空白の間
手を伸ばせば届く距離にきみはいるのに、ぼくはその手に触れることができない。
きっとぼくがそっと触れたその瞬間、きみは消えていってしまう予感がするから。
それが怖くて、苦しくて、そんな悲しい思いを味わいたくなくて、ぼくは距離を詰めることもせず、ただ少し離れた場所からきみのことを見守っている。
きみも、ぼくに目線を合わせ優しく微笑んでくれている。愛に満ちた、優しげな眼差しで。
でも、ぼくは気づいてる。
きみが二人の間にある数センチの間を埋めようとしないことに。
きみのつま先はいつだって、ぼくのほうを向いてはくれないんだ。
それでもきみを失うよりかはましだから、ぼくはその事実から目を背けるように一歩後ろに下がる。
きみとの距離が少し遠くなるけれど、きみを失わないためにぼくは我慢する。
きっとそれが、ぼくたちの関係を守るために必要だから。
最後までお読みいただきありがとうございます✽ふと思い出したときにまた立ち寄っていただけるとうれしいです。