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本生譚(ジャータカ物語)の現実味。

仏教の本質に迫る」シリーズ第一弾です。
今回から、少しは坊さんらしく(坊主臭く?)仏教そのものについて掘り下げてみたいと思います。第一回目は日本で本生譚ほんしょうたんと呼ばれているジャータカ物語の説明と現実生活でのトリセツとしました。


1,ジャータカ物語について


本生譚(ほんしょうたん),本生経(ほんしょうきょう)ともいう。 釈尊(しゃくそん)の前世を語る物語集。 パーリ語訳(約55話)と漢訳が現存。 釈尊が過去世において修行者として多くの善行を積んだ功徳によってこの世で仏となられたという因縁話で,釈尊の偉大さを讃える目的で3~4世紀に編纂された。

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✅ジャータカ物語は、紀元前5世紀ごろにインドで成立し、その数は約550話にも及びます。これらの話は、動物や人間としてのブッダの前世のエピソードを中心に展開し、それぞれの話でブッダが示した徳や教えが語られています。

✅物語の中では、ブッダが王様や動物、さらには神々として登場することもあります。それぞれの生でブッダはさまざまな試練に直面しますが、その都度、慈悲や智慧、道徳的な勇気を通じて問題を乗り越えていきます。

✅例えば、他者を助けるために自分の命を犠牲にする話や、正直さの重要性を説く話など、現代の私たちにも通じる普遍的な価値を教えています。

✅ジャータカ物語は、仏教の教えを身近な例え話や物語を通して伝えることで、人々に分かりやすく、そして心に響く形で教えを広めてきました。

✅子供から大人まで、誰もが教訓を学び取ることができるような内容となっているため、多くのアジアの国々で今でも愛読されています。

✅これらの物語は、美術や演劇、文学といった文化の中にも大きな影響を与えており、仏教国ではジャータカ物語に基づいた絵画や彫刻、舞台作品などが数多く作られています。

2,ジャータカ物語の一例

✅最も有名な話は「月に昇ったウサギ」でしょう。これは以前にもお話しましたのでご参照頂ければ幸いです。

日本では、ウサギとサルやキツネにはあまり良いイメージを持たれてないかもしれません。「ウサギとカメ」のかけっこ話や「さるかに合戦」あるいはキツネに騙された数々の逸話によって先入観があるのは確かです。

ぜひ、そうした観念を外してお読みください。
物語のあらすじは、ざっと以下のとおりです。

✅かつて、深い森の中に、ウサギ、サル、キツネが仲良く暮らしていました。彼らは互いに助け合い、森の中で平和に生活していました。ある日、彼らは特別な訪問者を迎えることになります。その訪問者は、実は慈悲深い仏様でしたが、老人に化けていました。

深い森の中でウサギ、サル、そしてキツネが仲良く遊ぶ様子

✅老人は、森の中を旅していると言い、食べ物がなくて困っていると彼らに話しました。ウサギ、サル、キツネは老人を助けたいと思いました。サルは木から果物を取ってきて老人に差し出しました。キツネは川から魚を捕ってきて老人に与えました。しかし、ウサギは自分が提供できるものが何もないことに気付きました。ウサギは悲しみにくれましたが、やがて一つの決心を固めます。

✅ウサギは、自分自身を犠牲にしてでも老人を助けたいと思いました。そこで、ウサギは火を起こして下さいと老人に頼みました。「私にできることは、自分の身体を犠牲にすることだけです。どうか、私の身体を食べて、力を取り戻してください」とウサギは言いました。老人はウサギのこの無償の愛と献身に深く感動しました。そして、その場で本当の姿を現しました。それは、宇宙を慈悲で満たす仏様でした。

✅仏様は、ウサギの純粋な心と犠牲の精神に感銘を受け、ウサギを天に昇らせることにしました。そして、ウサギは美しい光に包まれながら月に昇っていきました。月に着いたウサギは、月の光によって永遠に輝き続けることになりました。これが、月にウサギの姿が見えると言われる理由です。

✅この話は、思いやり、友情、そして何よりも他者のために自己犠牲を払うことの大切さを教えてくれます。ウサギの行動は、私たちにとっても大切な教訓です。自分よりも他人を思いやる心が、最も貴重な贈り物であることを、この話は伝えています。そして、そんな心を持つことで、私たちもまた、何か大きなものの一部となり、永遠に輝き続けることができるのです。

老人との会話シーン

3,ジャータカ物語の本質

✅ジャータカ物語は、お釈迦様がブッダになる前の過去世で体験した様々な人生の物語です。これらの話は、お釈迦様が動物や人間など、様々な生き物として生まれ変わり、困難を乗り越え、善行を積み重ねていく過程を描いています。(ブッタの前世を菩薩といいます)

✅ジャータカ物語の本質は、慈悲、知恵、忍耐などの高い徳を持つことの大切さを伝えることにあります。また、他人を思いやる心や、正しい行いをすることの重要性も教えています。

✅これらの物語は、どのような状況でも正しい道を選び、善良な行動をとることで、最終的には真の幸福や成長につながるという教えを分かりやすく示しています。ジャータカ物語を通じて、私たちは人生で直面する様々な試練や課題に対処するヒントを得ることができるのはないでしょうか。

✅本当につらく悲しいときに、たった一枚のハガキで救われるということが実際にあります。たった一言で、一枚の絵で「自分自身の中にある優しさ」によって勇気をもって立ち直るきっかけともなります。

4,現実生活でのトリセツ

✅わたしは、ジャータカ物語の「ウサギが月に昇った話」を子供の頃に絵本で読んで、大泣きしたことを今でも鮮明に覚えております。今年70歳になりますが、本当に苦しいときに、なぜかこのお話を想い出します。

✅この話を読まれて、多くの方が現実にはなかなかそうはいかないといった感想を寄せられます。しかし本当にそうでしょうか?自己犠牲なんて私には到底ムリと仰る方のほとんどが、実は優しい気持ちの方が多いのも事実だと思います。他人のつらさがわかるのが、その証拠ではないですか?

✅つらいときこそ、思いやりをもって生きること。それを自分に言い聞かせてまいりました。わたしのお陰様は無限にあります。その中心にいつも月が見えます。(月の清けき光の中で)観音様は教えであり、父母であり、友であり、自分の中にもある慈悲(やさしい心)だと信じております

月に昇ったウサギを観音様が優しく抱くイメージ(生成AI)

本生譚(水)

ご覧頂きまことに有難うございます。
念水庵 正道


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