ダブルダイヤモンドで解くべき課題と最適な解決策を見つける
こんにちは。
営業DXサービス「Sansan」のプロダクトマネジャー(PdM)をしている佐々木です。
先日、PdM1年目の成長と挑戦というイベントに登壇しました。
登壇のなかでSansanのPdMは企画を進める際に「ジョブ理論」と「デザイン思考」のダブルダイヤモンドを取り入れていることについて触れました。
「ジョブ理論」の実践については同僚の乙幡祐生が以下の記事でまとめているので、今回は「デザイン思考」のダブルダイヤモンドの実践について紹介したいと思います。
ダブルダイヤモンドとは?
ダブルダイヤモンドとはデザイン思考のプロセスモデルの一つです。このモデルは問題解決のプロセスを視覚的に示したフレームワークであり、課題を定義する前半と解決策を選定する後半とでそれぞれ「発散」と「収束」を行います。
ダブルダイヤモンドを実践することのメリットは以下の2つです。
解くべき課題を明確にできる:
何か問題を発見した時に、すぐにそれに飛びついてしまいがちですが、ダブルダイヤモンドを実践することで、他の観点から見た問題を洗い出すことができ、本質的に解くべき課題を見つけることができるようになります。
適切な解決策を見つけられる:
多角的な視点から解決策を検討することができます。また、複数のアイデアを比較・検討することで、最適な解決策を見つける確率が高まります。
実際に行っていること
上記の通り、ダブルダイヤモンドは課題領域と解決策領域でそれぞれ「発散」と「収束」を行うのですが、実際にやってみると思うように発散できなかったり、収束するための基準や方法が分からなかったりします。そこで私自身が「発散」と「収束」をどのように実践しているのか、具体的にご紹介できたらと思います。
「発散」のヒント
1.シーンで分ける:
突然ですが「あなたの長所を10個教えてください。」という問いに対してすぐに答えられますか?実は簡単に答えられる方法があります。それは、シーンを分けるという方法です。例えば、PdMとしての私、友達といるときの私、家族といるときの私、それぞれのシーンで長所を述べると、1つのシーンに対して3~4個の長所を答えれば良いので、簡単に長所を10個答えることができます。
課題や解決策の発散に向き合うときも同じです。例えば、課題を発散するときは、ユーザーが置かれているシーンを洗い出すことで発散が進みます。個人の成績を追っている営業、チームの目標達成を重視している営業、解約阻止に向き合う営業など、同じ営業でもシーンによって抱える課題は異なります。このように、シーンを洗い出し、そしてシーンを分けて発散することを意識しています。
2.複数人で行う:
一人でアイデアを考えると、思考が偏りがちです。そのため、アイデアの発散は複数人で行うことをおすすめします。
私の場合、同僚のPdMやデザイナー、エンジニアと一緒にアイデアを考えることが多いです。それぞれの視点が異なるため、つい抜け漏れていた視点など新たな発見があります。またその意見から派生してさらにアイデアが広がるため、アイデアの発散が進みます。
そのため、アイデアの発散は一人で考えるのではなく、周りのメンバーと行うと効果的です。もし、複数人で集まってアイデアを考える時間や環境がない場合は、ChatGPTなどのツールを使ってアイデアを考えるのも良いと思います。(参考:ChatGPTを活用して「一人でもできる」デザイン思考ワークショップ)
「収束」のヒント
1.定量と定性で基準を設ける:
収束のフェーズでは、複数ある候補から1つに絞り込むための明確な根拠が必要です。この根拠を明確にするための基準として、定量的な情報と定性的な情報の両方を用いると効果的です。以下は、収束を効果的に行うために私が設けている基準の一例になります。
定量情報の具体例
課題を抱えているユーザー数
ログデータ(主に利用状況)
見込める売上高
開発に掛かる工数
定性情報の具体例
既存の代替手段では何故いけないのか?
ユーザーにとってそれは価値があるのか?
競合優位性はあるのか?
解決策は実現可能か?
このように、あらかじめ定量情報と定性情報の両方を用いた基準を設けておくことで、複数の候補を等しく評価し、最適な解決策に収束することができます。これにより、収束の精度を向上させることができるだけでなく、他者に対する説明の際にも説得力を持たせることができます。
2.ユーザー視点を踏まえる:
「それは解くべき課題といえるのか?」「それは適切な解決策といえるのか?」を評価するためにユーザーヒアリングやユーザビリティテストを月に15~30人程度行っています。
例えばユーザーヒアリングでは、ユーザーの業務を観察します。具体的にはユーザーの業務を細かく一作業一作業教えてもらう、ということをします。ユーザーの業務を疑似的に参与観察することで発散した課題は本当に存在する課題なのか?を評価するのに役立ちます。
もう1つのユーザビリティテストでは、ユーザーがシステムをどのように使うかを評価するために、解決策のプロトタイプ(試作品)を用意します。このテストの目的は、特定の課題を解決できるかどうかを確認することです。
具体的には、テスト用のタスク(例:同僚が登録した名刺を閲覧するなど)を用意し、被験者がプロトタイプを使ってそのタスクを完了できるかどうかを評価します。この際、タスクの完了にどれだけの時間が掛かるのか、どの部分でつまずくのかも確認します。
さらに、ユーザビリティテストでは複数の解決策のプロトタイプを用意し、それぞれを比較・評価します。これにより、どの解決策が最も効果的かを明確にすることができます。
その他の考慮事項
ダブルダイヤモンドのプロセスは一方通行ではなく、行き来することもあります。プロセスを踏んでいく過程のなかで新たな情報や視点を得られることがあるためです。ダブルダイヤモンドのプロセスを行き来することで、課題特定と適切な解決策を見つける精度が高まるので、後戻りできる前提で実践するのが良いと思います。
おわりに
今回は、私がデザイン思考のダブルダイヤモンドを実践してみて、苦労した点や悩んだ点を中心に、そこから得た知見を紹介させていただきました。これからデザイン思考のダブルダイヤモンドを実践しようとされている方、また既に実践されている方の参考になれば嬉しいです。この記事に関して、他にも提案や意見があればぜひお寄せください。
Sansanでは体系的なプロダクトマネジメントを実践しています。今回ご紹介したデザイン思考のダブルダイヤモンドの実践以外で実践していることが多数あるので、別の機会でご紹介できたらと思います。
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