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紫の上があり得ないワケ

日本が誇る中世の長編小説「源氏物語」。授業などで一度は読んだことがあるのではないでしょうか。主人・光源氏(超プレイボーイ)の、数多いる恋人や妻の中で

1番のヒロインである「紫の上」

彼女は「美人・賢い・性格が良い」と非の打ち所のない人間として、実は読者からあまり人気がありません。(おそらく感情移入出来ない・あり得ないと感じるのでしょう)

でも彼女が「あり得ない」ワケは、実は他にもあると思うのです

以下、理由を述べていきますので興味がある方はお付き合い下さい。 

まず「平安時代の貴族の生活を考える」、これが大事だと思っています。

①食生活の貧弱さ
当時の都は、現在では観光地として人気の京都。よく知られた話ですが、様々な理由により栄養バランスがすごく偏った食生活でした。(みんな不健康)
ここから更に注目。当時女性が物を食べることは「はしたない」とされていたため、極力食べないようにしていたそう。要は栄養不足。よって女性の平均寿命は、男性より短かったそうな。なのに15kgもあるという十二単を着て生活していたのだから、何の罰ゲームかと思います。

②衛生状態が非常に悪い
日本人ってお風呂好きですよね。でも当時は入浴の習慣がなかった。そして、あの長い髪の毛(150cm程あったそう)を洗う頻度。諸説ありますが1ヶ月に1回あるかないか。

マジで!?

私だったら耐えられない。ちなみに皮膚病は、当時の貴族の死因のトップ3に入ってます。(すごい世界だな) いかに不衛生だったかよく分かります。

③プライバシーが全くない
住まいは壁がなくやたら広い空間。いわゆる寝殿造りというやつです。常に仕える者が側にいるのだから、気が休まりません。なぜ壁を作らなかったんだろう?(冬めちゃくちゃ寒いじゃん) 本当に現代の感覚から考えると、不思議なことばかりだ。まあ不便は感じても、当時は疑問に思わなかっただろうな。
 
④精神的に参ってしまう日常
太陽の光を浴びると、体に必要な物質(セロトニンやビタミン等)が作られます。また、体を動かすとストレス発散にもなります。
ところが成人した貴族女性は、基本一日中薄暗い部屋の中にいます。しかも一夫多妻制の通い婚なので、「夫の来訪を待つ」だけ。外に出られないし常に受け身の姿勢だし、ムシャクシャしそう。私はムリ。

ちなみに部屋でも立って歩くことなど稀です。筋肉も弱りまくりでしょう。それで15kgの着物に150cm以上の髪って… ! 加えて食事はあまりしない。本音だって言えない。まるで人形ですな。でも、生身の人間がこのような生活をしていたんです。

とにかくもう、病気にならない方が不思議な位。

「心身ともに健康(元気)な状態である」ことが、非常に難しかった訳です。
そんな状態じゃ、不機嫌になったり他の妻に嫉妬したり、やる気を失くしたり。当然でしょう。
あの時代は医療が発達していなく分からないことが多かったので、人の身に起きる不思議な現象は「物の怪が憑いた」と言われたりしていました。物語の中でも光源氏の恋人が、元恋人の物の怪に憑かれて亡くなる場面があります。

しかし女性に限って言うと、
*ストレスによる、当時の女性として相応しくない行動 (ヒステリー)
*女性ホルモンのバランスの乱れによる不調
*不摂生・体力不足が故の病気 (+恋愛による諸々を絡めたもの)

などが原因ではないだろうか。以上のベースを踏まえた上で、

*子どもの頃、光源氏に拉致され妻になる。
*子どもが生まれない(当時、子どもを産めない女性は大変肩身が狭かった)
*恋敵である女性の子を引き取り、育てさせられる 
*中年になってやっと落ち着けると思ったら、皇女(自分より格上)が妻になる 

それでも紫の上は、色好みも度を超えた遊び人・光源氏を許し続けたので

「すごい」し、「あり得ない」

と私は考えるのです。彼女は37歳で原因不明の病にかかりますが、(今までのストレスが理由とされる)

むしろよく保ったなと思う。もっと早くに病になっても全然おかしくない。

当時は血筋や美しさも大事でしたが、「後ろ盾」この存在がなくては女性が結婚して生きていくのは大変でした。それを持たない紫の上は、籠の中の鳥ならぬ金魚鉢の中の金魚。まるで韓国アイドルのように「完璧でいなくては」いけない。

現代女性から見たら、地獄だわ

そういえば昔、日本文学が好きな人達で「源氏物語の女性登場人物になるなら、誰になりたいか」と話したことがあります。様々な意見が出た中で最終的に一致した結論は、

「紫の上はイヤだよね」

でした(^_^;) やはり「完璧人間過ぎる」と同時に「大変な苦労人」イメージがあるようです。作中で彼女は、花は桜・季節は春で例えられます。ですが私はむしろ、花なら泥水を吸って美しく花を咲かせる蓮・季節ならその寒さを耐え忍ぶ冬だと思います。

もし全編読まれたことのない方は、漫画などでもいいので読んで見ることをオススメしたす。新しい発見があるかもしれません。



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