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庭には4羽にわとりがいる ひよこがやってきた

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ひよこは、初夏ごろひなを導入して育てるのが温度管理などを考えると一番初心者向きだそう。そういえばもともと野鳥が卵を産む時期も、春から夏にかけてのことが多い。

ひなは養鶏場向けのひなを扱っている孵卵場から購入するのが品質の上では安心なのだけれど、生まれたばかりのひよこは温めてあげないと死んでしまうので、ある程度の数をまとめて購入しないといけないのだそうだ。ということで、ニワトリが欲しい人たちが集まって、共同購入をするという方法が一般的だそう。私もその仲間に入れてもらうことにした。

頼んだニワトリは「後藤もみじ」。羽が茶色で赤玉の卵を生む赤鶏で、国産のニワトリの育成を行なっている後藤孵卵場のブランド。環境変化に順応して丈夫で、おとなしく飼いやすいニワトリだという。ニワトリという生き物自体が、人に何百年も飼われることで進化した生き物だけれど、その中でも

  • 毎日卵を産む

  • 巣ごもりしにくい

  • 丈夫で強健

  • 卵が美しく品質が良い

  • 早く育つ

などの、人にとって機能的な部分がよく現れた個体を選別して、かけあわせたひよこがブランド化され、多くの養鶏場で飼われるニワトリを生産している。このブランド品種は固定種ではなく、F1(一代限りの雑種)なので、後藤もみじ同士をかけあわせても、後藤もみじが生まれるわけではない。

人にとってはいいところの多いブランド鶏だけれど、人にとって機能的であることが、ニワトリにとっては不都合なことも多いらしい。例えば毎日卵を産むことで、カルシウム不足や、卵詰まりを起こしやすくなったり、早熟なことで、身を削るように卵を産まされて、寿命が短くなってしまったり。でも、その頃はそんなことまで知らなかったし、やはり毎日卵を産んでくれる、丈夫なニワトリがいいことには違いない。

さて次は、何羽育てるか。ニワトリは仲間意識があるので、数匹をまとめて飼う方がいいらしい。途中で病気などでいなくなってしまうことも考えたのだけれど、全員無事に育った場合、多すぎると小屋が狭くなってしまうし、用意するエサの量も増えてしまう。ので、うちではメス4羽を飼うことに決めた。後述する中島さんの本によれば、4羽のにわとりに必要な小屋の大きさは畳1枚分ほど。これならそう広くはない我が家の庭にも建てることができるだろう。

管理の上でも、あまりたくさんを飼うと固まって暖をとろうとしたひよこたちで、中央近くの子が酸欠になって病気になりやすかったり、圧死してしまったりすることもあるらしいけれど、4羽くらいならその心配もない。

ちなみにオスを飼えば有精卵が手に入るけれども、ひよこを孵すのではなく、食べる卵という意味では、有精卵と無精卵は成分的にほぼ違いはないそう。オスは群れを守ろうとするので、外敵(獣など)が来たときには闘ってくれるというようなよさがある反面、人にも攻撃的でつついてくることなどがあるという。そして、早朝コケコッコーと鳴くのもオス。住宅街にある我が家では、鳴き声が近隣で迷惑になるであろう予測はできたので、あまりメリットのなさそうなオスは飼わないことにした。

ただ、ちょうどその頃ドイツでは、雄のひよこを殺処分することを禁止する法律が制定されたことがニュースになっていた。人に役に立つかどうかで命を選別してしまうことの残酷さをわかりながらも、メスだけを育てるというエゴ。鶏にとって、鶏肉として食べられることと、育てられる前に処分されてしまうことと、結局殺されてしまうことに違いはない。そこにどう違いがあるのか、どうすべきなのか、いまだに私にはわからないが、オスを飼わないという選択に心苦しい部分があったのも事実。

いよいよひよこ到着の日。ひよこは、環境を変えるなら朝の方がいいということで、朝早く受け取りに行く必要があった。我が家では、私が仕事の前に取りに行く予定でいたのだけれど、息子も一緒に行きたいと言うので、平日の学校が始まる前ぎりぎりで一緒にひよこを受け取りに行く。

用意したものは小さなダンボール箱と、ペットボトルにお湯を入れ、いらなくなった靴下をかぶせた湯たんぽ。生まれたばかりのひよこは28度くらいの気温が必要なのだそうで、初夏の暖かい日であっても加温しないと弱ってしまうという。届くひよこは生後2日のもので、まだ卵の時から体の中に持っている水と栄養で生きていられるので、水やエサは必要ないんだそう。

受け渡し場所へ行くと、ちょうどひよこが到着したところ。平らな箱の中でたくさんのひよこがぴよぴよ言っている姿に取りに来たみんなメロメロになる。

息子が目があった子4羽を選ぶ。どの子も元気そう。持ち寄った箱に入れ、帰る車の中、ぴよぴよ言っていたひよこたちは、ダンボールのフタを閉めて暗くすると、とたんにおとなしくなった。

このときのひよこたちは、ふわふわの産毛につつまれていて、手羽などほんの少ししかない。まだ何が何だかわかっていない感じで、よたよたよろよろ歩き、もしかするとまだ目もはっきり見えていなさそうな感じ。でも、意外だったのは、脚ががっちり太く、爪もしっかりあること。よく、ひよこの絵を書くときに、脚は線で描くことが多いけれども、ぜんぜんそんな弱々しいものではなく、二重線で描きたくなるほどの、力強い脚だったのが印象的。

家に用意しておいたのは、やはりダンボール製の「ひよこのへや」。下にわらなどを敷くと良いということで、その辺のイネ科の草を短く切ったものを敷いておく。そして、裏山の腐葉土も少し。生まれてすぐのひよこは養鶏場であれば消毒除菌した部屋で管理されるのだろうけれど、それが逆に病気に弱いニワトリを育ててしまっている側面もあるという。ニワトリが育つことになる環境にあふれている微生物や菌に、まだ生まれながらの抗体をもっているひよこのうちに慣れさせておくことで、成長してからも病気しにくい体になるという。

おぼれないように小さな器を伏せた皿に張った水は、水道の水ではなく、雨水を入れた。金魚が死ぬというくみたての水道水がニワトリにはよいはずがないという気がしたし、やはり雨水の中で増えていく光合成細菌や微生物が、ニワトリによいという話も聞いたので。

はじめてのエサは、勉強会で教わったとおり玄米を用意。はじめのうちは、聞いていた通り水も飲まず、エサも食べないでいたけれど、おぼつかない様子で一粒の玄米を食べたときはうれしかった。そして、この玄米一粒を食べると、米粒一つ部分の小さなフンをした。日が経つにつれて徐々に、刻んだ草やヌカなども与えていく。砂や土を入れると、ひよこたちは喜んでこれも食べる。新鮮な土にはよく見ると小さな微生物がたくさんいる。目に見えるものもあるし、見えないものもあるのだろうけれど、それらがきっとひよこにとって必要なものなんだろう。実際、初めは病気にならないか心配だったけれど、そんな心配は不要だった。

ひよこを育てるには温度管理が欠かせない。ひよこ電球と呼ばれるヒーターは、昨年ひよこからニワトリをそだてた庭先養鶏の先輩が貸してくれた。はじめのうちはペットボトルの湯たんぽも2つくらい入れ、さらに心配だったので、肌寒い日や夜間はホットカーペットも下に入れて保温した。

段ボールの底には子どもが学校の机の中に入れるために使っていたプラスチック製の引き出し。これがあれば土を入れたり、水をこぼしたりしても問題なくてなかなかよかった。いらないと思ったものも一応とっておいてみるものだな、と思う。

生後数日のひよこは気温30〜33℃くらいがベストだという。初夏の割に暑い陽気の中、熱中症にならないか、息苦しくないか心配ながら、ヒーターとゆたんぽを入れてふたを軽く閉めたダンボールの中にひよこを残し、後ろ髪引かれながら仕事に出かけた。

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庭先養鶏勉強会でこれがバイブル、と勧められたのが、中島正さん著「自然卵養鶏法」。養鶏家に向けた本だけれど、家庭で鶏を飼う場合にも使える技術が詰め込まれている。初版は1980年とかなり昔だけれど、中島さんご自身で実践し、集めたデータや方法が今でも十分参考になるし、令和の今読んでも全く古びない考え方が素晴らしい本。




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