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鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)㉕

学習院大学山岳部 昭和34年卒 右川清夫

 何に対して誰がどのような責任を取るのかに続いて、責任の取り方、どのように責任を取るのかを考えてみたい。

 形式的責任については、状況に応じてであるが、先ず遺族に対して誠意ある謝罪をしなければならない。 謝罪と並んで、リーダーの辞任、登山活動の自粛、あるいはグループ、などの解散等が考えられる。

 実質的責任については、夫々個人がリーダーとともに、遭難の原因となった自らの行動についての深刻な反省に基づいて、遺族に対して謝罪することだ。 ここで重要なのは、謝罪に誠意が込められているか、それが遺族に伝わるかということだと思う。 伝わっていれば、遺族と当事者らとの間がこじれたりすることは考えられない。

 登山活動の自粛、グループ、部などの解散も責任を取る方法であるが、具体化については、リーダーと関係者の個人も含めたメンバーとの協議で決めることになろう。 山岳部等の場合は、当然、OBもその協議に参加することになる。

 責任を取るという場合に触れねばならないのは、その法的側面である。責任と法的措置との関係ということになろう。

 登山の遭難における責任は、関係者に悪意がなく意図的なものもない以上、「倫理的責任」と理解すべきかと思う。 それは、遺族に対して遭難を引き起こした行動についての深い反省に基づく誠意のある謝罪によって果たされるのであろう。 「倫理的責任」を果たすのに、これ以外の責任の取り方は考えられないのである。 謝罪に込められている誠意が遺族に伝われば、刑事、民事訴訟が起こるとは考えにくい。

 一般に、「倫理的責任」は「法」では裁けない。 それに前述のようにリーダー、メンバー個人の行動に悪意も意図的なものもないとなれば、法的には過失責任を問うことになろう。

 しかし、現実を見ると、このような事例のことごとくに過失責任を法廷で問うということは、混乱を引き起こすというより、事実上不可能だと思う。

「鹿島槍天狗尾根遭難を総括する(遭難)(原文)㉔」から

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