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内輪を広げる

大学生の頃、私は大学祭の実行委員会に所属していた。
実行委員が主催する恒例企画の一つに後夜祭のちょうちん行列があった。

ちょうちん行列は、大学祭の最終日の夜にちょうちんをもって大学から駅までの道路をみんなで歩く、学生なら誰でも参加できる企画だった。
道路(車道)に列を作って歩くので事前に警察署に申請を出す学校外も巻き込む大掛かりな企画で、列の先頭には吹奏楽の演奏もあって賑やかな事もあり道路沿いのオフィスの人からもちょっとした注目も集めていた。

大学祭の成功をみんなでちょうちん行列で祝いましょう!
駅前に打ち上げに行く道のりをちょうちん行列で行きませんか?
いつも歩いている道の道路を歩いてみませんか?

というのが謳い文句で、事前準備不要な参加ハードルの低い企画だったけれど、思いのほか参加者が集まっていなかった。

その理由の一つは、実行委員が勝手にやっているよくわからないイベントというイメージがついていることだった。
ちょうちん行列は(実行委員の)内輪のイベント」と言われていた。

輪の中と外

そもそも、大学祭で出店や催しをしたり当日遊びに来る学生にとって、実行委員は面倒くさい存在だと思われていた。
実行委員の仕事のメインは、出店の管理やトラブル・リスク回避のためのルール作成や注意喚起など。管理者的なお役所のような役割でもあった。

自由に、新しい事にチャレンジしたい、ちょっとハメを外したいと思うお年頃の大学生にとっては口うるさい面倒くさい存在だ。

そんな実行委員がやっている企画。実行委員やその周辺の人たちだけで盛り上がるイベントなんでしょ。内輪のイベントというイメージがジワジワと広がっていった。
気付かぬうちに輪が作られていて、それは参加者を増やしたい企画者の意図と全く逆の方向に作用していたのだった。

輪を広げる

内輪ノリだって言われてるんだったら、内輪を広げればいい

ちょうちん行列の担当者の先輩はそう言って、大学内の様々な部活やサークルの集まりに顔を出していった。

スポーツの大会や文化系サークルの発表会などからイベントの搬入や部室の引っ越しの手伝いなど、ありとあらゆる場面に顔を出し、自分を知ってもらうための行動をしていった。
そしてそこで自分が後夜祭の担当であること、ちょうちん行列の参加者を増やすために本気でやっていることを伝えていた。
そうすると、その場にいる人たちにとってちょうちん行列のイメージが
「よく知らない実行委員がやっている企画」から「〇〇さんがやっている企画」へ変わる。

担当の〇〇さんにもお世話になったとかなんか楽しい人という親しみを持ったり、企画に対しても準備をがんばっている人がいる楽しそうというイメージがつくと更に参加へのハードルが下がる。
義理や義務感ではなく「参加してみたい」と思うようになる。
その学生がサークル仲間に、友人に声をかける事で更に参加しようと考える学生が増えていく。

結果、先輩が担当したちょうちん行列の参加者は過去最高を記録した。


数年後、私が担当をした頃には参加者は企画の規模に対していい意味で頭打ちになり安定してきていたが、数年前の先輩の話が記憶に残っていた私は、「内輪を広げる」ための行動をして、学内に顔見知りを増やしていった。

すると、顔見知りの多くは当日のちょうちん行列にも参加をしてくれた。
その人たちが仲間や友達を誘ってくれて、皆でワイワイ楽しそうに参加してくれていた。
撤収をさりげなく手伝ってくれたり、ねぎらいの声をかけてくれたり。
その様子を見て、全く知らない参加者で「お疲れ様!」と帰り際に声を掛けてくれる人もいた。

輪を広げたら、一緒に楽しんでくれる人がいた。
輪の輪郭が薄くなり、自然と入ってくれる人もいた。
そもそも、外から見たら輪なんて無くなっていたのかもしれない。

コミュニティという輪

これは大学祭の企画に限らず、コミュニティでも一緒ではないだろうか。

地域、オンライン、趣味、学びなど共通項で繋がるコミュニティという輪の中に入ろうとする時、知っている人がいたり、顔見知りがいると心強い。

初めての参加の時には、来てくれてありがとう、一緒に楽しみましょうと手を差し伸べる人がいると入りやすい。

私が働く軽井沢星野エリアでも、輪を広げる活動をしている。
星野コミュニティベース。

参加すると軽井沢での暮らしがより豊かになる知識や情報を得られ、自然の中で思い切り身体を動かすことができ、いつの間にか顔見知りが増えている

星野コミュニティベースHPより

星野リゾートが軽井沢の地で培ってきた生活のアイデアや価値観、移住者が多い土地ならではの人々の交流を様々な企画を通じて行っています。

直近の開催予定はツキノワグマ教室
軽井沢での暮らしでは身近にいるクマとの付き合い方を専門スタッフが教えてくれます。

子育て中の母として思い入れのある企画がKIDSひとり温泉デビュー
星野リゾートはもともと温泉旅館からスタートしています。
温泉文化を継承し続ける星野温泉 トンボの湯が子ども達に伝える温泉の入り方。今年度の開催は終了しましたが、星野エリアとして続けていきたい企画です。

星野エリアから広がるコミュニティの輪。
地域の方や訪れる方にも広がりますように。

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