「名前の無い」
名前の無い 顔がいくつも
拡がってゆく 街を埋めてゆく
呼び合おうにも 呼びかける名前がそこにはなく
躊躇って でも 振り返って
呼び止めようと思ったのに
呼びかける 呼び止める その術がない
幾つもの顔が 私の傍らを行き過ぎてゆく
時に肩にぶつかり 時に足に躓く
けれど
名前を持たない顔と顔が
向き合う その場所がない
身体の何処が触れ合おうと
視線の何処が交差しようと
もはや 取り返しようのない
欠落が
見上げる空に立ち込めた雨雲のように
この街を 呑み込もうとしている
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