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「あの大学って何してるの?」を概念マップで探索してみよう 【東工・医科歯科=東京科学大学】

以前から話題になっていた東京工業大学と東京医科歯科大学の合併ですが、統合後の名称が「東京科学大学」に決定したようです。名称の是非はさておき、今回はこの統合前の2大学の研究情報をもとに、東京科学大学の概要を見ていきます。

東京科学大学の研究マップ

科学研究費助成事業データベース(KAKEN)から取得した東京工業大学および東京医科歯科大学の2001年以降に開始された研究を分析対象とします。情報の取得は2022年8月に実施し、その時点で約1万4千件が該当しました。その研究概要に記述されたテキスト情報を解析してマッピングしたものが下記になります。

東京科学大学の研究マップ(2001年〜2022年)

上記の図は2大学を統合したものなので、各大学でフィルタリングした図を左右に並べてみます。左が東京工業大学、右が東京医科歯科大学です。お互いの特徴がマップ上でもはっきりと分かれていますね。

東京工業大学と東京医科歯科大学の研究分布

東工大は幾何学、地震、材料、化学など

当然ながら、東京工業大学は工学系の研究を多く積み重ねてきています。研究の蓄積をヒートマップから読み解くと、特に幾何学や地震の分野で研究の蓄積が見られますが、意外と社会分析・地域調査にも強いようです。
そして、材料系や化学系のエリアも広くカバーしています。ここはラベルを見た感じでは、薄膜(半導体製造)や合金、有機化合物に関連する研究が多く、その連なりが細胞など生命化学の方面にも伸びているのが気になります。

医科歯科大は口腔、再生医療など

こちらも当然ですが、東京医科歯科大学は義歯や咀嚼など口腔分野の研究と、細胞など再生医療に関する研究の蓄積がみられます。あとは医療・看護にかかる調査研究もあり、これは社会調査と近い内容のようです。

2大学が手を取り合うのはどこ?

2つの異なる大学が統合されることで、両者の得意領域の掛け合わせによる分野横断的な研究が進むと仮定してみます。その分野横断的な研究というのをマップから読み解いてみましょう。

東工大と医科歯科大の結節点

少し思考実験的な手法になりますが、東工大と医科歯科大の分布の分かれ目について大まかに定義した線を引き、2大学の結節点となりそうな箇所をA〜Dで示してみました。

まずAから見てみます。ここは「細胞・タンパク質」に関連する研究エリアであり、主に再生医療の研究が集積している箇所です。ここには既にお互いの研究が集積しているので、2大学の統合による相乗効果が特に生まれやすい箇所だと考えています。
次にBですが、ここは「歯」に関する研究エリアで、離れ小島のように周囲に研究の蓄積がない状態です。ここはやや相乗効果が生まれにくい箇所と推察します。
Cの箇所もお互いに研究の蓄積が少ない空白地帯となっていますが、左側は「ロボット」、右側は「義歯」の研究箇所なので、合間を想像するとロボット外科の分野が想起されます。この合間を埋めるように研究が活発化したらインパクトが大きそうなので、個人的に期待したいところです。
最後にDの箇所、ここは社会分析・地域調査の研究エリアです。昨今の医療は治療や手術だけでなく未病/予後のケアも大事にしていると思いますので、いわゆるQuality of Life(QoL)とかウェルビーイングの実現という観点で、社会調査にお互いの知見は大きく生かせるのでは、と思います。

まとめ

今回は東京工業大学と東京医科歯科大学の統合によって生まれる東京科学大学の研究マップを読み解きました。
2大学が工学系・医科歯科系のトップ大学ということで、マップからもそれぞれの特徴がはっきり分かれる形となりました。
東京工業大学は幾何学や地震、半導体等の材料、有機化学といった分野に強く、加えて社会調査の分野も研究の蓄積が見られました。
東京医科歯科大学は口腔医療、再生医療の分野で特に研究の蓄積が目立っていました。
そして、この2大学の統合により相乗効果が得られそうな研究分野としては、特に「再生医療」、今後の期待を込めて「ロボット外科」、注目箇所として「社会調査」を挙げました。
少し思考実験的な手法も交えた分析ですが、2大学の統合が良い研究成果を生み出すことを期待したいと思います。

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