見出し画像

#139 明和地所はなぜ建設を断念したのか? ⑪ 住民は配慮し合っている

 明和地所の住民説明会での説明内容に関して、住民・市民から多くの意見書が提出された。14階・高さ43メートルであることが問題だとした意見に対して明和地所は次のように回答した(太字部分)。
 建設地から周囲の状況を見ても、一定程度の中高層建物の存在が確認でき、用途地域も第一種住居地域であり、一定条件の店舗・事務所・ホテル等や、環境影響の小さなごく小規模な工場が建てられる比較的規制が緩やかな地域です。本計画が著しく景観を害するとは考えておりません。

 相模国分寺跡がある地域は、明和地所の回答にあるように、一定条件の店舗・事務所・ホテル等や、環境影響の小さなごく小規模な工場を建てることのできる比較的規制が緩やかな地域だ。

 その地域の一角に、国分寺跡公園と道路を挟んだ対面に国分寺そばという老舗そば屋がある。私はこの国分寺そばの前を通るとき、いつも感心する。素晴らしいと思う。と言うのは、近隣住民に対する配慮が実に細やかで徹底しているのだ。
① 換気扇の位置は隣家のない道路向きの壁。
② 飲食中の客の声は外部に漏れない。
③ 駐車場の位置を明記してあり、近隣住民の迷惑にならぬようにしている。
④ 営業時間は20時30分まで。
⑤ 過度な照明はなし。

 一般住宅地のなかで極く自然に共存している。国分寺そばの、そのあり方が美しい。

 もし、ある家の隣にレストランがあり、上の5点が正反対だとしたら、該当の家(ある家)はどういう生活になるだろう。
① 換気扇が該当の家向きにあるため、該当の家は換気扇からの騒音と不快な匂いに日々悩まされる。
② 窓を開放して(屋外のテラスでも)営業しているため、客の話し声・笑い声・食器の音が連日聞こえてくる。
③ 駐車場の位置が分からないため、駐車場を探す車が家の周りをウロウロする。私有地まで侵入してくる車もある。
④ 深夜まで営業するので、換気扇の騒音・客の声などで夜の静寂が得られない。
⑤ 賑やかに飾り付けられるため落ち着かない。

 不特定多数の人が昼前から深夜まで出入りして、その声が換気扇の音とともに響き渡る。これは駅周辺の商業地域なら極く普通のことだろうが、相模国分寺跡周辺は静かな一般住宅地なのだ。あり得ない話だ。

 相模国分寺跡がある一帯は比較的規制が緩やかな地域とされている。しかし、規制がなくとも、国分寺そばのような、近隣住民に十分な配慮をしている飲食店がある地域なのだ。住民はお互い、配慮し合いながら暮らしている。その地域に、比較的規制が緩やかだからといって明和地所は高層建築物を建設しようと計画した。
 そのことがそもそもの間違いだった。

(24.5.19)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?