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「司法書士特別研修」の講師を振り返って

縁あって、昨年、今年の2期にわたり、司法書士特別研修(司法書士が簡裁訴訟代理等関係業務を行うために必要な研修のことです)の講師を担当しました。

詳細はこちら:特別研修│日司連研修総合ポータル (nisshiren.jp)

これは毎週土曜日(最終週だけ日曜日も)に、1日6時間前後の講義や模擬裁判を合計6日間行うという、私の中では非常にタフなものでした。
色々心がけながらどうにかやり遂げましたので、備忘録がてら、記事を作成しました。
誰かのお役に立てればうれしいです。いつか何かの講師をするときに、自分の役に立つかもしれません。


複数対応

1期目に話をいただいたとき、概ね6時間の講義が毎週続くという講義量や、資料の内容が膨大であったことから、一人でやり切れるのか、かなり心配になりました。
そのため、私が信頼する事務所の後輩に、一緒に講師を担当することをお願いしました。この時複数対応を選択したのは間違いなく正解でした。

毎週あれだけの資料を読み込んで、起案の添削をして、模擬裁判を取り仕切って、ということを一人で対応しなければならないとなると、ぞっとします…。
受講生の立場に立っても、講義のクオリティが上がったのではないかと思います。
フィーは半分になってしまいますがね(笑)


受講生はテキストを持っていないこと

講師の手元には、膨大な資料や模範起案例などがあります。
他方、受講生の手元には、模擬裁判の事例など若干の資料を除けば、ほとんど資料が無いようです。また、講師からレジュメを配布することは不可とのことでした(かなり謎ルールです)。

そのため、受講生は、(6時間の講義の日であれば、)6時間にわたり、先がどうなるのかわからない話を聞かされ続けることになりかねません。
しかも、割りと専門的で複雑なテーマが多いため、口頭でだけ説明を受けてもよくわからず、皆さんが寝てしまうのではないかと、かなり危惧しました(ただでさえ、私の滑舌が悪いので…)。

そこで、オンラインの授業(前半3回がオンライン)では、ワードの画面を共有してそこに板書をしたり、手書きで添削した起案のPDFデータを画面共有したりしました。
(1期目は、起案を画面共有せず口頭でのみ起案の講評をしたのですが、わかりにくかった可能性有り。)
また、対面の授業(後半3回が対面)では、ホワイトボードに板書をしたり、板書は大変なので事前に作成したメモ・資料を配布したり(資料配布不可なので、写メにでも撮ってもらって回収しました。)、添削した起案のコピーを配布したり(これも、最後は回収しました。)しました。

どこまで有効だったか不明ですが、話だけ6時間聞き続けるよりは、わかりやすかったものと信じています。


時間が余りがちであること

1期目に担当してわかったのですが、この講義は時間が余りがちです。
証人尋問の模擬裁判を行う日もあるのですが、民事の証人尋問は見たことも無いという方も多いので、この日は特に早く終わりそうになります。
そして、一度良かれと思って30分ほど早めに終わろうとしたのですが、立会係の司法書士の方に、早めに終わってはならないと言われ、そこからの30分間を埋めるのに非常に苦慮しました。

そこで(他の項目と重複しますが)、
示す資料を多めに用意する
・起案の講評も、添削した起案を示しつつ、どこをどう直すと良いか、細か目に伝える(当たり前のことかもしれませんが)
・尋問の模擬裁判の日は、自分なりに反対尋問事項を作成して行って、講師にて実演してみる(全く裁判の実務経験が無い方よりは、さすがに自分の方が尋問力があるだろうと期待して)。
などの工夫をしました。
その結果、2期目は、時間が余って時間を埋めるためだけの中身の無い話をする、ということは無かったと思います。

本当は、簡裁訴訟代理等能力認定考査の過去問の分析をし、余った時間で過去問を解いてもらうか、少なくとも、過去問を意識した講義をできればよかったのですが、そこまでの余力がありませんでした…。


事前準備が極めて大事であること

この講義の講師を担当してみて、
・取り扱う内容のレベルは決して低くない(二段の推定の細かい話など、司法修習で習ったはずなのに、忘れてしまっていること多数!)
・そのため、漫然と資料を読み上げるとお互いによくわからないことになりそう
・きちんと検討したうえで講義をしないと時間が余ってしまう
と感じましたので、事前準備が極めて大事であると感じました(何事もそうですが)。

具体的には、事前に資料をしっかり読み込んで、補充するべき事項や質問するべき事項、時間配分などを綿密に検討して毎回の講義に挑みました。
それでも、満足の行く講義ができたかというと微妙(特に滑舌)ですが、今後に生かせれば良いものと考えるしかありません。


その他

2期目の講義の途中で知ったのですが、簡裁訴訟代理等能力認定考査試験の本番は、六法を参照できないようです。
試験の現場で六法を見ればわかるように、ということを念頭に教えていたのですが、暗記すべきポイントなどをもっと強調するなどしておけば良かったかもしれません。


今回は以上です。

今年の司法書士特別研修を受講した皆様(特に、千葉会場で受講した皆さん)が、無事、簡裁訴訟代理等能力認定考査に合格することを祈念致します!


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