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過ぎ行くものへ、愛を込めて~二つのゲームシナリオへ寄せて~

歴史上の人物を思う時、「もしも、この人物とこの人物が出会っていたら・・・?」、「敵対勢力同士だが、この人物とこの人物が手を携えて敵に当たっていたら・・・?」etc.etc...と考えたことは、ないだろうか?

そんな歴史上の「if」を見せてくれ、その一端を体験させてくれるゲームがある。

コーエーテクモのソーシャルゲーム、『大航海時代V』と『信長の野望201X』、この二つは、まさにそんなゲームである。

大型船が内陸部を航行できたり、現代と戦国時代が混ざり合ったり・・・と設定は、どちらもかなりぶっ飛んでいるが、シナリオ内容は、なかなかどうして、しっかりとしている。時代背景やその時代の登場人物に関する膨大な資料をベースに編み出されるゲームシナリオは、決して「薄っぺらいご都合主義」なものではない。

大航海時代Vは、大航海時代の世界を舞台に世界の海を航海して回るゲームで、他方、信長の野望201Xの方は、戦国時代を舞台に様々なスキルや特性をうまく組み合わせ、敵を倒す、パズル性の強いゲームとなっている。

一見、かなり異なって見えるこの二つのゲームだが、実は、根本のところで、非常に似通っている。

たとえば、どちらも、「その時代で良く知られた人物」が実際の生没年を超えて同時に登場する。

大航海時代Vの方では、マゼランやコロンブス、ヴァスコ・ダ・ガマ、トーマス・クックがそろい踏みし、ニュートンやガリレオ・ガリレイ、コペルニクスといった科学者たちも登場する。海賊キャラクターも豊富で、赤髭や黒髭以外にも、アン・ボニーやグレイス・オマリー等々の面々が騒ぎを繰り広げる。

信長の野望201Xの方も、幅広く戦国時代を生きた各地の多様な人物が登場し、活躍する。あまりに多すぎて、誰を取り上げれば良いのか決めかねるので割愛するが、「あの武将好きなんだよね」と思い浮かべる戦国武将は、ほぼ入っているはずである。

ちなみに、「時代を超えて著名人が一堂に会する状況が生まれる」理由も、きちんとシナリオ中に組み込まれている。

どちらのシナリオも、各人物を大事に取り扱っており、ただ一方的に誰かを責め立てるようなことは、行わない。各々には、立場があり、やむにやまれぬ事情があり、そして、悔恨がある。この悔恨の念については、特に201Xの方に顕著で、見ているこちらまで酷く切なくなることも少なくない。

誰かを完全な悪者に仕立て上げないながら、といって、一定の倫理を放棄してもいない。厳然たる現実の有様から、目を背けるわけでもない。例えば、大航海時代Vの方のアメリカ大陸における現地とイスパニアの軋轢に関わる話などは、やっていてかなりずっしりと来るものがあった。

いずれのシナリオも、この世ならざるものが「敵」として設定されているが(だからこそ、本来相容れないはずの人物たちが「手を組む」状況を作り出せるとも言える)、その「敵」に対しても、愛情と配慮があり、そこにまた哀切さが溢れる。

それでいて、全体の色調は、決して暗くなく、明るい。やりとりは、しばしばコミカルで、時にハチャメチャ(だが決して下品ではない)。プレイヤーは、楽しく(?)問題に巻き込まれ、「お人好しなんだから!」とキャラクターたちに言われながら、彼らと信頼関係を取り結んで行く。通常ならば、「あちらを立てれば、こちらが立たず」となりそうなものだが、巧妙なシナリオ運びで、基本的に誰かと敵対することは、ほぼない(怒らせることは、ある)。

シナリオを読んでいて、舌を巻くのは、各章の小シナリオが「理想的な展開でハッピーエンドに仕上げながら、同時に歴史が大きく改変されないよううまく着地する」という点。大航海時代Vの方は、若干変化が発生するが、201Xの方は、歴史的な関係は、ほぼそのまま残るよう作られている。

どちらのゲームシナリオも非常に面白く、ボリュームもたっぷりで楽しんでいたのだが、残念ながら、「大航海時代V」は、来る2021年3月末でサービスが終了することになってしまった。シナリオ的には、きちんと結末に到達するらしく(あと少しだが、実は、まだ私もラストにたどり着いていない)、オンライン系のゲームとしては、珍しいのではないだろうか。

他方、「信長の野望201X」は、現在、「信長の野望20XX」として、新たな展開を続けており、「201X」のシナリオも遊ぶことができる(ただし、20XXとの整合性のためか、特に初めの部分のシナリオに修正が入っている)。2020年が来てしまうと焦ったのか、201Xのシナリオが完結しないまま、20XXの方が始まってしまっているが、201Xの方のシナリオも順次展開されて行く模様。

大航海時代Vの方は、さすがに今から・・・というのは、厳しそうだが(何しろ、ボリュームが尋常ではない)、201Xの方は、今からでも十分楽しむことができる。戦国時代が好きで、面白いシナリオが好きな方、一度試されては如何?(ただ、ゲームとしては癖がかなり強いので、好みが分かれるとは、思う)。

何やら、ゲーム紹介のようになってしまったけれども。素晴らしいシナリオを作り提供してくれたスタッフの方々に、感謝を。本当に、面白く楽しかった。大航海時代V、ありがとう。201Xの方は、話の完結を楽しみにしている。

(終わり)

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