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221023_料理教室のおじさん

 料理教室でおじさんと2人チームになった。先生の指示のもとポークカツレツとサラダとグラタンとスープを作ったのだけれど、おじさんは全体を通してワタワタとしていた。小さじ1を量るのにも手は震え、フライパンの前を右往左往し、このレタスは手で食べやすい大きさにちぎってくださいねと言われた直後に「えと、半分に切れば良いですか?」と包丁を持ちだすワタワタっぷりだった。
 その後少し話したのだが、おじさんは独り身らしく、去年病気をしてから体に気を使わねばと思い立ち、今日が初めてのレッスンなのだと言う。「体験教室には別のオッサンと2人で来たんですけどね、そいつは料理が出来るんで結局私は一人になっちゃって……」と照れくさそうに教えてくれた。最近はヨガにも通っているらしく、土日の予定の調整が大変なんですよと話すおじさんはどこか楽しそうだった。
 料理教室は基本的に女性ばかりで、しかも大学生をはじめ若い人が多い。体験教室に来たということはそういう雰囲気も知っての入会だったのだろう。周りの目も気にせず、先生の話を必死で聞くおじさん。失敗を先生にいじられてもテヘヘと笑っているおじさん。私はギャルと一緒のチームになったくらいで怯えている場合じゃないなと勇気が出た。帰りの電車の中でも、「ええ、小さじ1、ええ」と一生懸命頷きながら復唱するおじさんの姿を何度も思い出していた。

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