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コロナウイルス感染症対応における地方自治体の戦国大名化

新型コロナウイルスの影響で、日本政府より全都道府県に対して緊急事態宣言が発令されました。とはいえ、言っていることはこれまで通り「不要不急の外出を控える」「外出の8割減」「人の集まるところの営業の自粛」など代わり映えがしません。

国家が民間に対し、強制的に閉店を命じたり、事業停止を命じることは今の日本政府には法的にできません。これは今の日本の国体の成り立ちが原因です。

今の日本国は、第二次世界大戦の敗戦からGHQ(米国)によって生み出された国家です。これは第二次世界大戦を引き起こしたのは当時の軍部の暴走を大日本帝国の首脳陣の誰もが止められなかったことに原因があり、そのため、軍の解体、天皇の権限縮小、国民主権など様々な民主施策が実施されました。

その結果、この国は何事も法律がなければ何もできない良い意味での法治国家となりました。一方で、逆に今回の新型コロナウイルスのような「未曾有の事態」に対しては、内閣が何一つ強制力を持って実施する施策ができないため、諸外国にとって見劣りする印象を与えてしまいました。

これまでは日本国の中央政府(内閣)の下に地方自治体(都道府県、市町村)があり、その構図は第二次世界大戦後の民主化以降変わりませんでした。

しかし、新型コロナウイルス対策における国の施策の進み方に対し、都道府県・市町村の首長の怒りが爆発し、いまや地方自治体が独自の都道府県民・市町村民支援を発表。

▼福岡県福岡市が100億円規模の独自支援策 
50万円上限に店舗賃料の8割補助
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/600364/

▼福井県勝山市が子ども1人に6万円現金給付
(所得制限なし、新型コロナで家計支援)
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1068644

▼個人事業主50万円、中小零細100万円 大阪府の支援金
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58074760V10C20A4AC8000/

▼総額8000億円規模の東京都の新型コロナウイルス対策。休業補償の対象
https://www.businessinsider.jp/post-211274

慌てた国が昨日(4/16)になって、突如「国民一律10万円支給の報道が出てたりしています。

私はこの流れを、どこかで見た流れと似ている感じがしました。
そう、応仁の乱後の足利幕府の状況と似てるなと。

応仁の乱

応仁の乱とは、西暦1467年(応仁元年)に発生し、西暦1478年(文明九年)までの約11年間にわたって日本国内で断続的に続いた内乱です。

これがどのような背景を持っていて、その乱はどういうものだったかは呉座先生の著書『応仁の乱』を読んでもらうとして......

日本史の大きな流れとしては、時の日本政府である足利幕府の権威が失墜し、地方では守護大名(殿様/県知事)の家臣だった守護代(副知事)が守護を超える実力を持ち始め、実力のない守護は追放される時代(戦国時代)の始まりとなった出来事です。

これ以後、力のある守護大名はそのまま戦国大名化し、力のない守護大名は守護代に取って代わられ、また、数村の地方領主でもうまくいけば一国一城の主になれる「戦国時代の幕開け」となります。

応仁の乱が令和の世にどう繋がるか

足利幕府は南北朝に別れていた2つの皇統を三代将軍義満の時代に統一し、朝廷を安定させた後は、有力な守護大名を挑発、牽制、家督介入などでその力を削減させ、将軍権力を増大させてきました。

また有力守護大名は京都に詰めて、幕府の覚えめでたくしなければならず、そのため、領地の支配は自分の代理である守護代に任せていました。

しかし、応仁の乱以降(「明応の政変」というクーデターもありましたが)、足利将軍家の権力が失墜し、将軍家を「公儀」を奉る守護大名はどんどん減っていき、領地に帰っていく大名が増えました。

しかし、領地では守護が留守にしていた間に守護代が力を持ちすぎて主君である守護大名をしのぎ、自らが戦国大名化するところも続出しました。

こうなると、地方の大名は公権力などをあてにせず「自分の領地は自分たちの力で守る」という流れにならざるえません。

さて、今回の新型コロナウイルスにによる日本政府の動きは、色々な事情があるとは思いますが、総じて場当たり的、そして遅々な状況に見えます。トドメが「国のトップが犬と戯れる動画で国民が癒される」と考えるアホな広報担当者でしょう。

そしてその態度は、各都道府県そして市町村の首長に

「国には頼れない」

ということを見せつけてくれました。
その結果、上記のような地方自治レベルでできることを考え、やり始めたのだと思います。これこそ、地方自治体による国への「異議あり」であり、国は頼りにならないという決意表明だと自分は認識しました。

これはまるで、応仁の乱の後の戦国大名のようではないでしょうか?
国民の生命と財産を直接保護しているのは地方自治体(都道府県/市町村)です。その上に国と政府があるのですが、その動きの遅さにしびれを切らした感があります。

「御恩」と「奉公」を忘れた国に従う必要はない

昨日(4/16)現在、国は国民一律10万円給付を決めました。ですがここに到るまで、制限をつけるだの、収入が50%下がった人に絞るだの、とにかく国民からすれば「遊んでるの?」と思いたくなるぐらいのグダグダ感満載でした。

結論から言えば、小池百合子東京都知事や、高島宗一郎福岡市長など、それぞれの地方自治のできる範囲の部分で支援を打ち出した首長の株が上がりました。それに追随する自治体もできる範囲で頑張っています。

しかし、我が国の内閣の面々はどうでしょうか?。
国民が直面している事態が見えているのかいないのか、わかりませんが、要請だけ押し付け、その要請が国民生活を脅かしている結果になっているにも関わらず、それに対する見返りはない。

かつての鎌倉幕府の支配構造は、将軍(為政者)と御家人(守護・地頭)が「御恩」と「奉公」の主従関係にありました。将軍が御家人の領地を安堵する代わりに、御家人は将軍が命令すれば遮二無二働く。これで支配のバランスが取れてました。

鎌倉幕府が滅んだのは、元寇(当時の中国がせめてきた)で幕府のために働いた御家人に恩賞が出せず、徳政令(借金棒引)を出すしかなかったこと。加えて、地方の守護・地頭職や幕府の要職を当時の幕府の実質的為政者であった、北条得宗家および得宗家家臣(御内人)がほぼ占め、御家人の不満が爆発したためです。

足利幕府が滅んだのは、応仁の乱と明応の政変で将軍権力が失墜し、最終的には大名が将軍を暗殺する(13代将軍義輝)事態になり、世の中がアンコントローラブルに陥り、独裁力の強い為政者が求められたためです。

徳川幕府が滅んだのは、迫り来る諸外国の荒波に幕府が適切に対応できず、なおかつ昔の政治のあるべき姿(天皇による治国政策)に戻すべきという機運が高まり、薩長土肥をはじめとする地方大名が朝廷と連携し、徳川氏が朝敵になったためです。

今、我が日本国を襲う危機は、国体を担うべき閣僚と国会議員が政権を巡って権力闘争に終始し、国民生活は置いてきぼりにされている状況です。そんな中、地方自治体は国が決めてくれるのを待つしかない。でもそれでは遅すぎるとして動き出したのではないでしょうか。

現代風にいうならば、「地方は国にしたがっていればいい」「そのために出しているのが交付金」という理屈は、昔でいう「御恩」と「奉公」です。

しかし、今の日本政府は大名や領民に「要請」ばかりで、その要請が正しく運用されるべき「適切な施策」がありません。それゆえ、要請の効果が不十分になってると考えています。これは致し方ないでしょう。

今回の地方自治体の独自の支援は、昔風に言えば、幕府が支援策を出さない中、大名が独自に領民に支援施策を出してるようなものです。その結果、どうなるかというと、幕府の威信は低下し、大名の株が上がるという流れが起きています。

にも関わらず、今の日本政府(幕府)は、幕閣(閣僚/与党)の中で権力闘争を行なっているようです。

この「国難」に対して一体、何をやってるのでしょう。
もしかすると、あなたたちが閣僚どころか、国会議員の身分すら剥奪される時代がくるかもしれないという時に。

今回起きていること、そして地方自治体がやってくれたことを、我々国民は絶対忘れてはならないと思います。そして大事なことは選挙で正しい審判を与えること。場合によっては、今回の事態を受けて、国体そのものが変わるかもしれません。日本はそうやって適宜、時代にあった政治体制を作ってきた国ですから。

まさに

立てよ!国民!
そして
(自治体がやったことを)忘れるな!国民!

ではないでしょうか。



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