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「家づくりとお弁当づくりは似ている」 地域に根ざした “木材店” として抱く信念と、自身のあたたかな想い

1967年より、下妻市にて “地域の工務店” として真摯な家づくりを続けている、柴木材店。木をふんだんに使い、茨城県近郊を中心に、数々のぬくもりあふれる居住空間を生み出してきました。

そんな柴木材店の営業部長・柴 雄二さんから、会社としてのこだわりや哲学、ひいては雄二さんご自身の信念についてうかがいました。個人的な活動として、Instagramを通じた “お弁当” の発信もされているという、彼のユニークなお話をぜひともお楽しみください。

木材を使って、人々の暮らしを健やかにしていくということ

ーー雄二さん、本日はどうぞよろしくお願いします!

よろしくお願いします!

ーーまずは、会社について。昭和42年に創業されたとのことで、今年(2023年現在)の3月には創業56周年を迎えるのですね。

もともと柴木材店は、名前の通り、“材木屋” としてスタートした工務店なんです。家づくりを主な業務としている今でも、会社名は “木材店” を名乗っていて。

ーーそれは、どういった理由からなのでしょうか?

ひとりの従業員としての考えですが、木の家づくりに対して誇りを持ち続けていたい、と願っているから、ですかね。

ーーほう、ほう。

業務の内容としては、“工務店” を名乗った方が、きっと正しいかもしれない。それでも、やはり昔ながらの信念を持ち続けていたいんです。だからこそ、今でも “木材店” なんですよね。

ーー会社の名前に、信念やこだわりが詰まっている、と。

僕らの仕事は、自然由来の “木” という物質の加工・設計を通じて、お客さまの “暮らし” を健やかなものにしていくこと。だからこそ、もっともこだわりを持っている “木材” が会社の名前として付いていることをうれしく思っています。

“移り変わっていくもの” としての、家


ーー暮らしを健やかなものにしていく。「家」というのはきっと、人生における買い物の中でもっとも値段の高いものだと思うんですよね。

そう、まさにそうですよね。長く使うものだからこそ、しっかりとしたものを造りたい。お客さまのなかには「陽の光を大切にしたい」とおっしゃる方もいたり。そういったケースでは、たとえば、“植栽” に注目することもあるんです。

ーー家そのものを成り立たせる “材料” としての木と、家を飾る “装飾” としての木。

いえ、装飾のようにも見えるのですが、家を取り囲む木には、ちゃんと機能があるんですよ。

ーーきっとそれを求めるのは「陽の光を大切にしたい」とおっしゃるお客さま、でしょうか。

そうそう。たとえば、陽の光を、一部さえぎるものとしての植木だったり。その背の高さによって、日光の入る量を調節することができますよね。それに、ウッドデッキに置いたベンチが陽の光によってとても熱くなってしまうのを抑制することもできますよね。

ーーなるほど。ただ単純に “飾る” だけでなく、適切な機能として、木材を使用すること。

それは、木に限ったことでもないんです。室内の壁に、“シラス” と呼ばれる火山灰を織り交ぜた素材を使うことも。それによって、湿度の調節や消臭機能、結露やカビの発生を緩和することもできるんですよ。

ーーあくまで、自然由来の材料を使う。

自然と、ともに生きる。それはすごく豊かなことだと思います。たとえばこのモデルハウスに取り付けた大きな窓なんかは、まさにそうですよね。

ーー古き良き雰囲気の瓦屋根を持つ古民家があって、木々がバランス良く生い茂っていて。まさに “自然の趣” ですよね。

夏には、ここを野生の動物が走り抜けていったり、秋になれば赤黄色の紅葉が広がっていたり。冬の寂しげな雰囲気も素敵ですし、春の彩り豊かなムードもすごく美しいですよ。

ーーまるで絵画のようですよね。

うれしいお言葉ですね。自然そのものの美しさを損ねないようにしつつ、人の暮らしにしっかりと寄り添った形で、家をつくっていくのが重要だと思っています。

ーー(なるほど。)

たとえば、柔らかな杉を使った床は、寒い時期に素足で歩いても冷たくないですし、湿度の高い時期もサラッとしていて、“機能” として素晴らしいもの。無垢の木は柔らかさゆえに傷つきやすいところもありますが、日に焼けて床全体があめ色に美しく変化していく、まるでアンティーク家具のような “経年変化” を愛してもらえるようなら、すごくうれしいです。この窓から見える景色が移り変わっていくように、家自体も変わっていく。それが、愛着や家族の誇りとなっていく。そんな家づくり、暮らしづくりをしていきたいですね。

人と人が繋がり、幸せがふくらんでいく


ーー雄二さんは、個人の取り組みとして、Instagramでの “お弁当” の発信もされていますよね。ご自身の著書として『俺の弁当。』を刊行するほど、発信に力を入れているのが印象的でした。お弁当づくりは、どういった経緯でおこなうようになったのでしょうか?

看護師の妻が夜勤続きでくたびれてしまった、というのがとても大きかったです。

ーーなるほど、ご家族の身体を気遣って。

まずは自分が十分に幸せでないと、そして自分の家族を幸せに出来るようにならないと、人を幸せにすることなど、きっとできないと思うんです。

ーーそれはすごく良い考えですね。

お客さまを幸せにするのはもちろんですが、その前に、まずは自分や自分の身の回りにいる人を幸せにする。そうすることで、どんな風にすれば相手が幸せに感じてくれるか、わかるようになってくると思っていて。そう言いながらもまだまだ未熟なんですけどね(笑)。幸せが家族の中で循環できる日を夢みています。

ーーとても納得します。幸せって、伝わるものだから。

まさに。話は建築に少し戻るのですが、2022年に作った環境共生型分譲戸建プロジェクト『*クラスコ倉掛』というものがあって。こちらは建売として、四世帯の暮らしをつくるお手伝いをいたしました。

*クラスコ倉掛:地域に根ざす工務店である柴木材店が「つくばらしい」暮らしを考えた、4戸の住まいからなる環境共生型分譲戸建プロジェクト。2022年度、グッドデザイン賞を受賞。

ーー四つのおうちが、一体となったものですね。

これを計画するにあたって、“環境共生型分譲戸建プロジェクト” という名の通り、自然環境と共に生きることを重要視したんです。四戸の庭をそれぞれ独立させることなく、緑を連続させ一つの大きな庭として、「小さな森」をつくり込みました。家自体は四棟ありますが、それぞれの建物から、お互いの庭を借景として利用し、豊かな空間をシェアする。その中で住まい手同士の関係性が自然と産まれ、ゆるかなコミュニティができていくような。そんな風景をイメージしていました。

ーーうん、うん。

たとえば、ある家族が、庭でバーベキューをする。その良い匂いにつられて、別の家族が、なにかおつまみのようなものだったり、飲み物だったりを持って、自然に参加する。そんなことがよくあるみたいなんです。その他にも、全棟の玄関にはベンチをしつらえてあるので、立ち寄った近隣の方と気軽に交われるような場所としても機能するんですよ。

ーー家と家が、繋がる。

ゆるやかなコミュニティになっていくのではないか、と考えました。今は四つともそれぞれご家族が住まれているのですが、ある日『家どうしを区分けする低い木の柵、その一部を取ってしまいたい』と言われたことがあったんです。

ーーあら。それはきっと、ポジティブな意味で。

まさにそうです。みなさんが仲良く暮らしていく上で、柵は必要ないんじゃないか、となったみたいで。それはすごくうれしい言葉でしたね。自分たちの “暮らし” という幸せだけでなく、繋がることでまた別の “暮らし” が生まれる。新たな形の “幸せ” が生まれる。それがすごくうれしくて。

ーーとっても素敵ですね。

僕のお弁当づくりも、きっとそうなんだと思うんですよね。家族のお弁当を作っている時は正直眠いし大変ですが、日中は離れた場所にいる家族が、同じお弁当を食べて繋がっていることがとても幸せなんです。家づくりもお弁当づくりも、根底は一緒なのだと思いますね。相手の幸せを叶えてあげたい。それこそが、自分の幸せであるということ。家づくりとお弁当づくりはすごく似ていて、両方、とても楽しいですよ。あらためてそう思います。


◯株式会社 柴木材店
☎︎ 0296-43-5595
Instagram:https://www.instagram.com/shiba.moku/
Youtube:https://www.youtube.com/@shibamokuzaiten/featured
HP:https://www.shiba-mokuzai.com/
クラスコ倉掛について:https://www.shiba-mokuzai.com/gooddesign.html#ank

柴雄二さん
Instagram:https://www.instagram.com/kito_kurashito__/


取材・執筆:三浦希(https://twitter.com/miuranozomu)
撮影:宮澤優輝
取材月:2022.11



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