見出し画像

【算数】フィボナッチ数列と倍数についての良問

日本で最も受験生が多い中学校、栄東中(さかえひがし)の算数は、よくある問題に見えて意外と新しいことと、計算が気持ち良く着地する上品な問題が多いことで、楽しい入試問題です。
この問題も、数の理解を深める、教科書に大きく載せたい良問です。

【問題】フィボナッチ数列とNの倍数

「となり合う2つの数を加えて次の数をつくる」という規則で、下のように整数が2023個並んでいます。
1,1,2,3,5,8,13,21,34……
このとき、次の問いに答えなさい。

(1)2の倍数は何個ありますか。
(2)5の倍数は何個ありますか。
(3)40の倍数は何個ありますか。

栄東中 2023年

なんてシンプルな問題でしょう。これは有名な「フィボナッチ数列」です。不思議な性質が多く、世界中で研究が続いているようです。

【(1)解説】2の倍数。もちろん調べよう

「1,1,2,3,5,8,13,21,34…」の偶奇を調べると、
「奇、奇、偶/奇、奇、偶/奇、奇、偶…」ラマーズ法のような周期が出てきましたね。偶数は3個に1個、あるいは3の倍数個目に登場するとも言えます。よって、
2023個÷3個=674あまり1個(あまった1つは奇数)より、674個です

【(2)解説】5の倍数。何となくで解けちゃう

1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144…→一の位だけを足していくと、
1,1,2,3,5,8,3,1,4,5,9,4,3,7,0,7,7,4,1,5,6,1,7,8,5…と続きます。
5の倍数(一の位が5か0)は、なんだかよく分からないけど均等に5つおきに登場しています。よって、
2023個÷5個=404あまり3個より、404個。こんな解き方でいいのかな…?

【(3)解説】40の倍数。タネ明かし

上のような解き方だと、40の倍数は大変でしょう。問題を「分解」して、よりよい方法を探りましょう。
1.40の倍数は、(2)で求めた5の倍数で、かつ8の倍数であると気づく。よって、8の倍数が現れる規則を知りたい。
2.しかし、8の倍数の判定は面倒。どうにかできないか?
ここで、「あまりの計算」が役に立ちます。「8の倍数である」ことと「8で割ると余りが0である」ことが同じであることを利用します。そんな当たり前の言い換えが何なのか?やってみましょう。
1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144…→これを「8で割った余り」に変換すると、
1,1,2,3,5,0,5,5,2,7,1,0,1,1,2,3,5…と周期的に続きます。しかもこれはいちいち割る必要は無く、元の数列のルール「となり合う2つの数を加えて次の数をつくる」で余りも次々に求めています。1+1=2、1+2=3、2+3=5、3+5=8→8で割った余りは0、という流れです。
 これで8の倍数は6の倍数個目に登場していると分かったので、「5の倍数でかつ8の倍数」は「5の倍数個目かつ6の倍数個目」に登場。つまり「30の倍数個目」に登場します。よって、
2023÷30=67あまり13より、67個

【補足】あまりの計算について

 実は3問とも(3)の方法で解けます。「奇数」「偶数」とは、2で割った余りで整数を二分しただけで、(2)(3)のように別の数でも余りで分類することはよくあります。近年このような、余りに注目させる入試問題が増えた、と感じます。
 剰余に注目といえば高校で学ぶ「合同式」ですが、この問題もその性質を利用しています。しかし全く難しいことはなく、「10で割って2余る数と10で割って8余る数を合わせたら、もう一回10で割れる」を理解するだけのことです。数学というよりむしろものすごく算数的な考え方です。計算問題でも役立つので、ぜひ理解してほしい。
 調べてみたところ「合同式」は以前の高校の課程に無く、いつしか加わり、そしてまた消滅するようで、安定しません。もう中学で良いと思います。

剰余の性質を感じる練習問題↓

2023年9月6日

おいしいコーヒーが飲めると集中力も想像力も高まります。 よろしければコーヒーサポートをお願いいたします😌☕