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強味の最小公倍数??そこから更なる発展?:Cストーリー(中野 美由紀)1

朝日が眩しい。通勤には、日傘が必需品。ちょっとした時間でも気になり日傘をさしてしまう。荷物も決して少なくないのに、面倒さを感じながらも日傘をさして交差点の赤信号を見つめている。
中野 美由紀、42歳。仕事は、社会保険労務士(社労士)である。

以前は、商社で営業企画の仕事をしていたが、労働環境に疑問をもち、ネットで調べたり、本を読んでいる内に社労士の仕事に興味を持ち始めた。そして一念発起して思い切って今の職場を退職し、社会保険労務士事務所へ転職した。始めは、見習いとして勤めながら3年ほど前に資格試験に合格した。2年ほど雇われ社労士として働いていたが、先輩の勧めもあり3年前に独立をした。今は、「中野社会保険労務士事務所」として一人で働いている。

顧客も先輩の紹介や、労働局の仕事もあり、日々忙しい毎日を送っている。そんな中、今後の仕事の在り方や、社労士として企業の人たちの役に立ちたい思いで考えを巡らせていた。

その日も事務所に向かう道すがら交差点で信号を見つめて、青信号を確認して横断歩道を渡り始めた時のことである。前からビジネスリュックを背負った体格のよい男性が自分の方へ歩いてくる。

(あれは、先輩労務士の田中先生だ!)

(田中):中野先生、おはようございます。今日もいい天気ですね。

(美由紀):田中先生、おはようございます。はい、天気がいいので日傘が手放せません。

(田中):女性は、いいですね。日傘があって、随分と違うんでしょう。

(美由紀):全然違いますよ。田中先生も使われたらいいのに、今は男性用の日傘もありますよ。

(田中):いや~この体格で日傘は、似合わんでしょう(笑)
  あ!そうだ、中野先生、今日のご予定は?良かったら昼飯でも一緒にどうですか?

(美由紀):いいですね。今日は、時間の調整できますよ。

(田中):そうですか。それでは、後ほど連絡しますね。

美由紀は、田中の言葉にピースサインで答え、自分の事務所へと向かった。
田中は、美由紀の10歳上で経験豊富な社労士である。事務所も大きくて3人ほどの社労士を抱えて事務所を運営している。確か、顧問先も随分多いと聞いていた。美由紀に独立を勧めてくれたのも田中だった。

午前中に顧問先の就業規則の見直しを行い、先方の担当者とのやり取りも比較的スムーズに終えたこともあり、気持ちも楽にお昼をむかえそうだと感じていた。

田中とは、田中の事務所近くのカフェレストランで待ち合わせをした。

(美由紀):田中先生からお誘い頂くなんて嬉しいですね。お忙しいのに、ありがとうございます。

(田中):いえいえ、最近のご様子を聞かせて頂ければと思ってですね。

(美由紀):わ~~!気にかけて頂いて感激ですね。ありがとうございます。
今のところは、少ないですが顧問先の仕事と労働局の仕事で一人で孤軍奮闘しております。
ただ、最近色々考えることもあって。。。

(田中):ほ~~!良かったら話しを聞かせてもらえませんか。アドバイスできるか分かりませんが。。。

(美由紀)田中先生に聞いて頂けるとは、光栄です。ありがとうございます。
実は、最近の労働環境とか会社組織の中での労使関係で、もっと自分がお役に立てることはないのかな?と思っていまして。。。何ができるかと分かっているわけではないのですが。。。

(田中):なるほど、まじめな中野先生らしい発想ですね。
確かに、最近の企業での労使関係の問題はコロナ禍の影響からの人員削減やハラスメントでの社内規定など複雑になってきていますね。特にコロナ禍でコミュニケーション不足を強いられて就職する新入社員もこれから増えるでしょうし、問題山積といったところでしょうか?

(美由紀):そうなんです。一人で何かできるというわけでは、ないのですが。。。何か社会の力になれるというか、社労士の使命感みたいなものを感じているんです。

(田中):そうですね。私も同じ思いです。社労士の仕事も様々あります。経営者の方も色々な環境の変化に対応しなければならず、苦労されている話を聞きます。また、人材確保の問題や社内風土の問題など、私たちが外から見ていては、分からないことも多いようです。
それで実は、顧問先の社長の紹介もあり、あるビジネスコミュニティに参加しているんです。そこで、他の業種の方や弁護士、税理士、行政書士などの士業の方と情報交換をしているんです。
同じ社労士の方とも色々とお話しをしています。

(美由紀):え!そんなところがあるんですか?

(田中):私が参加しているコミュニティは、月に数回の交流会やビジネススキルのセミナーなんかも開催していて、皆さんから刺激も頂きながら仕事への活力にもなってます。

(美由紀):へ~~!いいですね。なんかすごく楽しそうですね。

(田中):経営者の方を中心に情報交換できるし、若い世代から経験豊富な経営者まで参加しているので、情報満載です。課題のリサーチにも繋がり私もとても勉強になっているんです。良かったら中野先生も参加されてみませんか?一度、主催者の佐倉さんに会われるといいかと思いますよ。私も時間調整できる様なら同行しますよ。

(美由紀):わ~~!ありがたいです。すごく興味あります。

美由紀は、田中の言っていたコミュニティを調べてみることにした。ネットやSNSにコミュニティの説明やイベントの様子などが掲載されているとのことだったので、事務所に帰って早速見てみた。

田中が言う様に、様々な業種の方が集まっている様で、月に何回かのイベントで交流会やセミナーを開催している会員制のコミュニティだった。毎月の開催の様子やコンセプトもしっかりしている様に感じた。良く言われている異業種交流会とは違っている感じだ。

美由紀は、田中と時間調整して、主催者に会ってみることにしてみた。アポイントは田中が取ってくれて、来週の月曜日の15時に田中と主催者の佐倉の会社へ訪問することになった。

当日、田中とは、15時前に会社のあるビル前で待ち合わせした。田中と佐倉は付き合いも1年ほどだが、結構頻繁に食事をしたり飲みに行ったりしているとの事だった。イベントにも比較的参加をしているとのことだった。

ちょっと早めに着いた美由紀は、スマホで場所を確認しがら、ビルのエントランスで待つことにした。LINEで田中には、自分のいる場所を伝えたので、大丈夫だろうと思っていた。

暫くすると、田中かがやって来た。

(田中):中野先生、すいません。お待たせした様ですね。

(美由紀):いえいえ、私が少し早めに着いてしまったので、時間通りです。

(田中):よかった。それでは行きましょう。

佐倉の会社は、比較的大きなビルの7Fにあった。ビルの案内に会社名が掲示されていたので、美由紀も確認済みだ。
会社の受付で挨拶をし、会議室に通された。暫くすると佐倉が会議室に入って来た。

(佐倉):田中先生、今日はありがとうございます。相変わらずの忙しさでしょう。

(田中):いえいえこちらこそ、ありがとうございます。忙しくしている割には、全然痩せません。(笑)今日は、同じ社労士の中野先生をお連れしました。

(美由紀):初めまして、社会保険労務士をしております中野と申します。今日は、お時間拝借しまして、ありがとうございます。

(佐倉):こちらこそ、お忙しい中ご来社頂きありがとうございます。コミュニティを主催している佐倉と申します。

(田中):実は、中野先生とは以前からご縁があって、時々情報交換したりする仲なんですよ。 それで、先日もランチしながら話している時にコミュニティの話をさせてもらって、佐倉さんに会ったみたら、ということになりまして。。。

(佐倉)そうだったんですね。ありがとうございます。田中さんとは、この1年ぐらいですかね。とても仲良くさせて頂いているんですよ。もっぱら飲み仲間って感じですが。。。(笑)

(美由紀):田中先生から伺っております。大変、仲良しなお二人とお聞きしてます。お二人ともお酒強そうですね。

(田中):私はそうでもないですよ。佐倉さんは、結構強いですけどね。

(佐倉):いや~~。酒好きなだけです。それで、今日はどの様なお話しなんでしょうか?

(美由紀):ありがとうございます。佐倉さんは、色んな業種の方とお会いされていると思います。特に経営者の方が多いと田中先生からお聞きしました。
実は、社労士として働く中で、今後の労使関係や人事のことなどについて自分で何か出来ることはないのかな~と田中先生に相談したところ、佐倉さんにお会いして話してみたらと言って頂いたんです。

(佐倉):そうですね。私が主催するコミュニティは、個人事業主や小規模事業者から中小企業まで、色々な業種の経営者に参加して頂いています。
中野先生のお話しにあった様に今は、コロナ禍による人員の問題やハラスメントの問題、幹部教育の問題と色々な話題が出ていますね。

(美由紀):佐倉さんは、その辺どの様にお考えなんですか?

(佐倉):私は、労使関係とかの専門でもありませんので、法的な問題や専門的な部分はわかりません。ただ、アドバイザーとしてお話しをお聞きして行く中で諸問題への解決に繋がる様なお話しをできればと思っております。まずは、現状の問題や課題についてお話しを聞く事が大事だと思っているので。。。

(美由紀):そうですよね。今、現場で起きている事を知ることが大事ですよね。

(佐倉):お話しをお聞きすると、経営者のスタイルも様々ですが、やはり時間が取られたりするので、問題や課題があることは認識していても、対応する行動までいかない場合が多い様に見受けられます。

(田中):佐倉さん、先日二人で飲んだ時に話されたことを中野先生にお話し頂けないですか?

(佐倉):はい。わかりました。
先日、田中先生にお話ししたのは、士業の先生達って自分の専門の部分には当然深い知識と経験をお持ちだと思います。ただ、営業というか価値の提供へのプレゼンというのが苦手な方が多いと思います。また、今企業が抱えている問題は、複雑に色々な法律や規則が絡みあっていると思うのです。
中野先生もそれをお感じになられているのではないですか?

(美由紀):その通りです。それで、一人でどうこうできる問題でもないし、それでも解決しなければいけない問題は目の前にあるので、そこをなんとかできないか?という思いでいます。

(佐倉):そうですよね。先日、田中先生にお話ししたのもその事なんです。私がお話ししたのは、それぞれの専門家でチームを作って頂けないか?というご相談でした。
弁護士、社労士、行政書士、司法書士などの士業の先生や保険、コンサルのお仕事の方などがチームを作って頂いて、課題に対してチームで対応できる環境を作れないかと言うお話をさせて頂いたんです。

(美由紀)そう。それなんです。私もそんなことをイメージしてました。

(佐倉)これは、特別なことでもなく色々な業種ではチーム制で開発を行ったり作業を行っています。デザインの専門家がいて、プログラムの専門家がいて、ネット戦略の専門家、データ分析の専門家などのチームでホームページやSNSの戦略を行ったりしてます。また、最近話題の事業承継の問題では、司法書士や弁護士、保険会社がチームを作ってM&Aや承継の問題に対応しています。

(美由紀):確かに、そうですね。

(佐倉):実は、これは「強味の最小公倍数から最大化を目指すことなんです」

(美由紀):最小公倍数ですか。。。なんか突然難しくなりましたね。

(佐倉):すいません。突拍子もない感じがしましたか?
それぞれの強みをマッチングして、付加価値の高いものを作るということなんです。
カレーととんかつの強みで出来上がる、カツカレーみたいな(笑)

それぞれの皆さんの得意技を集めるという単純なことなんです。日本と言うのは、どうしても標準化するオールマイティーを望む感じがします。ですから弱味を補完して、総合力を上げる様な考えた方がベースにあると思うのです。しかし、小規模な事業を中心に今の時代は、それぞれの個性に注目して、それぞれの強みが連携することで新しいものが創造できることが大事だと思っています。
そして、連携する仲間がお互いに起点となって、チームで対応できる様にする。それが、多様性に対応できる方法と思っています。それぞれの事業の中でご相談やご要望に対応する中で、個人で対応できなければ、チームでそれぞれの専門家が解決していく。

(美由紀):なるほど、それぞれの強みを掛け合わせた「最小公倍数」の起点を作り、そこから展開していくということですね。

(田中):さすが中野先生!その通りです。
 この話を先日佐倉さんから飲みながら話をしてもらって、私も連携やチームについて考えてたところだったんです。チーム制は、よく聞く話ですが、その目的や運営の部分が難しいと思うのです。でもここには佐倉さんがやられているコミュニティがあり、運営は佐倉さんのご経験やお力添えを頂ければ、面白いチームができるのかな?と思っています。

(美由紀):確かにそうですね。私がイメージしたことの中で、現場で起きていることや環境の変化、法律の改正や新設され法律など、自分一人で解決できる問題でないことが、モヤモヤしてたのかもしれません。お話しを聞いて、何かすっきりした感じがします。

(佐倉):もちろん、チームをつくることの意義が大事であり、皆さんのお考えを共有することが肝になると思います。売上や利益に貢献することも大事な要素になるかと思います。
補助金や助成金とか言った行政の支援の情報も、各事業者が得るためには、役所やネットなどを調査しないと得られない情報が多いです。それを、中野先生やチームの専門家が発信してくれる。その対応をチームでやってくれる。
人材教育の場をチームで作って頂ければ、小規模事業者や個人事業者も複数の会社と合同で出来る環境も作れると思います。
異業種の中でもコラボレーションできることは沢山あります。新しいビジネスモデルを作ることで、新しいサービスや事業が起こせることもあると思います。

(美由紀):今注目されている「SDGs」への対応にも繋がりますよね。サステティナブルな開発・改革に繋がるということですね。

(田中):ん~~中野先生、素晴らしいです。私よりもはるかに理解されている感じですね。

(佐倉);今は、ジェンダーの問題やハラスメントの問題など、メディアが取り上げる様になり、企業側もその必要性だったり、法的な対応が必要になっています。もちろん、表向きのお飾りの対応でなく、しっかりと結果を出していくことは、企業価値を上げることになります。

(美由紀):佐倉さん、凄いです!田中先生に漠然とご相談していたことが、具体的なイメージになってきました。是非、その仲間に入れてもらえませんか?

(佐倉):是非、中野先生のお力添えも頂きたいです。コミュニティの中には、色んな専門家や業種の方がいらっしゃいます。それぞれが「強味」の部分に注目して連携する。掛け算の関係性を作れば、イノベーションも起こせると思います。

(美由紀):わくわくしてきました。既に、頭の中に色んなことが浮かんでいます。

(佐倉):嬉しいですね。そのイメージを言語化や図などで可視化することで、より深く共有できます。思いもよらない業種との連携も生まれたり、新規事業が生まれるビジネスチャンスにも繋がると思います。

(美由紀):佐倉さん、是非コミュニティに参加させてください。そこで、色んな方とお話ししたいと思います。経営者の考えや課題も聞いてみたいです。

(佐倉):ありがとうございます。是非ご参加下さい。難しい話よりもまずは、気軽に仲間づくりをされていくと、ビジネスコミュニティの目的に集まる仲間ですので、楽しく連携する仲間が作れると思いますよ。田中先生も既にコミュニティでは、人気者になられてますし。。。

(田中):いや~~、体がでかいだけです。一様心もでかいですよ!

こうして、美由紀は佐倉の主催するコミュニティに参加することになった。佐倉の話に将来の可能性を感じたし、これから自分がやる目的も明確にイメージできた。

佐倉の「言語化」「図」への可視化するということも凄くヒントになり、会社に戻るとすぐに頭の中にあることを書き出してみた。佐倉から言われたことだが、書き出すことで頭が整理すると同時に文字で目から入る情報にすることで、新しいイメージや書き出した文字や図が繋がっていくと課題やテーマにすることも浮かんできた。

早速、これを田中と共有しながら、コミュニティで作れる仲間と共有できる様にしたい。なんか、今日は眠れなくなりそうだ。。。


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