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ちいさな詩たち🌜

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毎週月・水の23時に詩を投稿しています💭※写真は、「Pixabay」さんというサイトから使わせていただいています。
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2023年7月の記事一覧

もしも『kindness』なんて名前の香水があったら、一体どんな香りがするのだろう。ワンプッシュして家のドアを開けたら街中ですれ違う人はどんな気持ちになり、そしてその街はどんな景色になるのだろう。 そんなことを考えながら、わたしは心のなかに透明でやわらかい、甘い香りを振りかける。

つらい気持ちを経験したからこそ、だれかの心に寄り添える。 不安な気持ちを経験したからこそ、だれかの不安を取り除く言葉をかけられる。 苦しい経験なんてできればしたくないけれど、それがいつか自分とだれかにとっての未来への希望となりうるなら、そんな人生の季節も必要なのかもしれない。

だれかのことを思い浮かべてお土産にコーヒーを買うこと。 だれかが自分のことを思い浮かべて焼き立てのパンを買ってきてくれること。 そんなお互いへの思いが長くゆっくりと積み重なっていって、そのひととの関係もゆっくりと時間をかけて温かくなっていく。 そんな関係が日常にはあふれている。

今この瞬間を生きることがすごくつらいときがある。どんな言葉も、どんな時間も、どんな瞬間も意味をなさないときがある。そんなときはもう自分のなかにあるものすべてを一度投げ捨てて、ただ布団のなかでくるまっていればいい。起き上がるのが夜中になったっていい。それがきっと遠い未来を救うから。

枕元に置かれた数冊の本。絵本、小説、星空の写真集...。わたしが夢のなかにいる間、その本たちもなにか夢をみているのだろうか。それとも、それぞれの本に託された夢を背負って、だれかの夢のなかにそれを届けにいってるのかもしれない。本はそれほどまでに、夢や希望を与えてくれるものだから。

音符が自分の音色以外を奏でず、それぞれの一音だけを全うして奏でるように。その一音一音がとても綺麗なように。私たちもただ、自分に与えられたひとつだけの音色で人生を生きぬいていけばいいのかもしれない。だれかの音を真似したり羨んだりする生き方ではなく、自分にしか奏でられない生き方を。

例えば深夜2時に食べる、温かいうどん。例えば泣き腫らした目で見る、YouTubeの画面。例えば夜風にあたりながら見上げる、淡い月とちいさな星たち。そのどれもがわたしの味方で、生きる理由を与えてくれる。大丈夫。世界は、なにも否定せず、ただそこにいてくれるもので満ちあふれている。

日曜日の夕方。イヤホンをそっとさしてお気に入りのラジオを聴く。大好きな歌手の心地いい声とトーク。多くのひとと同じ時間を共有しているのはわかっているけれど、どこかわたしだけが聞いているような感覚に浸ってしまう。ラジオでしか得られないあの穏やかなひとときは、わたしにとって大切な時間。