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脳出血当事者が1人暮らしで上手くやっていくコツ〜休日編〜

この記事では脳出血発症から半年後、1人暮らしを再開したオオサワが「生活の再建」のため、休日に意識しているポイントをまとめています。

▼脳出血当事者の1人暮らし(平日編)はこちらへ

脳出血当事者で後々は一人暮らしをしたいと考えている方や、その支援者の参考になれば幸いです。

脳出血当事者の休日に必要なこと

脳出血当事者にとっての休日は「疲労」を取り除くための時間

疲労は「神経疲労」「精神疲労」「肉体疲労」の計3種類存在し、互いに関係し合っています。

特に神経疲労はデスクワークなどで視神経や脳が緊張した状態が続くことで起こる疲労で、高次脳機能の低下にもつながります。

たとえば、神経疲労を恢復させたいなら、残り2種類の疲労もケアする必要があるのです。

▼疲労と脳機能の関係について知りたい方はこちらへ

この3種類の疲労(神経疲労・精神疲労・肉体疲労)を恢復させるために有効なのが、次の5つのアプローチです。

1.運動…20分以上の散歩(オオサワの目標は5km以上)

2.休養…足湯や湯舟に浸かる、リラックスする

3.姿勢…麻痺側が内に入るため、壁に肩甲骨をつけて正しい姿勢を認識する

4.睡眠…外部刺激がない状態で7時間以上の睡眠

5.食事…1日3食(特に朝昼をしっかり食べる/オオサワの場合、空腹時の方が活動しやすいので朝はミロとバナナのみ)

▼参考記事

この記事では疲労恢復のための5つのアプローチのうち、運動・休養・姿勢の3つに注目して、1人暮らしをする脳出血当事者の休日の様子をご紹介します。

脳出血当事者で後々は一人暮らしをしたいと考えている方や、その支援者の方の参考になれば幸いです。

1日の流れ~家事・買い出し・教養~

ここから本題の休日の流れについてご紹介します。私が平日を穏やかに過ごすために気を付けているのはタイトルにある3つのポイントです。

1.家事:洗濯・掃除(部屋、猫用品)など平日には出来ないタスクをこなす

2.買い出し:なるべく近所で1週間分の食料と日用品を買う

3.教養:神経心理学や脳科学・編集ライティング・マーケティングいずれかのジャンルについてインプットする

「家事」の中には上記以外で、免疫介在性貧血を患う愛猫の2週間に1度の通院も含まれます。

そして土曜日のタイムスケジュール例は次のとおりです。

休日

平日と比較するとタスクが細かく分かれており、外出は半日かかる場合もあります。

つまり、私にとって休日は「疲労恢復」だけではなく「日常生活を営む上で必要なタスクを片付ける日」

ただし、1日にこなせる大きなタスクの数は3つが限界なので、それ以上の予定は入れないように調整しています。

また疲労恢復のためだけではなく、脳機能の低下も防ぐために、土日のいずれかは「5km以上の歩行」を習慣化しています。

歩く距離を決めて、合間でタスクを片付ける

土日のどちらかは5Km歩けるように予定を組み、その間にタスクをこなしていきます。例に取り上げた日は午前中に愛猫の通院があり、その後は夕方まで外出をすることにしました。

特に外出の予定がない場合は近所の公園におにぎりを持参して、散歩をしつつ休憩時間に読書をしています。

ちなみに4月3日(土)の歩行距離と歩数は次のとおりでした。

ここでさきほどお話しした「疲労恢復」にもつながる「脳機能が向上するスケジューリング」についてご紹介します。

脳の血流改善~午前中から歩く~

なぜ午前中なのか?

脳出血により、脳細胞が欠損している私たち、脳出血当事者が快適な日々を過ごすには「残った脳細胞をどれだけ効率(健康)的に使いこなせるか」を探究する必要があります。

そこで参考になるのが脳神経外科医の築山節さん著『脳が冴える15の習慣』(2006)です。

本著によれば「足や手や口を動かす運動系の機能は、脳の表面中央付近に分布」しています。

また「特に脚を動かす機能は頭頂部に近い領域が担っている」ため、午前中に一定の歩行をしておけば、脳に十分な血流が行き渡っている状態になります。

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▲脳皮質運動野の面積を記した「ホムンクルス図」

平日は自分の体調に無理のない範囲で働く。そして、休日の朝は平日と同じくらいの時間に起きて、散歩や外出をする。

午前中の歩行を習慣づけるだけで休日をダラダラ過ごして罪悪感を覚える機会も減りますし、何より脳機能の低下を感じにくくなります。

「休日までスケジューリングするのは不自由だ」と感じる方もいらっしゃるかと思いますが、1日にこなせる大きなタスクは3つくらいなので、それらを大雑把にGoogleカレンダーに入力してみるだけでも行動が変わると思います。

PCやSPの画面から目を離す

現代人は情報収集やアウトプットのツールとしてPCやSP(スマートフォン)を使います。私の場合、スマートフォンの1日使用平均時間はなんと…10時間です(!)

至近距離で平面を眺める時間が多い現代人。この生活を続けると視覚的情報から特定の方向に注意を向けにくくなります。

特定の方向に注意が向けにくくなると、次のような状態に陥ってしまいます。

・変化に疎くなる

・呼ばれても反応が遅くなる

・物忘れを指摘される機会が増える(注意を向け終わる間に伝えられた情報が脳に入力されないため)

右脳頭頂葉付近にある「空間認知能力」が最たる例ですが本来、私たちの脳には立体的な対象物を視覚で認知した後、注意を向ける方向を定める機能が備わっています。

しかし、平面ばかり見ている現代人の生活は「注意機能のチューニング能力の低下につながりやすい」。

これらのことから、脳出血で脳機能が低下している脳出血当事者は、より視覚情報をもとにした注意機能のトレーニングをする必要があるといえます。

休日にできる具体的なトレーニング方法は以下のとおりです。

・音楽を聴かずに散歩をする(視覚情報と聴覚情報の処理トレーニング)

・遠くを眺めた後、近くを眺めるなど注意の切り替えを意識する

・写真撮影など視覚情報メインの活動を楽しむ

常備菜づくり

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自立した生活1つ目のキーポイント「金銭管理」

生活費の中でも調整しやすい項目のひとつに「食費」があります。

食費を抑えるために多くの人が自炊をしているのではないでしょうか。

しかし脳出血を発症して片麻痺になった当初(発症1年以内)、私はほとんど自炊をしておらず、冷凍食品やカットサラダばかり食べていました。

家事で左手を使った細かい作業は苦手だし、休日を仕事の勉強に費やした方が良いと考えていたから(=生活基礎力を鍛えることからの逃避)です。

確かに平日も休日も仕事に関するインプットが多く、充実した日々を過ごせていましたが、月の食費は2万円弱。

当時の職場が忙しかったからとはいえ、今思えば食費にずいぶんとお金をかけていたな…と反省しています。

現在の食費は月7,000~8,000円に抑えられているので、その分を愛猫の治療費に活用しています。

▼脳出血当事者と難病の愛猫の生活について

また、これは女性の脳出血当事者ならではのポイントだと思いますが、自立した生活のキーポイント2つ目「スムーズに家事をこなす」は、日常生活で鍛える外ありません

中でもマルチタスクの処理が必要になる常備菜づくりは最適なトレーニングです。

毎月決まったメニューで問題ないので、最初は2品程度から常備菜づくりにチャレンジしてみると疲労感もなくおすすめです。

今では男性が育児休暇を取得したり、家事をこなすことも珍しくなくなってきましたが、結婚に対して男性が女性に求める条件の中には「家事」が含まれると発表した調査もあります。

また脳出血当事者は非発症者と比較して、生涯年収が少なくなる場合が多いと考えられるので、パートナーが収入を支える可能性も高くなる。

そうなると、脳出血当事者の女性は仕事に邁進するパートナーの日常生活を支える役割が与えられやすくなることも想像できるでしょう。

これらの条件から、私は休日の1日目には買い出しに行き、2日目は必ず常備菜を作るようにスケジュールを立てています。

肉体の休養~マッサージ・ストレッチ・姿勢の矯正~

マッサージの方法

夕方頃に外出先から帰宅すると脚の筋緊張をほぐすため、温かいシャワーで膝から下を温めます。

私は「浴槽にお湯を張るのももったいない…」とシャワーで済ませてしまっていますが、足湯くらいの贅沢はしても良いかもしれません。

その後はツイートでもご紹介したアイテムで足裏とふくらはぎのマッサージをします。

ストレッチの方法

私の場合、左脚の脛の筋肉の麻痺が顕著なため(筋電図で計測)、左足首が固まりやすい傾向にあります。

そのため、ストレッチングボードを使って固まりやすい足首の筋肉を緩めます。

また、順天堂大学がコロナ禍の在宅リハビリ用に作成した動画コンテンツを参照に、肩甲骨周囲のストレッチを行います。

▼自宅でできる症状別リハビリの参考動画

〔姿勢矯正の方法〕

私は急性期の頃から片麻痺が原因で巻き肩になっていたため、次の2つのストレッチを行っています。

①壁に背を密着させた状態で肩甲骨を寄せて壁につける

②座った状態で両手を握り、肘を伸ばすように上下に動かす

精神の休養~アウトプットと瞑想~

「平日も休日もスケジューリングして、精神の休養ができていないのでは…?」と思う方もいらっしゃるかと思います。

私の場合は漠然とした課題を解決できない状態に精神的な疲労を感じるため、休日はノートに「課題」と「解決方法の仮説」を書き出して対応しています。

▼愛用しているノート

また、瞑想はAppleWatchに搭載されている「深呼吸カウントダウン」を使って5分行います。

何も考えず、深呼吸をすることで自分の体調の良しあしを把握しやすくなりますし、活動的だった脳も休められます(自分の身体だけに集中することがコツです)。

さいごに~疲労を溜めない生活を~

ここまで、疲労(脳機能)恢復・タスク処理をするための休日の一例をご紹介しました。

これらはあくまでライフハックであり、休日でも午前中からしっかり活動できる大きな要因は「いかに平日にストレスを感じないで過ごせるか」を考えて仕事を選び、日常生活を送ることだと実感しています。

「to do」型のジョブ選びから「to be」型のジョブ選びに比重を置くことで、脳出血当事者でも快適に1人暮らしをして、満足な休日を送れるのではないかと考えています。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。

脳出血当事者として、またその支援者として健康で快適な生活のために実践していることがあればぜひ、コメントで教えてください✍️

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