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【算数】整数を「連続する整数の和」に分解する問題の解法まとめ

 先日、筑波大学附属駒場中、駒場東邦中の「ある整数を、連続する整数の和で表す問題」をご紹介しました(こちらの記事)。ベテランの先生に聞くと、主に難関校で昔から出される問題だったものが、近年再びリバイバル出題されているようです。
 ところが、時間を隔てて頻出であるにも関わらず(だからこそ?)、世の中に紹介されている解法が種々散り乱れていることが分かりました。今回はここに集結させます。
 教育を目的とした教材ならば、解法を一つしか掲載しないことは、学習者にとって不親切ではないかと常々思っています。我ながら尊い試みです。


【例題】そしてゴール

正方形のマスの中に,1は1個,2は2個,3は3個のように整数nはn個使い,ある整数から連続した3種類以上の整数を図のように小さい順に並べます。
(2)10マス四方の正方形にちょうど並べきるには,いくつからいくつまでの整数を並べればよいですか。

開成中 2018年 かなり抜粋
平方数である必然性は無いところが賢く感じる。

例えば図2を見ると、6×6=11+12+13=36というように、連続する整数の和で平方数を表す問題だと理解できます。ここから、世間の先生方の解法が分かれます。


【解法1】平均フィルター発動

10×10=100より、和が100になるものを考える。

  • 奇数個が並ぶ場合…連続する整数の平均は真ん中の整数と一致するので、整数×奇数=100となる数を探す。
    ①100÷1個=100 →100を真ん中にして1個並べる。問題の条件と不適。
    ②100÷5個=20 →20を真ん中にして5個並べる。18から22
    ③100÷25個=4 →4を真ん中にして25個並べる。1より小さくなってしまうので不適。

  • 偶数個が並ぶ場合…平均は必ず□.5となる。□.5×偶数=100となる数を探す。
    ④100÷8個=12.5 →12と13を真ん中にして8個並ぶ。9から16
    ⑤100÷40個=2.5 →2と3を真ん中にして40個並ぶ。1より小さくなってしまうので不適。
    ⑥100÷200個=0.5 →0と1を真ん中にして200個並ぶ。無理無理。
    ※奇数×整数=100となる組み合わせが見つかれば、□.5×偶数=100と書き換えられる。あるいは、100=2×2×奇数なので、2×2×2×奇数で割ると商が□.5になる。

※実際には、⑤⑥はそれぞれ②①に対応しているので調べなくてもよい。
★予備知識が無くても偶数と奇数の場合分けなら思いつきそうです。昔はこの解法が主流だったらしいです。この場合は平均値でも中央値でも全く同じ。


【解法2】ニュースタンダードモデル

10×10=100より、100を約数の積の形で表す。
100=1×100=2×50=4×25=5×20=10×10
奇数を含む場合のみ考えればよい(この問題専用の知識)。

  • 奇数個が並ぶ場合
    ①100×1個 →100を真ん中にして1個並べる。問題の条件に適さない。
    ②20×5個 →20を真ん中にして5個並べる。18から22
    ③4×25個 →4を真ん中にして25個並べる。1より小さくなるため不適。

  • 偶数個が並ぶ場合
    ④1×100組 →和が1になる2数の組が100組即ち200個並ぶ。無理。
    ⑤5×20組 →和が5になる2数の組が20組即ち40個並ぶ。無理。
    ⑥25×4組 →和が25になる2数の組が4組即ち8個並ぶ。最小の数と最大の数の差が8−1=7になるので、最小の数は、(25−7)÷2=9。9から16

※実際に解く際は、④⑤は①②と重複するため省いた方がよい。
★上記の平均を用いた解法を精米して食べやすくした感じで、現代はダントツにこの解説が多いです。「声の教育社」様の過去問の解説はみんなこれです。


【解法3】マイナス先輩 幅を利かせる

10×10=100より、100を約数の積の形で表す。
100=1×100=2×50=4×25=5×20=10×10
奇数の約数を持つものを調べればよい(この問題専用の知識)。

①100×1個 →100を真ん中にして1個並べる。問題の条件に適さない。
②4×25個 →4を真ん中にして25個並べる。
-8から16までの和となるが、-8〜0までの和は、0〜8までの和と相殺するので、9から16が残る。
③20×5個 →20を真ん中にして5個並べる。18から22

★負の数を使って押し通すことで、上記の偶奇による個数⇄組数の読み替えを取り去って手間が半分に減りました。問題には正の数とは書いていないので−8〜16も正解な気がしますが。。それにしても数学です。


【解法4】基本が最強。

等差数列の和=(初項+末項)×個数÷2なので、(A+B)×(B-A+1)÷2=100となる数A、Bの組を求めればよい。
(A+B)×(B-A+1)=100×2=200より、200を約数の積で表す。
200=1×200=2×100=4×50=5×40=8×25=10×20
2数の和と差は必ず偶奇が等しいので、A+BとB-A+1は必ず偶奇が分かれる。よって、奇数と偶数の組のみ調べればよい(※偶数×偶数などを調べたとしても答えが整数にならないので間違えることはない)。

①200×1 →AとBの和が200、差が0より、A=B。不適。
②40×5 →和が40、差が(5-1)より、(40±4)÷2→18から22
③25×8 →和が25、差が(8-1)より、(25±7)÷2→9から16

★最初から2倍しているので、途中でごちゃごちゃ2倍せず、場合分けによる計算方法のチェンジもスルーできています。2023年の『中学への算数』でもこれに近い解法が載っていました。


【結論と補足】

最後の「解法4」を強くお勧めします。解法を覚えなくても、既知の知識をつなげるだけで解ける上、場合分けの手間が無く、不適な解を求める手間も無いからです。この問題のための解法を覚えるコスト、忘れるリスク、注意力を消費するデメリットを取る理由がよく分かりません。

補足:「何通りの和で表せるか」だけであれば、ズバリ「奇数の約数の個数−1」となります。1以外の奇数の約数で因数分解できたとき、必ず連続する整数の和で表せるからです。ということで確認問題↓

サレジオ中の2021年、渋谷幕張中の2020年でも問われています。

2023年12月14日

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