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ノ縞屋の魅力は現地買い付けから始まった


◇プロローグ・集められたこだわりの小物たち


一つ前のブログでもご紹介したが、ノ縞屋のギャラリースペースは昭和時代の庶民的な家屋の中にある。
所々陰影を生む漆喰の壁がスペースを囲み、経年変化でまだら模様になった木の板の天井や梁・階段の組み合わせが味わい深さを生んでいるのだが、そこに野島氏のセレクトした北欧雑貨が絶妙にマッチし気取らない美しい空間を作り出している。

店主専用スペースに立つ野島氏


置かれているものは、ヴィンテージ食器・革製品・雑貨・冊子など多岐のジャンルに及ぶが、そのどれもが不思議と調和しているのだ。

どうしてこんなにもバラバラなもので調和が取れるのだろう?

ということで、今回はこの疑問を解き明かしていく。

◇調和を生む「眼」


ノ縞屋に入って土間の奥にある畳のスペース左には、北欧各国で買い揃えられたヴィンテージ食器が並んでいる。

オーダーメイドで作った棚。様々な色彩が美しく調和している。


Arabia・Kirsikka・Balladi・marimekkoなど北欧好きの人なら1度は手にしたことがあるものばかりだ。
これらの工房については次回のブログで詳しくお伝えするが、幾何学模様だったり草花模様だったりデザイン性の高いアート的な模様だったり統一性はあまりない。
しかし棚全体で見たときに、違和感のなさやその配色の美しさにホッと安心感を抱くのである。
この安心感は、実は野島氏が意図して作ったものだった。

野島氏は買い付けの際に気を付けていることがある。
それは画を描くように作品を選ぶこと。

「買い付けで北欧に行く時はいつも、スペース(ノ縞屋)をキャンパスに例えて『ここにどんな画を描こうか』と考えるんですよ。だから部屋の広さや色合いなんかは全て記憶しています。」

ノ縞屋の展示スペースは白の漆喰の壁が印象的だ。
それはまるでキャンパスのようでもある。
ここに画を描くイメージで、北欧の国々の雑貨の買い付けを行なっている。

基本色は「白・黒・茶・緑」の4色。
色彩学的に「白は神聖・黒は重厚感・茶は緊張を緩める・緑は癒し」の心理的効果があると言われる。
それをベースにオレンジなど明るめの色の雑貨も選ぶ。
全体的に落ち着いた色味の中に所々反対色を入れることで、お互いの色が引き立ちより鮮やかな色彩となる。

それがより強く感じられるのが、1階の店主専用スペース隣に設置してあるオーダーメイドの棚だ。
ここには北欧のヴィンテージ食器が展示されているが、全体を眺めた時に絵のように調和のとれた鮮やかな色彩を楽しむことができる。


◇買い付けの様子


次に野島氏の買い付けの様子をご紹介しよう。

野島氏の買い付け方法は少し独特だ。
どこの国に行ってもまず歩く。ガイドブックなどはほとんど見ず、気の向くまま、足の向くまま歩き続ける。
そこで見つけた、気になった場所へ飛び込んでいく。

北欧の国々の街並み①

まず歩いてその土地の風土を思い切り味わい、自分の目に留まったものだったり、お客様の顔を思い浮かべながらだったり、お店に置いたらどうなるかを頭に思い描きながら、商品を探す。

ノ縞屋のヒット商品である「small house」は、その買い付けスタイルで見付けた北欧の東側の国・エストニアの工房で見つけたものだ。
small houseは「ノ縞屋」に屋号を改めた頃に訪れたエストニアの路地で偶然見つけた工房の作品だった。

small house


その時の買い付けでは心に引っかかるものがなかなか見つからない困った状況だったと野島氏は振り返った。
諦めかけて「今回はこれで最後だな」と思いながら進んだ路地の先にその工房はあったという。
路地の奥の奥、観光客ならそんなところは行かないだろうというようなところだった。

small houseは工房の若手職人が一つ一つ手作りするがゆえ不揃いな形をしており、色も様々にあった。
「小さなおうち」というテーマの中で職人の数ほどその作品があり、1つの村のコミュニティーのようにまとまっている。
その美しさにひとめで気に入り25個買い付けた。
現在ではノ縞屋だけでなくノ縞屋の関係店にて販売される人気雑貨となった。

small houseを作っているエストニアの工房の職人と

自分の感性のアンテナを最大に伸ばし、そこに少しでも感じた何かがあれば素直に進む。
そしてその先には素敵な作品との出会いがたくさん待っている。

北欧の国々の街並み②


さて、海外での買い付けといったら苦労があることも想像してしてしまう。
そこで野島氏に苦労のエピソードも伺ってみたが、特にないという意外な答えが返ってきた。

「高値で売りつけられたことも、偽物を紹介されたこともない。逆に大体売値よりも安く紹介してくれる。みんな親切なんです。」

北欧の雑貨の価値を見極める目を持ち、ふわりと柔らかな雰囲気を全身から滲ませる野島氏は、買い付け先の北欧の人々にとって信頼に足る人物として受け止められているのかもしれない。

◇これからの展望


最後に、今後のノ縞屋について聞いてみた。
「男性もののヴィンテージの革製品などを扱いたいと思ってます。古着とかも良いな。展示スペースを工夫して、色んな層の人たちが楽しめるようにしたい。もちろん自分が一番楽しみたいんですけど。」
と、力強い答えが返ってきた。

現在のノ縞屋に訪れる人は、30代から上の世代の女性が圧倒的に多い。
そこに新しい商品を取り入れることで、より幅広い層に北欧雑貨を通して北欧そのものの素晴らしさを伝えていく。

これからのノ縞屋の展開が、ますます楽しみになった。


※1月7日(土)から三方舎書斎ギャラリー(離れ)にて、「ノ縞屋展」が始まります。いつものとは違う真っ白な天井と床に囲まれた空間を、野島氏が北欧の雑貨でどんな風に演出するのか、どんな風に心地の良い空間を作っていくのか。
一味違う「ノ縞屋」を、ぜひ大勢の方に体感して頂ければ幸いです。
ノ縞屋展の詳細はHP・SNSにて随時お知らせいたします。
また、次回のブログでは野島氏が買い付けを行う北欧の国々や工房についてご紹介します。
どうぞお楽しみに!



執筆者/学芸員 尾崎美幸(三方舎)
《略歴》
新潟国際情報大学卒
京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)通信教育学部卒
写真家として活動
2007年 東京自由が丘のギャラリーにて「この素晴らしき世界展」出品
2012年 個展 よりそい 新潟西区
2018年 個展 ギャラリーHaRu 高知市
2019年 個展 ギャラリー喫茶556 四万十町
アートギャラリーのらごや(新潟市北区)
T-Base-Life(新潟市中央区) など様々なギャラリーでの展示多数
その他
・新潟市西区自治協議会 
写真家の活動とは別に執筆活動や地域づくりの活動に多数参加。
地域紹介を目的とした冊子「まちめぐり」に撮影で参加。
NPOにて執筆活動
2019年より新たに活動の場を広げるべく三方舎入社販売やギャラリーのキュレーターを主な仕事とする。

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