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「紅い川、紅い雨」

日没とともに響いた産声の
向こう岸では今
三途の川を渡り始めた影が
ちらちら 揺れる

法で裁けぬ罪が
一体幾つ あるのだろう
法で裁けぬ罪ばかり
今日も巷に降り積もる

声を上げれば逆に
傷口を押し広げられ
血は瞬く間に溢れ出す
河となり、大河となり
やがて
轟々と 流れ出す

紅い河よ 紅い河よ
何も望まず 何も願わず
ただ浪々と 流れてゆけ

昨日そこにあった樹がまたひとつ
雑踏に根こそぎ引き剥がされ
昨日あったはずの樹がまたひとつ
降り続く紅い雨に倒れ 往く

この眼を潰したなら
見えるものがあっただろうか
この耳を潰したなら
聴こえる声があるだろうか
そんな思いにかまうことなく
今日もまた 紅い 雨が 降る

紅い雨よ 紅い雨よ
何も望まず 何も惑わず
ただひたすらに 降りしきれ

誰かが潰した足痕が
今日は誰かの枕木になり
誰かの潰した喉元が
今日は誰かの声となり
それでもここに在ったよ と
誰が覚えていただろう
誰が覚えているだろう

紅い河よ 紅い河よ
ただ浪々と 流れゆけ
紅い雨よ 紅い雨よ
ただひたすらに 降りしきれ

私は

私はここで 私の歌を歌う
惑い迷い、それでも覚えている と
傷つけ傷つきそれでも、覚えているよ と
誰が何と言おうとも 何が終り何が始まろうとも
覚えている と 覚えている と、そうして
歌い続け、誰ののためでなく私のために
私は歌い続け、そして、

この夜を 明ける

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