目からウロコな「弾きやすい三線」の選び方
さてみなさん、こんにちは
ここのところしばらく、三線のお話がつづいていますが、今日はネットなどのどこにも書いていない秘密のお話をしようと思います。
それは「弾きやすい三線」の選び方について
なのですが、目からウロコの衝撃の結果が待っていますよ!
わたくし左大文字は、いちおう三線・三味線マニアのはしくれとしてどんな楽器でも弾けますが(←えらそう)
「なんか相性が悪いなあ」
という楽器はあります。たしかに存在します。
その「弾きづらい」という要素は、人によってもポイントやツボがいろいろ複数あると思いますが、今回は最後に一番大きなネタを持ってくる予定(^^
<棹の重さとエトセトラ>
まず、三線業界のおおまかな傾向として、30年前は本州のマニアが「黒木がほしい!」なんて思わなかったので、良いものは良い棹として存在していたものの、上下のばらつきはそれほど広くありませんでした。
ところが、三線ブームを経て、本州人の中にも高いお金を出して希少材の棹がほしいという人数が増えたので、貴重な三線用木材は特に取り合いになって価格も上昇してゆきました。
反対に、海外製の安い棹も増えて、国産の比率と海外産の出荷数比率は1:2〜1:3ぐらいになっているとも言います。
価格比率の方はもう、えらいことになっていますよね。
そうすると、
「良い棹ってなんですか?」
ということをざっくり言えば
「黒木に近い、密度の高い重い材」
という回答が、いちおうの教科書通りの回答になったわけ。
ここで注意点。
「重い材」
が良いのであって、
「重い棹」
が良いというのは、二次的なものです。これ、誤解を招く微妙な言い回しなんですね。
もちろん、太く重い棹を「重厚な音がする」として評価する奏者もいるのですが、それは別にしても、何が起きたかというと
「販売される初級、中級三線の重量が重くなった」
のです。
私がはじめて沖縄で三線を買って、それから30年の間に自分の棹を買ったり、他人の棹を選んで購入したりしてきた経過を見ると、確実に三線の重さが増えていると感じます。
これは当然「重い棹が良い棹=黒木に近いもの」という感覚があるからで、それはそれで良いことなのですが、逆に言えば、安い木でそれを実現しようとすると
少しずつ棹が太くなる
ということも起きているわけです。
本来であれば、繊細で華奢な細い棹でも、木がよいのでズッシリと重量がある、というのが理想だとすれば、今の棹は
「全体的に太り気味で、それによって重量を感じる」
ものが多い、ということになります。
ここで、第一のポイント。太い棹は太い棹なりのサウンドがあり、それが悪ではないのですが、太い棹は取り回しが難しく、弾きづらいことが否めません。
クラシックギターの太いネックと、エレキギターの細いネックを比較すれば、良し悪しは別にして「弾きづらさ」の違いには気づいてもらえると思います。
ちなみに、エレキギターのネックを細くできるのは、中にトラスロッドという鉄棒が入っているからで、それがない素の木材では、ギターの弦の張力に負けます。
だからもともとクラシックギターのネックは太いのですね。
<弾きにくい三線は上コマ(唄口)が悪い>
これも実は細かいことを言えば、弦の間隔は広いほうが好きな人もいるし、細いほうが好きな人もいます。
標準的には、12ミリくらいで上コマ(唄口)の糸幅を設定して、間の間隔を均等に取るようですが、狭いものは10ミリ〜11ミリあたりで切り込みを入れているものがあります。
上コマは交換できる部材で、中古三線の中にはここを変えているものも多く見られますが、実はやっかいな部材で、交換しようとするとサイズが微妙に違うので、楽器本体を削らないといけません。
ノミで彫り込みを変えるのですが、この時に漆が欠けたり禿げたりします。ですから唄口まわりの塗りがおかしくなることが「ほぼ必ず」起きます。
このあたりの修理をきちんとしてくれる三線屋さんは、腕があるということになるでしょう。
【良品】
これは私もお世話になっているASOVIVAさんの三線です。間隔が均等でキレイに整っていることがわかります。新品状態です。
【悪品】
こちらは悪い例。太い弦と真ん中の間隔が狭いのがわかりますか?その差1ミリもないくらいの違いですが、よーく見ていると気づきます。
また全体的に右に寄っています。この上コマ(唄口)は交換されているのですが、交換して悪くなっているのでは?という駄目な例です。
全体的に間隔が狭くなっているので、人差し指が押さえにくいのです。
【修理 良品】
こちらも修理品。漆が欠けているのがよくわかると思います。ここを漆で再塗装しなかったので、黒で塗ってごまかしてありますね。
しかし、糸幅はまったく問題なしです。見栄えはともかく演奏に支障はありません。
<これが超絶ポイント!三線は裏から横から見るべし!>
♪後ろから前から という畑中葉子さんの名曲(迷曲?)がありますが、ちょっと下ネタはともかく、三線を買うときはここに注目してください。
今まで、業界では誰も言っていない「目からうろこ!」のポイントです。
そもそも真壁型なんてもはや完成された形で、それほど大きな違いなどない、というのがおおまかな公式見解ですが、実は真壁型で定義できていないある箇所が
「忘れられた存在」
としてあったのです。そこが演奏フィーリングに大きく違いを生じさせます。
【A 新栄堂】
那覇の新栄堂さんの棹。真壁の基本としてじーっと見てくださいね。
【B またよし】
那覇の「またよし」さんの棹。基本は新栄堂のものと似ています。
おなじ又吉真栄さんの系統なので、まあ当然ですね。
【C 製作不明】
そしてこれが問題の「弾きづらい三線」です。表からみると何が違うのか全然わからないと思います。そりゃあ真壁型の基本に沿って削られているからです。
ところが、こいつだけが非常に弾きづらいのです。その理由を♪後ろから前から見てみましょう。
【A 新栄堂(またよしも同じ) 裏】
【C 製作不明 裏】
こちらは一目瞭然ですね!そう、「乳袋の裏のデザインが違う」のです。
これ、駄目なほうは「細い」、普通のほうは「丸い」と感じると思いますが、それもちょっと違います。これらはたまたま真壁ですが、与那城などは全体的に細いので、ここの加工も細めになっているものがあります。
そういう場合はダメではありません。
では今回の悪例、何が問題だというのでしょうか??
今度は横から見てみます。
【OKな三線】
今回は「またよし」さんの写真をどうぞ。新栄堂さんのも同じです。
【弾きづらい三線】
さあ、わかりましたね!この三線は表の真壁ラインはおなじなのに、裏が「長い」ので細くなっているのです。ただ「細い」のではなく
長い!!!
ことが問題なのです。
なぜかというと、ここが長いことで、指が棹の上(天側)へ行きません。つまり、いちばん最初の勘所・ツボに対して
アクセスがしづらい
のです。つまり、ファーストポジションウイカを弾こうとすると、そこまで指が行ききらないのです。
↑の写真のように、人差し指を曲げて2の箇所を押さえようとするわけですが、親指が乳袋によってストップされるので、これが長いと上まで手がアクセスできないことになります。
だから、この箇所は短ければ短いほうがいいのです。
三味線の場合は、写真でいう1のポジションを多用しますから、乳袋の長さは、三線の半分しかありません。
三線デザインのままだと1のポジションが押さえられないからです。
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<まとめ>
三線はやはり、実際に棹を握ってみて、指をポジションどおりに動かしてみてフィーリングがわかるものです。
このように、通常見えない箇所のライン・デザインによって演奏感が大きく変動することがあるので、
気をつけなはれや!!
★ 所有楽器で言えば
・新栄堂さん ・またよしさん
→いちばんまるっこい
・ASOVIVAさん ・西武当新垣三線さん ・松田三味線さん
→標準的まるみ 十分短い
でした!みなさんの楽器もどうなってるか見てみてね!
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