約束の記憶 第三章 8話
この物語はフィクションです。
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恵は頭痛が治らず、仮眠室で横になっていた。
カーテンの向こう側から近づいてくる足音で目が覚めた。
「せんぱーい、大丈夫ですか?」
後輩看護師の双葉が囁き声でベッドのそばにやってきた。
「うーん、まだ痛い」
「あとは私たちに任せて帰ったほうがいいですよ」
「もう少し寝たら治りそうな気がするけど、帰ったほうがいいかな」
体を起こして、双葉の顔を見た。
「心配してくれてありがとう。双葉ちゃんこそ、体調はどう?」
クスリと笑った。
「それが‥こんなときに‥なんなんですけど‥。実は妊娠したんです。先輩がワクチン打たなかったこと聞いて、私もやめて本当によかったー。体調は問題ないです」
満面笑顔で喜んでいる。
以前の私なら喜び半分、妬み半分だけど、今は喜びしかない。
その笑顔をみているだけで泣きそうになる。
「よかった。本当によかったね。体無理しちゃだめだよ」
「もうどっちのセリフですか。ちゃんと帰って休んでくださいよー」
「うん、そうする」
頭は痛いし、クラクラしながら、タクシーに乗って家に帰った。
夫には知らせずに帰ってきて、チャイムを鳴らそうかと思ったら、玄関の鍵があいている。
ん?なんで?
家に入ると玄関に男性の革靴があった。
お客様?職場の人?
奥から声がする。
「勘弁してください‥」
絞りだすような、泣いているような声。
え‥
ありえない光景を目にして、恵はそのまま倒れてしまった。
つづく
(次回は6/22にUPします)
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