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約束の記憶 第三章 8話

この物語はフィクションです。

ここまでのお話はマガジンからどうぞ↓
https://note.com/saorin11/m/me6fc5f2a8b10


恵は頭痛が治らず、仮眠室で横になっていた。
カーテンの向こう側から近づいてくる足音で目が覚めた。

「せんぱーい、大丈夫ですか?」

後輩看護師の双葉が囁き声でベッドのそばにやってきた。

「うーん、まだ痛い」

「あとは私たちに任せて帰ったほうがいいですよ」

「もう少し寝たら治りそうな気がするけど、帰ったほうがいいかな」

体を起こして、双葉の顔を見た。

「心配してくれてありがとう。双葉ちゃんこそ、体調はどう?」

クスリと笑った。

「それが‥こんなときに‥なんなんですけど‥。実は妊娠したんです。先輩がワクチン打たなかったこと聞いて、私もやめて本当によかったー。体調は問題ないです」

満面笑顔で喜んでいる。
以前の私なら喜び半分、妬み半分だけど、今は喜びしかない。
その笑顔をみているだけで泣きそうになる。

「よかった。本当によかったね。体無理しちゃだめだよ」

「もうどっちのセリフですか。ちゃんと帰って休んでくださいよー」

「うん、そうする」

頭は痛いし、クラクラしながら、タクシーに乗って家に帰った。

夫には知らせずに帰ってきて、チャイムを鳴らそうかと思ったら、玄関の鍵があいている。

ん?なんで?

家に入ると玄関に男性の革靴があった。

お客様?職場の人?
奥から声がする。

「勘弁してください‥」

絞りだすような、泣いているような声。

え‥

ありえない光景を目にして、恵はそのまま倒れてしまった。


つづく
(次回は6/22にUPします)

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