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薪割りに見る人生の味わい方

    我が家に薪ストーブがある。

 薪ストーブの燃料である薪は、1シーズンで実は何トンというかなりの量が必要になる。ホームセンターや森林組合などで購入している方もいるかもしれない。でもうちは、ありがたいことに、近所の方から山の間伐材をもらうことでなんとか回すことができている。薪割りは自分たち夫婦で。この作業がわたしは大好き。体は酷使するが、ついつい没頭してしまう趣味のようなもの。語り出すと止まらなくなってもしまう。そして先日、この薪割りから、私は人生の教訓を得た。

 我が家の薪割り環境は、斧と手動型の油圧機である。斧を使えば、真っ直ぐ振り下ろすと、丸太が真っ二つに割れる。1回で割れるとなんとも晴れ晴れした気持ちになれる。「自然の中で生きてる!」と開放的な気持ちになれる。これこそ田舎の贅沢だと思っている。
 
 一方の油圧機。薪を割る仕組みは、丸太の正目を歯形に向けて台に乗せ、丸太の後ろ側から10トンの油圧の力でギッギッと歯形に薪を押しつけて、割り裂いていく。電動やエンジンではなく、手動でやるから地味だけど、むしろそこが好き。枝の割れ目のある幹の部分や、広葉樹などの固い木は、斧をいくら振り下ろしても簡単には割れてくれない。そんな丸太を確実に割りたいときに登場する。

 先日、油圧機でさえなかなか割れない強者に遭遇した。繊維が複雑に入り組んでいる。20分くらい格闘したけど、割り裂けない。なぜか歯が食い込まない。どうしたらいい?途方に暮れた。やはり何十万もする電動やエンジンを買うしかない?小さな薪ストーブのために大金はたく?それか、割れない丸太を手動の油圧機でうまく割る方法を、誰か気の利く人がネットやYouTubeに載せてないだろうか。

 疲れと腰の痛みを感じながら、丸太を見おろし、ぼーっと立ち尽くしていた次の瞬間、はっとした。私は今まで、歯の当たる部分にばかり気を遣っていて、薪を押し込む後ろ側にはあまり注意を向けていなかった。大事なのは、押し込む側の角度だったのかも…?早速、押し込む側に気をつけてセット。ギッギッ…!メリメリ…!パカッ!割れたー!

 この一連で気づいたのは、自分の重要だと思っていた視点を思い切って変えてみることで突破できるものがある、ということ。思い込みや固定観念を取っ払うこととも言える。
 
 これは人生も同じなのでは。
 
 私って、と振り返る。壁にぶつかる度に他人に聞いたりYouTubeに頼ったりを簡単にしがちだったなぁ。手っ取り早く解決したい気持ちが先行していた。でも、あれこれやって視点を変えてみること自体に、世界の広がりや面白さみたいなことが、あるんじゃないか。自分の思い込みって意外とあるもの。そこを疑う。さらに思い切ってとっぱらう。すると同じ景色なのに変わって見えてくる。そこにあるものこそ、人生の深み、味わいというものなのでは。そう考えると、なんとなく自分に感じていた八方塞がり感も、あれこれやってみることで出会う新しい景色と楽しみに、満ち溢れているように見えてくる!すごい発見ー!!

 というわけで薪割りの魅力、伝わったでしょうか。私にとって趣味であり、黙々と自分との対話ができるかけがえのない作業。そして人生を楽しむための気づきが得られる作業、薪割り。これだからやめられない、止まらないんだー!


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