見出し画像

フランス学生生活:新学期の気持ち

 2022年9月にいよいよフランスの大学1年生がスタートしたとき、私はけっこう疲れていたようで次のようなメモが残っていた。「この消耗感は、新しい環境に飛び込むときと同じ。新卒入社の初めの1カ月も、転職してからの数日間も、同じような疲れを感じてた。責任がかからないことをやっているのに、ただその場にいるだけなのに、なぜかとても疲れる。でも、何回も経験してるから、この疲れがいつか全くなくなることも知ってる。とりあえず、しんどくてもリズムを崩さずとにかく行くこと。行ったらなんとかなる」

 9月の2週目、誰も知り合いがいないクラスで、一回り以上年下の方々に囲まれて、東洋人は一人、そんな中でオリエンテーションをやっているとき「私、ここにいていいのかな」とずっと感じてた。今思えばもっと気楽に、まだ来たばかりだからあまりフランス語できなくて、でもよろしくね! くらいの心構えでニコニコしてればよかったと思うけど、ほぼ何も聞き取れない中に放り込まれるとそうした余裕は持てなくてずっと緊張していた。

 大学1年生のオリエンテーションは、クラスメイトと交流を深めることと、学部(社会学部)と大学周辺の地域を知ることが目的で、街中に設定されたチェックポイントをグループで回り、ミニゲームをしたり、社会学に関係のあるクイズに答えたりする内容だった。高校の体育祭以来に綱引きをしたり、輪の中にボールを投げ入れるゲームをしたり。フランス人の学生さんにとってもこのアクティビティを通して友達を作ったりグループができるわけだから総じてソワソワした空気が流れていたように思う。

 そんな中で私がどこかのグループに入ることはやっぱり難しかった。今では数人と友達になれたけれど、フランス語に慣れるまでは誰かに話し掛けにいく勇気も出ないから顔見知りの人がなかなかできなくて。でも、それは当然だと思うようにしたら気が楽になった。来たばかりの土地で言葉もわからない中で一人なのは何も変なことじゃない。逆に、日本語の環境で一人ぼっちだったら焦ってしまうと思うけど。無理に誰かといなくていい気楽さがそこにはあった。

 私がずっと気にしていたのは一人だけ会社員を経験した学生だという点で、誰かに自己紹介するとき「私、本当の学生じゃないんです」みたいに言ったりしていた。でもそれを私の友達が「Non, あなたも学生でしょ」と堂々と否定してくれて、それでようやく私はフランスで学生になったんだと思えるようになった。そしてだんだんと生活を思いっきり楽しむマインドになっていった。学生から会社員に移行するときはしんどかったけど、その逆もまた楽ではないことを知った。環境の変わり目は多かれ少なかれ心理的な負担がつきものだ。でも、リズムを崩さず生きていればいつの間にかそんなの忘れてしまうんだけど。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?