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美容室でなんでも話すやつ

今の美容室に通い始めて10年以上になる。

美容師のSさんが独立する前からお世話になってるので15年以上のお付き合いになるのかもしれない。

Sさん一人でやってる白を基調として光がふんわり溢れるおしゃれな室内。タイマン方式で帰りにちらりと次のお客さんとすれ違うこともあるけど老若男女とわず、親子のお客さんも多いそんな美容室。

街の美容室、という気安さをもちつつでも流行にも敏感で女子のかわいくなりたい要望にももちろん全力で叶えてくれる。

「今回はパリのふんわりガール風にしてみました!」
もう基本お任せで何も私は口をださない。
散歩をして建設物から髪型のひらめきを得るというその独創性にカットからパーマから色まですべてお任せ状態。それでただの一度も「うーんいまいち」は経験していない。

2ヶ月に1度足を運ぶけどそこで私はいつもだいたい酒の話をする。
Sさんもお酒好きなのでおいしいつまみやはまっている酒の情報交換。

仕事の愚痴も家の愚痴も、将来の悩みもすべてぶつけている。

Sさんは深刻な話でもさらりと聞いてくれる。
なんでもない世間話のように、だからなんでも話してしまう。

人に話しても解決しない、答えを求めてない話をなんてことなく聞いてくれる。
「つらい!残業三昧!やめたい!」
「大変そうですね~。今週何時間残業?」

「いやな上司がいる!辛い!辞めたい!」
「いや本当大変そう…。その人何歳なんですか?ずっといるんですか?」
そしてだいたい酒とつまみの話に戻る。

今日も美容室へ行ってきた。
「仕事落ち着いたし、まぁ将来の不安がないわけじゃないけど勤められるかぎり勤めてこうかな。やりたいこととかもないし」
そんな話をしていた。
「Sさんっていつから美容師目指したんですか?」
普段一方的に話を聞いてもらって、酒情報やご当地情報はいただくけど私からSさんのパーソナルに関する質問することは珍しかった。

自意識過剰なもので、こいつ、俺に興味あるの?とか思われるのが怖かったのだ笑。10年の付き合いでようやく私の恐怖心も和らぎ、一線を越えてみた。

「中学生の時からですね」
年齢をちゃんと聞いたことはないけどたぶん30年以上前なのでは?!
その時から夢を追い続けて夢を叶えてるの、すごくない?!
美容師って憧れる人も多い職業だけど、辛そうなイメージもある。
「毎日が楽しい、髪型を考えるのも楽しいし、こうやっていろんな人とはなすのが本当に楽しい」そりゃ客相手にまさにお仕事なうで、「この仕事…つらいんすよ」なんて言えないだろうけど、でもキラキラしたお顔で言うその言葉は多分本当なんだと思った。

私、ものすごい衝撃を受けた。
仕事を、労働を、楽しいという人がこの世にいるんだ、と。
そりゃたくさんいると思う。
でもこうして言葉ではっきり聞いたのは初めてだったかもしれない。
やりがいがある、は聞く機会が多いけど、仕事が楽しい、は聞いたことがなかった。


この衝撃は
楽しい仕事でまんまは食べられないのよ。
仕事とはやりがいがあったらラッキー、それでもつらいものなのよ。
自分がそういう固定観念を自分が持っていたことに気が付かせてくれた。

だからどうという事はないけど。

でも、仕事は楽しくてもいい。今日知ったこのことが、今後のかじ取りに数ミリの影響があればいいなぁ。

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