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天使のお仕事~合コン編③

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「さすがはカニちゃん」

私の改造計画の表を見ながら、リリーお姉ちゃんは満足げに頷いた。

「このリストにあるお店、ほとんど一流店よ!紹介がないとなかなか行けないわよ。あんたよかったわねぇ」

「うん、ありがたいと思ってる」

私は心からそう言った。持つべきものは人脈のある友人だ。

「しかも、天界Pay20%還元店ばかりよ!あんた、ポイントも超たまるわよ!」

姉は嬉しそうに言った。姉は貯金や節約がうまい。昔からしっかりもので、姉の選択はいつも正しかった。ラジエル社の主任になれたのも、几帳面で記憶力と判断力も優れているからだろう。

「お姉ちゃんは、いまは彼氏は?」

たしか、おなじラジ社の総務部のイケメン天使と付き合っていたはずだ。背が高くスマートで、仕事もできると自慢していた。

「ああ、ラグエルのこと?」

姉はつまらなそうに首を振った。

「終わりにしたわ。彼、私がいくら誘っても天界ツーリングに付き合ってくれないもの」

「え、それで別れたの?」

私はびっくりして聞き返してしまった。あんなに惚れ込んでいたのに。

「やっぱり、おなじ趣味をもつって大事よね。あの雲の筋にそってバイクで飛ばすの、楽しいわよ。今度は一緒に走れる彼じゃなきゃ」

姉はうっとりとして微笑んだ。

私たちのように下界に降臨する仕事についた天使は瞬間移動が使えるが、内勤の姉にはその権限はない。

なので姉はずっと、赤いバイクを足がわりにしている。時には瞬間移動よりも早く目的地に着ける自信があると豪語していた。

ツーリングクラブにも所属していて、黒衣を着て集団で雲の上を走るさまは、妹ながらにかっこいいと思う。

「あんたも、なんでまた人の子なんかに恋したかなあ。人の子はどんどん年老いていくじゃないの・・まあ、恋愛は理屈じゃないからね。仕方ないか」

天界の一日は、人の子の一年に値する。

もう下界から帰ってきて二週間は経つから、私が愛したキョウスケももうずいぶん年齢を重ねていることだろう。

天界に住まうものは、半永久的に年をとらない。だから恋愛はあくまで恋愛。子を成すこともない。

キョウスケとカオリが、いっしょに年を重ね、子を成し、おなじスピードでおなじように老いていく。それは私には想像がつかないことだ。

そして、とてもうらやましいことだった。

毎日毎日、小さい乗り物につめこまれ、あくせくと働き、倒れるように眠る。

良縁部の仕事で、たくさんの人の子の生活を見てきた。彼らは小さなことで傷つき、消耗し、そして私たちからすると星の瞬きのような短い生涯を終えていく。

それはとても儚くて、脆いものだけど、その短い生を、彼らは一生懸命に全うするのだ。

人を愛し、家庭をつくったり、時には壊したりもするけれど、皆自分の役割を果たして次の世代へとバトンを渡していく。

それは、とても崇高なものに思えた。


私たちには、私たちの。

人の子には、人の子の役目がある。

私は、あのときのキョウスケみたいに、とろけるような笑顔で愛する人を見つめることができる時がくるのだろうか。

「ほらほら、ぼーっとしてないで、翼エステにいってらっしゃいな」

姉の声にはっとして、私はエステへの位置情報をインプットした。


いつまでも、思い出に浸ってはいられない。もう時計は、動き出しているのだから。

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