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「一生もの」の三線に出会うには


 さてみなさんこんにちは

 わたくしこと、不肖ヒダリダイモンジさんが、三味線や三線楽器に出会って、もうすぐ30年になろうとしていますが、その間いろんなことがありました。

 いやいや、プライベートでもいろいろありましたが、楽器についても「いろいろ」です(笑)

 ふだんはゴッタンやら、三味線系楽器を依頼を受けて作ることも多いのですが、すでに総製作数は300棹くらいになっていると思います。(もちろん、いわゆる正式な楽器製作者ではなく、チープでポップな手作り楽器屋さんなので、3000円からの軽~いノリのラフな楽器も多いです)

 まあ、そうした作ったほうの楽器はともかく、購入したほうの楽器には、それだけの歴史と思い入れがあるというものです。


 というわけで、今回は、特に三線や三味線をはじめようと思っている人や、はじめたばかりの方への、「とある変なおっさんからのよもやま話」として、

一生ものの楽器に出会う

ということについて語ってみたいと思います。


 初心者が「どの楽器を選べばいいのか」ということは、よく質問に上がります。三線であれば1万円台から100万円まであり、三味線でも3万、5万円台から100万円台までラインナップがあります。

 さすがに10万円以上のものを最初から購入する人は希(まれ)だと思いますが、どんな楽器を選ぶのがよいのでしょう。


 左大文字さんの個人的な感想としては、まず

◆ 1万円や3万円など、楽器として最低価格に近いものはやめておきしょう

ということは確実にアドバイスできます。

 エレキギターなどでもそうなのですが、1万円台からたしかに販売されているし、弾けないことはないし、ちゃんと音も一応出ます。

 しかし、最低価格をめざしてコストカットした楽器は、みかけはそれっぽいのですが、「演奏感・弾いたときのフィーリング」などが、最悪です。

 これは、少なくとも「その次の価格帯」のものと比べるだけで一発でわかります。

 一発でわかるくらい、弾くのがしんどい楽器は避けたほうがいいよね、という話です。


 そこで、オススメなのは

◆ 第二段階の価格帯の楽器

で、これはその楽器と一生つきあってゆく上でのスタートになると思います。


 三線で言えば、昔も今もあまり「標準・入門楽器」の価格帯は変わっておらず、

「楽器本体が3万から4万円・ハードケースがついてジャスト5万」

というのが定番で、間違いがない楽器でした。

 これはいまも有効で、それより下の海外製がバンバン出てきて、1万円台とか2万円台のものが溢れているだけであり、

「ふつうの、まともな、三線」は今でも3万から5万

の価格帯に収まっています。

 そこから、ちょっといいものが7万~10万程度、材料の木材が希少なものが10万超えということになります。

 三味線になると、標準楽器は8万~15万くらいでしょうか。5万前後でギリ使えます。3万程度のものはしんどいです。


 エレキギターでも似たようなもので、5万程度出せばそこそこいい楽器が入手できますね。1万2万の通販モデルはボツです。

 10万出せば、中級者以上でも十分満足できる楽器があり、ギブソンやフェンダーの輸入ものは20万する、というただそれだけのことです。

(実は国産の良品のほうが安いし、造りがいいのは有名な話。アメリカ人はハンダ付けが下手だからです)

 ただし、どんな楽器でも20万前後になってくると、手に触れただけでビビビときます。

なんじゃこれ!すげえな!

という質感に変わります。(音の良し悪しはその価格に比例するか、しらんけど)

 そのフィーリングこそが、高い楽器の魅力です。


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 余談ですが、三線の場合「本皮・二重張り・人工皮」のどれがいいですか?もよく出てくる質問ですね。

 これは究極の答えは

◆ 三本とも、いつかは触ることになる!

というものです(笑)

 三線弾きとして、それなりに年数が経つと、どれから入っても、いずれ

「どの音も気になる」

という時期がきます。ですから、結局気がつけば、3棹になっているということは、

「三線あるある」

です。その段階で、棹もいいものを買おうとしているのか、棹は普通で、胴だけラインナップを揃えようとするのかは人それぞれですが、何かのチャンスを得て、依頼されてどこかで演奏したりするようになった人は、結局どれも手を出してしまいます。

 なぜかというと、外で演奏する機会を得る人は、天候に左右されるからです。

 「雨の日に持ち出して演奏する機会を得ても、本皮を持っていきたくない」

と思ったら、次の瞬間には人工皮をポチっとしていることでしょう(←あるある)

「コンクールをめざそうかな」

と思ったら本皮を持っていないと!と焦ります。


 とまあ、そんな「いろいろ」が誰にも起きるのですが、私の場合は、

◆ 1棹目、本皮からスタート 

◆ 2棹目も本皮

→ どちらも破ける

◆ 3棹目は人工皮

◆ 4棹目は強化張り

という流れで、全部コンプリートです!!


 この段階で、自作派ですから、1棹目と、2棹目は人工皮のチーガに取り替えています。結果人工皮3/強化張り1です。

あれ?本皮どこいった?!


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 これはみなさんの住んでいる地域や、演奏機会の多さにもよるのですが、最終的には「強化張り」はオールマイティに使えるのでオススメかもしれません。

 三線らしい蛇皮を見せて演奏したい、雨の日でもOK、音もまあまあ

ということであれば、強化張りにしておくと使い勝手がいい棹になります。


 それに、

 そこらへんに転がしておいて、いつでも弾く棹

としては人工皮がオススメです。これは雨の日に持ち出してもOKですし、野外などの荒っぽい条件でも耐えられます。

 ところで、本皮はいいです。もちろんいいです。いいんです!

 ・・・でも、けっこうかならず破けるんです。

 だからセミプロ奏者になって、きちんと適宜張替えをする人以外は、おのずと避けるようになってゆきます。

 何事も経験ですから、最初本皮を買って、破ける体験をするのも、

三線道の王道

かもしれません(笑)


 ちなみに私がyoutubeで使っている棹は、一番最初の棹です。人工皮に取り替えてから2007年より録画が始まっているので、それ以前にひとしきり弾いていたということでもあります。まさに、最初の1棹が、一生ものになってゆきつつあるということですね。(購入は1993年です)


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 最後にまとめ代わりにお話をひとつ。

 私は楽器は「音」の良し悪しでもないし「値段」の高低でもないと思っています。

 楽器とは何かを一言で哲学するなら


「楽器とは思い出である」

ということに尽きます。

 三線に限らず、所有楽器が増えてゆくのはそのどれにも、買った時の思い出がくっついてくるからですね。あるいは、楽器ごとに

「ああ、これはいついつのどこそこの会で使ったなあ」

といった、演奏の歴史もいっしょに重ねてゆくことになります。

 だから、少々音が悪かったり、手のフィーリングが悪くても、それはそれでアリです。

「あいつには手こずらせられたぜ!」

という楽器があっても、それはそれでいい思い出なのですね。

(↑過去形なのは、売り払ったからです(笑) え?三線じゃないよ、ギターだよ)

 また同時に

「あいつを手放さなければよかった」

と悔やむ一棹も出てきます。私もエピフォンのレスポールを売って悔やんだことがあります。


 なので、みなさんも、最低ランク以外の楽器であれば、十分それは一生つきあえる伴侶となると思います。ぜひ思い出を重ねてみてください。







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