉に白いまだら模様があり「すわうどんこ病か」と焦ったが、これはこういう模様なのである。

難しいかに思われたズッキーニはしかし、最初のうちは予想に反して、かなりの有望株、好調であった。どの野菜より早く(二十日大根を除く)すくすく育ち、立派な姿に胸の高まりは抑えられない。ほら、もう花が。

ちなみに、朝の開花している状態を収穫する「花ズッキーニ」という食べ方もある。高級レストランなどで出てくるそうである。でも、雌花だと受粉してるかもしれないのに、もったいなくないですか?というか、そもそもそんなもの私が収穫できるわけがない。朝5時ごろ、寝る前に自転車飛ばして畑に行けばいいのだが、その時間は朝日が照っていても私の体内時計ではまだ前日の深夜寝る前なのであり、おっくうである。

↑ホラ、もうなんかそれっぽい。君らは受粉しているのかね。そうなのかね?

そんなある日のこと。2〜3日目を離していたら。

お母さんありがとう、立派なズッキーニですよ。(自転車のカゴにそのまま入れて運んだので若干表面に傷がついてしまった。残念)

まずは素朴に何の工夫もなくズッキーニのみの炒め物としてみた。野菜炒めは、いろいろ入れるのも美味しいが、一種類だけでシンプルに素材の味を味わうのもオツなものである。例えて言うならば、シンガーソングライターがオーケストラなどと共演したり、はたまたシンガーソングライターが多数舞台上で夢のコラボ、などは豪華な感じがするが、結局ひとりでギター一本の弾き語りの方がよくない?みたいな、野菜炒めにはそういう側面があると思うのだ。ジェームズテイラーとボブディランとエルビスコステロとポールサイモンとニールヤングが一堂に!とか言ってもやっぱり一人ずつ聴きたくないですか。

ところが、幸運は長くは続かなかった。その後あまり受粉は芳しく無く、受粉できなかった実は道半ばにして滅びていくのである。つまり、端の方から黄色くなり、大きくならずに腐ってゆくのだ。ああ、なんてもったいない。ただ、分かった事にはこの滅びかけのズッキーニは、早いうちなら食べられる。というわけで、小さなズッキーニをいくつか収穫しているうち、鬼門の梅雨がきてしまった。

ウリ科の宿命、うどんこ病。重曹を撒くなどして対策はしてみたが、やはり出ちゃうものは出ちゃうね、はは。ダメである。というわけで、梅雨に入り収穫も出来ず、痛んだ葉を取る日々が続いたが、宿命の不治の病、モザイク病も出てきてしまい残念、そのまま終わってしまったのであった。ウイルスに強い苗、という触れ込みだったのになあ。もう少しアブラムシなどに気をつけていればよかったのか。さらに気づいた事には、ズッキーニの旬にはスーパーには大変安値で立派なズッキーニ達が並んでおり、自分で栽培する意義について若干疑問を感じざるを得ないのである。来年はズッキーニは植えないかもしれない。ちぇっ。

⭐︎ズッキーニ 素人栽培難易度・・・高、夜型人間フレンドリー度・・・低

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