9月入学の最大の争点は「いかに子供たちに納得してもらうか」である。メタレベルでの洞察を促すとは。
はじめに
コロナによる休校を機に、9月入学の是非に関する議論が巻き起こっています。僕自身は、9月入学は、長期にはメリットが大きいが、短期においては、移行期における学校関連従事者や学生の負担が大きくなると思っています。ただ、ここでは具体的な議論の内容について考えるというよりは、タイトルに示したように、なぜ、「いかに子供たちに納得してもらうか」というのが大切なのか、その理由を3つ示していきます。この疑問に応えうる主張が、世の中の賛同を得て大きな流れになると考えます。それでは。
理由①子供たちが当事者だから
9月入学に制度を変更するが決まったと仮定すると、関係する子供たちへの説明が、必要になります。子供たちが、理解し納得しないまま、9月入学を推し進めてしまうことは、子供たちにとってマイナスであり反感を買うからです。
よって、9月入学の議論を進める際に重要なことは、「子供たちが納得できるようなメリットを説明でき、かつ、デメリットの少ない移行の仕方を提示できるか」ということだといえます。
そう考えると、肯定派・否定派のどちらもが、ただ単にメリット・デメリットを主張するということに終始するのではなく、双方の意見を聞いたうえで、自らのデメリットを相殺できるような論を展開すべきなのである。
さて、では、どのような主張が子供たちを納得させるに足る主張となるのでしょうか。端的に言えば、相手を罵ったり感情的に否定するような反論の仕方は受け入れられにくいと考えます。また、9月入学移行期の子供たちにもメリットがあるのですよ、ということを示す必要もあると思います。さらには、長期的な目で見たときにグローバルの潮流に乗るということが、いかに重要かを分かりやすく示す必要もあるでしょう。
理由②分かりやすさが大事だから
この点については、議論一般に言えることですが、9月入学に関する議論においては、理由①で述べた理由からも「主張の分かりやすさ」は他の議論と比べてもさらに重要になります。
つまり、肯定派・否定派もそれぞれの示すメリットが自明であるということを子供たちにもわかるような形で説明できるということが大切になります。
また、先に示したように子供たちが納得できないようなメリットをもって9月入学を進めてしまうことは、多くの反感を招いてしまうし、賛同を得られることが難しいでしょう。さらに、難しい議論をすればするほど、議論は複雑になり、争点が曖昧になってしまうのです。例えば、9月入学のメリットは、「海外留学生の入学を促進し学校教育の多様性を促進する」ということだとします。ある意味自明な主張に感じるかもしれませんが、実はこのような主張は、子供たちが納得できる主張ではないのです。なぜなら、子供たちは「なぜ教育には多様性が必要なのですか」という疑問を抱くからです。これは、深い哲学的考察をもって応えるなければなりません。と同時に、実は、この点を分かりやすく説明するというのは、実は非常に難しいのです。
このように、経済的なメリットや理想論をもって、子供たちを納得させることは実は容易ではありません。それは、より深い哲学的考察を含むのと同時に難しい争点を分かりやすく説明する必要性を示唆しているのです。
このことから、9月入学の議論に際しては、一般的な政治における議論より一層の主張の明快さ・明確さが求められているのです。
理由③メタレベルでの「争点の再検証」を促すから
理由②では、子供たちから発せられるであろう「なぜ教育には多様性が必要なのですか」という疑問に答える必要があり、それは、より深い哲学的考察を含む述べました。これは、議論のメタレベルでの、「争点の再検証」を促します。
メタレベルで「争点の再検証」を促すとは、どういうことか。
先ほど挙げた例に則して考えます。「9月入学は教育の多様性をもたらす」という争点がでました。これに対して、子供たちは「なぜ教育には多様性が大事なのですか」とか「多様性ってなんですか」という疑問を抱きます。これが、まさに「争点の再検証」です。
つまり、「争点の再検証」とは、ある争点に関して、哲学的思慮にとんだ疑問の提示や定義の明確性の検証、争点の再構築、を行うことです。
それは、まさに、子供たちの疑問に応えることであると同時に、子供たちの声をメタレベルに感じ取りながら、争点を再検証し議論を進めていく必要性を示唆しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。9月入学に関する議論は、子供たちに分かりやすく納得してもらう、というのがいかに大切というのがご理解いただけましたでしょうか。この議論においては、「子供たちを納得させること」とは、子供たちが当事者であるいうことと同時に、深い洞察をしているか・明確なメリットを示せているかという「論点の再検証」を促すという理由から大切だといえるのです。
9月入学を巡る議論においては、「教育の多様性」「経済成長の必要性」「グローバリゼーションの促進」「教育の在り方」「日本教育の独自性」「義務教育の在り方」「大学教育の目的」など、子供の目線に立ち返り、メタレベルで「争点の再検証」を行っていく必要がります。
9月入学に関する議論を深めて、賛成派・反対派の意見が大きく割れるようなときには、「子供たちが納得するか」という原点に立ち返らなければならりません。一貫性をもった深い洞察であると同時に、当事者である子供たちを納得させ、分かりやすく明確な主張ができる、ということが主張の大きな評価基準になると考えられます。
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