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うそつき 友だちの嘘

これは、ラジオドラマのシナリオとして創作している。物語は4部構成になっており、それぞれ「夫の嘘」「友だちの嘘」「恋人の嘘」「店員の嘘」というタイトルがついている。

すべて男性による一人芝居である。シナリオのため、情景描写ではなくト書きがある。音声のみを想定している。

これは、一人の女性にまつわる4人の男たちの物語である。「本当」の「嘘」は何か、誰が「本当」に「嘘」をついているのか、「本当」の「うそつき」は、誰か。

**「うそつき  友だちの嘘」 **

(ダイニングバー。軽いボサノバの音楽が流れ、カクテルの入ったグラスのなかの氷が溶けるカラン、という音)

テツヤ はぁ?「三人と不倫してる」って、なんでそんな嘘ついたの?いや、「だって」じゃねぇよ。相変わらず、わけわかんないな、お前。不思議ちゃんとか呼ばれていいのは、10代までだぞ。いや、20代でもだめだ。10代までだな。ほんと、出会ったときから、お前って変わんないのな。変わってるとこが、変わってない。
・・・そうか、もう15年か。数字にしてみるとすごいな。
おい、オレの名前は「テツヤ。」「ヤー」って、そこまで略して呼ぶなよ。おい、さくら。聞いてんのか?
(間)
まぁな。お前の旦那のことは、前から聞いてたしな。オレから言わせれば別に普通の気がするけど、要は合わないんだろ。だから言ったのに。
え?言ったよ、結婚するってさくらが言い出したときに、オレ、ちゃんとよく考えたのかって。
は?そうだよ、合わないんじゃないかって意味。わかんなくねぇよ。そりゃそうだろ。お前の話聞いてれば、わかる。何年の付き合いだと思ってるんだ。
オレ?オレのほうは、一般的に考えてみても、まぁ順調なんじゃない?奥さんも来月から働き出すよ。
そう。もう3歳。かわいいぞ。オレに似て。いやいや、オレに似て幸せだろ。とにかくまぁ、娘には、さくらみたいな結婚生活は送らせたくないね。もちろんだよ。お前のお袋さんは、さぞかし嘆いていらっしゃることだろう。

(間)
はぁ?何いってんの、お前。おい、ちょっとさくら。そんなこと出来るわけないだろ。なんでオレまでがお前の嘘に付き合わされなきゃなんないんだよ。お前のお母さんに挨拶なんて、できるわけないだろ。オレ、結婚してんだぞ。
・・・いや、一日だけって言われても。何があってもオレ、責任持てないぞ。
・・・いや、もうその時点で迷惑だから。だめだめ。この話はなし。当たり前だろ。恋人の振りして親に挨拶すれば、納得するだろうなんて、そんな甘い考え、通用するわけないだろ。そりゃ、お前は一人親だしな。でも、後から「やっぱり別れた」なんて言って、そのほうがお母さん、悲しむんじゃないのか?とにかく、だめ。そんなこと、安請け合いしない。
(間)
おい、そんな顔するなよ。お前ってほんと、ずるい女だな。

だいたいお前は、昔からそうなんだよ。
男見る目がないの。お前みたいなタイプって、オレみたいなのが、合ってるんじゃない?
頼りになるし、優しいぞ。
この前も会社の後輩の女の子に、なんか恋愛相談されちゃってさ。彼氏が二股してるかもしれないとか、なんとか。それで携帯電話見たいとか言ってたから、オレ、それだけはやめろって言ったんだよ。どっちにしろ良い結果にならないだろ。それで疑惑が晴れるんならいいけどさ。証拠がなくても、妄想は止められないだろ。疑ってる時点でほぼアウトなんだよ。
そう、そう言ったよ。なんかオレ、相談受けること多いんだよな。めんどくさいよ、女の相談なんて。お前も、すぐに甘えてくるし。
(長い間。ダイニングバーの音楽が消える)

(テツヤの独白。帰り道。テツヤが歩く靴音が響く)
テツヤ まだ外は寒いな。春っていつ頃なんだっけ。桜は、いつ咲き始めるんだっけ。あと一ヶ月くらいか。
・・・さくら、大丈夫かな。でも、まさかこんな風にさくらと友だちになるなんて、思ってもみなかったな。大学生のとき、「あいつ」と付き合ってたときには、さくらのこと、「あいつ」の友だちとしか見てなかったもんな。今では「あいつ」の連絡先もわからなくなっちゃったのに、あいつの友だちのさくらと、こうして飲みに行ったりするなんて、「あいつ」に知られたら、なんて思うんだろう。嫉妬深かったからな、かなり怒るかもな。
さくら・・・そういえば、大学生のとき一回だけ酔ってキスしちゃったことあったよな。あのとき、もし「あいつ」と付き合ってなかったら、さくらと付き合いたいと思ったのかな。
もし、キスだけじゃなくて、あのとき・・・そしたら、もしかしたら、さくらのお母さんに、本当に挨拶に行くことになってたかもしれない。

さくらは、なんでオレにあんなこと言ったんだろう。恋人の振りをして、お母さんに娘さんと再婚するつもりですなんて、言えるわけないだろ。それで本当にお母さんが納得すると思ってるのか?
あいつ、バカじゃないはずなんだけど、どっかずれてるよな。
・・・それとも、なんか意味があるのかな。
意味か・・・。そもそも、なんでオレたちは仲良くなったんだろう。さくらの住んでる家がオレの会社に近くて、偶然会って、さくらが「今度ご飯食べに行こうよ」って言って、それから会うようになって。
さくらが会社辞めて結婚したら、よく連絡が来るようになったんだよな。よく考えたら、こんなに仲良くなったのって最近か。

別に今の生活に不満があるわけじゃないけど、たまに、さくらに会うと、ホッとしたな。テレビの感想でもなんでも、あいつが言うとちょっと変わってて、変な妄想入ってて。学生時代の話とかすると、なんかあの頃に戻った感じがして。

今日はなんか、さくらのことばっかり考えてる気がする。さくらは、なんであんな目でオレを見るんだろう。いつも濡れてるみたいな、あの目は、あのときと同じだ。あの、一回だけのキスのとき。あのときの味が舌に残ってるみたいだ。やわらかくて、甘くて、やらしくて。さくらも、あの味を覚えてるかな。思い出してるのか?もしかしたら、今も。。。
(長い間)

(冒頭と同じダイニングバーの音楽)
テツヤ よっ。さくら。元気か?ちゃんと実家帰ったのか?よしよし、それがいいよ。
いくら貯金あるからって、これから何があるかわかんないんだからな。。ホテル暮らしなんて贅沢だ。
・・・お前、大丈夫か?ちょっと痩せたか?
・・・心配だよ。当たり前だろ。友だちだからじゃなくて、お前だから、さくらだから、心配してんだよ。
(間)
さくら、「付き合ってる人がいる」って、旦那に嘘ついたの、あれは本当に嘘なのか?・・・なんだよ、笑うなよ。そんな風に笑うなよ。
なにがって・・・お前、わかってるだろ、本当は。

(間)
さくら、覚えてるか?大学生のとき、オレたち一度、キスしたことあっただろ。そりゃ、お互い酔ってたから、事故みたいなもんだけど。いや、もしかしたらさ、オレたち、ああいうのをきっかけにして、付き合ってたかもしれないなってさ。「あいつ」とじゃなく、さくらとさ、付き合ってたかもしれないなって。もしもの話だよ。もしかしたら、そういう未来もあったかもしれないな。
なんだよ、笑うなよ。
そしたらさ、オレたちが結婚してたかもしれないぞ。子供も、別の子でさ。さくらに似たかわいい女の子でさ。
そんなこと、考えたことないか?
オレ、さくらのこと、かわいいと思ってるよ。ずっと、思ってた。あいつの友だちとして会ってたときも、かわいい子だなって。あいつの前に、さくらと出会ってたら、もっとちゃんと好きになってたかもしれない。
いや、、もう、好きになってた。だからキスしたんだ、あのとき。酔っぱらってるせいにして。

(間)
オレ、気づいたんだよ。あのとき、ちゃんと認めてなかったからいけなかったんだって。
オレ、前からずっと、さくらのことが、好きだったんだ。

さくら うそつき



本当に嘘をついているのは誰?本当の嘘はなに?

夫の嘘(前回)
友だちの嘘
恋人の嘘(次回)
店員の嘘(最終回)

次回の「恋人の嘘」をちょっとだけ予告↓
…………………………

(ホテル・BGMはない)

ユウジ さくらと久しぶりに再会したのは、半年前だったね。すごく綺麗になってたから、びっくりしたよ。前からかわいかったけど、今は、ちゃんと大人の女性になってるって気がした。まさか、オレがさくらにこんな風に触れられるようになるなんて、思わなかったよ。うん。オレは、すごく幸せ者だよ。ああ、待って。オレが脱がせる。いいでしょ?

(長い間)

(ユウジのマンションの部屋。玄関の扉が開いて閉まる音)

ユウジ ただいま。なんだ、まだ起きてたの?飲み会で遅くなるから、先に寝ててって言っただろ。
そう。大学時代の先輩。ちょっと飲み過ぎちゃったから頭痛いよ。ちょっと、ひっつかないで。本当に頭痛いんだから。
・・・はいはい、わかったよ。おとなしく寝てなさい。オレ、シャワー浴びてくる。うん。大好きだよ。

…………………………

予告終わりです。ダメな大人たちがいっぱい出てくる最後に何があるのか?あと2話あります。よければ感想ください!どきどき。よろしくお願いします!

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