素人の私が塩野義製薬の新型コロナウイルスワクチン開発の話になぜ不安を感じるのか

素人の私が塩野義製薬の新型コロナウイルスワクチン開発の話になぜ不安を感じるのか


私は昨今マスコミで話題になっている国内での新型コロナウイルスワクチンの開発の話、とりわけ塩野義製薬さんが開発しているワクチンの報道に、どこか不安を覚えています。

私は自分のツイッターアカウント(自己紹介にも書いていますが、ゲイ向けアダルト小説サイトの紹介アカウントです)で、2021年6月26日に次のようなツイートをしました。

https://twitter.com/novelssantas/status/1408737684000960517?s=20

見ていただいた幾人かの方からリツイートやいいねをしていただいたこともあり、私の普段のつぶやきに比べるとインプレッション(閲覧数)も少し伸びているようです。
またDM(ツイッター内での個人宛のメールのようなもの)で、「どんな意味ですか?」とのお尋ねもいただきました。

その質問に答えた内容を元に、自分の思いを少しくわしく書いてみたいと思います。
引用した先はなるべく分かりやすいものを選んだつもりです。
またWEB上の記事ですので、リンク先の変更等ありましたら申しわけありません。

私は医療職でもなんでもなく、ただの素人です。
私のこの思いがなにか医学的な根拠があるわけでなく、自分自身の不安の形成過程を書いているものとして読んでいただけるとありがたいです。


私が抱く不安は、大きく分けると2つです。

1つは
「条件付き早期承認制度」という仕組みがこのワクチンの承認で使われるかもしれないことが記事化されていること

もう1つは
「国産」「早期」という言葉をマスコミが報道の主軸としていくことで、国民の中に過熱した承認へのバイアスが形成されてしまうこと

この2点となります。


1つ目の不安について

まず、話題になっている内容そのものは下記の記事(サイト)を参考にされてください。

塩野義製薬さんのワクチンについての開発方針はこちら
(塩野義製薬さんの公式サイト中のページです)

https://www.shionogi.com/jp/ja/sustainability/informations-for-id/covid19-initiative.html#1.

今回、私が不安を感じてしまった記事はこちら
(産経新聞さんが元記事の発信者ですが、多くの方の目に触れたであろうYahoo!ニュースを引用しています)

https://news.yahoo.co.jp/articles/599e924869a8e0422e976f933d39f92d578dc9e1

上記の2つの内容には違いがそうあるようには見えませんが、私の一番の懸念材料は、塩野義製薬さんのサイト文言中には無く、報道記事中に見られる「条件付き早期承認制度」という一言なのです。

この「条件付き早期承認制度」とはどんなものなのでしょうか。

厚生労働省サイト内のページによれば

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc2985&dataType=1&pageNo=1

と、このような説明がなされています。

ここで前段及び対象品目の説明項目にて、その対象となる薬品は「治療薬」である、ということ、ワクチンのような「予防」を主たる目的とし、かつ「広範に使用される」薬品がは対象とされていないのでは、と、私は読み取りました。

また、この「条件付き早期承認制度」とは別に、日本の制度として「特例承認制度」というものがあります。これについての厚生労働省の解説ページがこちらです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16734.html

この「特例承認制度」は解説中にもあるように、現在(2021年6月)国内で使用されているファイザー社やモデルナ社のワクチンを「海外ですでに治験が済み承認されているもの」を迅速に国内で使用できるようにする、制度だと自分は思っています。

この2つの承認制度の違いは、素人の私が一番大きな、そして大事なことだと思っている「治験における第Ⅲ相試験」の有無になろうかと思います。

ファイザー社やモデルナ社のワクチンはすでに他国で第三層治験を終えたものを日本で「特例承認」されたものであり、第Ⅲ相試験の過程を省くことで開発期間を短縮する目的の「条件付き早期承認制度」とはまったく違うことだと思うのです。

ファイザー社などのmRNAワクチンがアメリカで一年前後という非常に短いスパンで承認を受けた背景は、こちらの記事が分かりやすいと思います。

https://humonyinter.com/column/med/med-38/

記事中にもあるように、治験も第Ⅲ相試験(他の記事では「P3試験(フェーズⅢ)」と書かれていることもあります)まできちんと行われています。
開発と承認スピードの早さの要因は、アメリカが国として財政支援を大規模に行ったことと、開発者側の個々の場面の英断がうまく作用していった相互作用によるものだと私は上記の記事から理解しました。

日本における治験の仕組みは群馬大学医学部のサイトにあるこのページが分かりやすかったですので参考にされてください。

https://ciru.dept.showa.gunma-u.ac.jp/general/cr-steps/


私が抱いている一つ目の不安は、これまで書いてきたような「条件付き早期承認制度」が塩野義製薬さんが開発されているワクチンに適用されることで、従来の承認システム上必須とされていた第Ⅲ相試験が十分に行われること無く承認されてしまうのでは、ということになります。
もちろん根本にはそのようなことは起こりえないだろう、とも思ってはいるのですが、次に記す不安材料とも絡めて考えてしまうのです。


2つ目の不安について

私の不安の2つ目のマスコミ報道と薬の関わりついてです。

今回話題となっている塩野義製薬さんが開発した抗インフルエンザ薬に「ゾフルーザ」というものがあり、私も名前は当時よく耳にしました。

当時のかかりつけ医でお医者さんが「みんなゾフルーザにしてくださいって言ってくるんですよね」と、少し苦々しく話されていたことから記憶に強く残ったのだと思います。

そのゾフルーザを含むインフルエンザの薬については(民間病院のサイトで大変申し訳ないのですが)以下の解説記事が素人にも分かりやすく、薬の使用そのものについてもとても誠実な解説そしていただいている印象を受けています。

https://shida-kids.com/blog/2020/01/05/best-choice-anti-flu-medicine/

またもう少し専門的内容に踏み込んであるPRESIDENT Onlineさんの記事がこちらになります。

https://president.jp/articles/-/32994?page=3

もちろんこの薬についてはきちんとした治験も行われており、その承認に問題があったわけではありません。
ちなみにそのゾフルーザの添付文書は下記のサイトページからPDFファイルで閲覧ダウンロードできます。

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/62/6250047F2029.html


それでも、PRESIDENT Onlineさんの記事にあるように、マスコミでの大きな報道→患者側からの使用圧力が生じたことは容易に想像でき、私のかかりつけ医の感想もまたその影響の1つを示していたのかなと感じています。

製薬会社と医療者の間での力関係などは私のような部外者には皆目分かりませんが、マスコミ報道との関わりおいて商品名を含めた内容の番組や記事が多量に目に触れることで、その商品名を指定してくる患者さんも増えてしまうことはありえると思うのです。

そしてこのことは塩野義製薬さんのような製薬会社側の問題では無く、マスコミ側の医療や薬物情報の取り扱い方の問題ではないかと思っています。

特に今回の新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発については、これまで日本で承認されている薬がすべて外国発のものである中で「国産」や「一日でも早く」という文言とともに国内製薬会社の開発中(試験中)のものが紹介されることに、マスコミにおけるゾフルーザの持ち上げがあったときと同じ不安を感じてしまうのです。


ここまで私が不安を感じた理由を書いてきました。

よくよく考えるとこの2つの不安はもともと2つ目の不安が1つ目の不安を引き起こしているのかな、とも思ってはいます。

それでも、塩野義製薬さん側、マスコミ側、双方ともに、医療や医薬品について発表や報道をする際には、最新の注意と、その報道に接した視聴者の行動予測とリスクをしっかりと考えながら取り組んでいただけたらと、切に願っています。

2021年6月27日