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【中小事業者向け】様々な債権回収の手段

1 いろいろな債権回収の場面

 事業を営んでいると、

・売掛金の回収
・請負代金の回収
・貸付金の回収
・リース料の回収
・不動産賃料の回収
・賠償金の回収
・マンション管理費の回収

など、日常的に債権回収を行うことになりますよね。

 当然のことながら、できる限り未回収の債権というものが生じないようにしなければならず、債務者がなかなか支払いをしない場合にも、低コストで債権回収を図らなければなりません。
 スムーズに債権回収を行うためには、どのような工夫をすればよいでしょうか。

・交渉による回収
・人的・物的担保による回収
・民事保全手続きを利用した回収
・訴訟手続き・強制執行手続きによる回収

に分けて、簡単に説明をしたいと思います。

2 交渉による回収

 債務者が約束通りに支払わない場合、まずは交渉により債権回収を試みることになります。
 その方法としては、

・電話や手紙を送って催促をする
・内容証明郵便を送って催促をする

などの方法が考えられると思います。

 交渉の結果、債務者が支払いの約束をした場合には、書面化することが大事ですが、さらに、約束違反をした場合にすぐに強制執行手続きへ移行できるよう執行証書という公正証書を作成することが考えられます。

 いずれにせよ、粘り強く交渉することが大事です。
 その結果、「御社にだけはしっかり返済をしなければならないな。」と思わせることができるかもしれません。

 また、債権回収とはやや異なりますが、日々取引先とコミュニケーションを取る中で、その取引先の信用に疑義が生じたのであれば、徐々に取引を縮小したり、支払いサイトを短くしたりすることも考えられます。取引先とのコミュニケーションは重要です。

3 人的・物的担保による回収

 御社が単に一般の債権を有しているだけだと、万が一の際(例えば、債務者が破産したり民事再生をしたりした場合)には、他の債権者と同順位でしか債権回収を図ることができず、満足な弁済を受けられないかもしれません。

 十分に債権回収を図ることができるよう、相手方と契約締結をする際に、

・人的担保(連帯保証人や連帯債務者など)を徴求する
 
なお、保証については、令和2年4月施行の債権法改正により、利用できる場面が狭められましたので、せっかく連帯保証人を付けてもその保証契約が無効にならないか、十分に注意する必要があります。
※保証の規定の変更点については、下記法務省のHPをご覧ください。

・物的担保(抵当権や質権、譲渡担保権など)を徴求する

などの対策を取っておくことが考えられます。

 また、契約締結時にあえて担保権の設定契約をしていなくとも、動産売買先取特権(民法321条)や不動産賃貸先取特権(民法312条)など、自動的に担保権が発生していることがあります。このような法定担保物権が成立していないのかも、忘れずに検討しましょう。

(不動産賃貸の先取特権)
第三百十二条 不動産の賃貸の先取特権は、その不動産の賃料その他の賃貸借関係から生じた賃借人の債務に関し、賃借人の動産について存在する。
(動産売買の先取特権)
第三百二十一条 動産の売買の先取特権は、動産の代価及びその利息に関し、その動産について存在する。

4 民事保全手続きを利用した回収

 債務者が、例えば債権の存在を争うなど、支払う意向を見せない場合には、訴訟提起をして、裁判手続きの中で和解ができなければ判決を得、判決が出ても支払わなければ強制執行をしなければなりません。

 しかし、訴訟提起をして強制執行をするまでには、半年や1年以上の期間を要することは珍しくありません
 その間に債務者が、不動産を売却したり、預貯金を散逸させたりするなど、せっかく判決を得ても、回収できない財産状態になっていることがあるかもしれません。

 そのようなことが起きないよう、不動産や預貯金などを仮に差し押さえる、などの民事保全手続きを取ることも考えられます。

 また、預金債権の仮差押をすると、債務者が金融機関から借り入れをしていた場合に借入金の一括返済を求められるようになる(期限の利益が失われる)ことがあります。そのため、預金債権の仮差押えをすると、債務者がすんなり支払いをしてくる、ということもあるかもしれません。 

5 訴訟手続き・強制執行手続きによる回収

 債権者として権利を実現しようとする場合、最終的には訴訟手続き、及び、債務名義取得後の強制執行手続きを利用しなければなりません。
※突然出てきた「債務名義」が何かという点については、下記裁判所のHPをご覧ください。

 判決は債務者の意向に関係なく言い渡されるが、他方で、裁判上の和解は債務者も納得したうえで合意をしているので、判決よりも裁判上の和解の方が、その後きちんと債務者が支払う可能性が高い、と一般的にはよく言われています。私の感覚としても、確かにそのように思います。

 訴訟手続き→強制執行手続きという流れが、権利実現のためのオーソドックスな手続きですが、時間も費用も掛かる重い手続きです。
 このようなコストのかかる手続きを取らずに債権を回収できるよう、日々検討をしていく必要があるでしょう。

6 弁護士への早期相談のおすすめ

 ここからは宣伝めいた話になってきますが、弁護士への相談が早ければ早いほど、債権回収の方法について多様なアドバイスを受けることができます。
 顧問弁護士や知っている弁護士とできる限り密にコミュニケーションを取り、遺漏なく債権回収ができるよう努めてください。

 今回は以上です。

 もし私にご相談いただけるようであれば、下記リンクを通じてご連絡ください。オンラインでのご相談も承っております。

 記事をご覧いただき、ありがとうございました。

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