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「陽炎の街」

向日葵がぎらぎらと
朝日を乱反射させる
夜明け

東からの光は のびてのびてのびて、
街を真っ二つに切り裂く

見えない亀裂は
人を呑み込み、
影を呑み込み、

気づけば空っぽの 街
残骸と呼ばれる 街

一瞬の空白

ねえ、
ここでの主人公は誰れ?
あなた? 君? 私? それとも?

裂傷した街を闊歩する
一番に陽光を浴びた向日葵が

裂傷した街を闊歩する
二番目に陽光を浴びた朝顔が

裂傷した街を闊歩する
三番目に陽光を浴びた油蝉が

でも

もはや誰も主人公にはなれない
裂傷した街はもはや
誰も受け付けない

気づけば
呑み込まれたはずの人間が
ゆらゆらと陽炎のように再び
立ち昇り、立ち昇り、
バスに揺られ、電車に揺られ、
まるで昨日までの風景
繰り返されるばかりの、

しかしそれは
今日からの風景
街は裂傷した
もはや元には戻らない
裂傷に気づかぬ人々の
傲慢さが街を闊歩する
ゆらゆうら ゆらゆらり
世界はそうやって
今日も巡る
ゆらゆらり ゆらゆうらり
二度と

元には戻らない

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