約束の記憶 第三章 6話
この物語はフィクションです。
ここまでのお話はマガジンからどうぞ↓
https://note.com/saorin11/m/me6fc5f2a8b10
【一葉との出会い】
「すみません!ワクチンの接種場所はどこですか?」
有沢恵は声をかけられ振り向くと、イエローグリーンのニットを着た女性が立っていた。
どこかでみたことがあるような。
「ご案内しますね」
「ありがとうございます。広くて迷っちゃって」
「そうでしたか。わかりにくくて申し訳ないです」
正面玄関から入れば迷うことはないはずだけど、どこからきたのかしら。
「あのぅ、看護師さんはワクチン受けました?」
「え?」
「いや、受けてますよね。当たり前のことを聞いてごめんなさい。ここまできて、おかしいこと言うようですが、受けるのを迷っているんです」
なんと答えようか、迷った。
「こんなこと私が言うのもおかしいけど。迷うなら受けなくていいと思います」
「ウイルスの感染よりもワクチンの方が怖いということですか?」
ぎくっ
「いえ、ワクチンといえど異物を体内に入れることには変わらないので、嫌だと思えば直感に従っていいのでは」
「なるほど、無難な回答ですね。で、看護師さんは受けたのですか?」
一瞬迷った。
「受けていません」
なぜだかわからないが、ごまかしはきかない気がした。
「そうなんですか。じゃあ私も受けずに帰ろうかな。ありがとうございました」
なぜか、満面笑顔で彼女は去っていった。
なんだったんだろう。
なんとなくどこかでみたことがあるような気がした理由は後になってわかった。
つづく
(次回は6/12にUPします)
あなたの好きなことが誰かの笑顔にする、ハッピーシェアリングの活動費にさせていただきます!