世界標準の経営理論:第3部ミクロ心理学ディシプリンの経営理論
今回は、「世界標準の経営理論」(入山章栄先生著)のうち、「第3部 ミクロ心理学ディシプリンの経営理論」を読み進めました。
今回は、第3部で挙げられていた経営理論の中で、「センスメイキング理論」について記載します。
1 センスメイキングの理論とは
センスメイキングの定義は、多義的なものであるようですが、入山先生は、センスメイキングの理論を
組織のメンバーや周囲のステークスホルダーが、事象の意味について納得 (腹落ち)し、それを集約するプロセスをとらえる理論
と定義づけています。
これだけだとわかりにくいかもしれませんが、「納得」、「腹落ち」がキーワードの理論のようです。
具体的に解説をしていきます。
2 センスメイキングの全体像
ビジネスを取り巻く環境は、新しかったり、予想外だったり、混乱的だったり、不確実だったりします。
センスメイキングの理論は、先ほど述べた通り、
組織のメンバーや周囲のステークスホルダーが、事象の意味について納得 (腹落ち)し、それを集約するプロセスをとらえる理論
です。
センスメイキングのプロセスを3つにわけると、
⑴ 感知
情報・環境の感知
⑵ 解釈・意味付け
情報・環境を様々な解釈により意味付ける
⑶ 行動・行為
多義性を減らして行動し、環境に働きかける
というプロセスに分類できるようです。
まとめると、新しい・予想外な・混乱的な・不確実な環境・情報を感知し、その環境がどのようなものであるのか解釈・意味付けし、行動に出て、さらに環境に働きかける、ということのようです。
各プロセスの中身を見てみます。
3 プロセス1:環境の感知
センスメイキングが重要となる環境として、以下の3つが挙げられています。
⑴ 危機的な状況
市場の大幅な低迷、ライバル企業の硬性、急速な技術変化などに直面したときのことです。
私も、コロナの緊急事態宣言下で、裁判所の停止、社会が動かないことによるリーガル需要の急減という危機的な状況に直面しました。
⑵ アイデンティティへの脅威
急激な業界環境の変化により、自社の事業・強みが陳腐化してアイデンティティが揺らいだ場面などです。
⑶ 意図的な変化
企業が意図的に戦略転換を行うときにも、それがいままで行ったことないあたらしいものなら、センスメイキングが重要になるとのことです。
入山先生は、次のような理由で、今、日本企業にセンスメイキングが必要であるとしています。
現在、多くの日本企業が急速な事業環境の変化に見舞われつつある。そしてこの急激な変化の中では、企業自身が意図的に変化し、イノベーションを創出しなければ生き残れない。しかし一方で、「そもそもこの会社の存在意義は何か」が揺らいでいるために、自社の大きな方向性に腹落ちがなく、結果として変化ができない企業は実に多い。
非常に耳の痛い話です。
4 プロセス2:解釈を揃える
同じ環境でも、その環境をどのように解釈するかは、人によって異なります。
この本では、その例として、ソニーの社員内でも、「ソニーらしさ」の解釈が、「ソニーは、(金融やエンタテインメントも含めて)広くイノベーションを追及する会社である」としたり、「ソニーはエレキ(電気機械)の会社でなければならない」としたりと様々であることが挙げられています。
そして、組織・リーダーに求められるのは、多義的な解釈の中から特定のものを選別し、それを意味付け、周囲にそれを理解させ、納得・腹落ちしてもらい、組織全体での解釈の方向性を揃えることだとされています。
リーダーは、周囲を腹落ちさせることができるストーリーテリングに長けていなければなりません。
5 プロセス3:イナクトメント(行動を起こし、環境に働きかけること)
解釈の足並みを揃えたら、次は組織としては、実際の「行動」に出ることになります。
そして、センスメイキング理論では、「行動」が重要とされています。
この「行動」については、「何となくの方向性」でまず行動を起こし、環境に働きかけ、新しい情報を感知することが必要であるとされています。
「イナクトメント」とは、このように、環境に行動をもって働きかけること言うようです。
「新規事業の計画も(ろくろを回してから次第につくりたいものがわかってくる優れた陶芸家と)同じで、まず初めはとにかく行動し、やがて次第に大まかな方向性が見えてきて、さらに形になっていく」
という一節が引用されていましたが、まさにそうだと思うと同時に、忙しくて新しいことをするのって後回しになっちゃうんだよね、とも思いました。
6 未来をつくり出す
入山先生は、
「優れた経営者・リーダーは、組織・周囲のステークホルダーのセンスメイキングを高めれば、周囲を巻き込んで、客観的に見れば起きえないような事態を、社会現象として起こせる」
といいます。
私も、自分を取り巻く環境についてしっかりと解釈し、周囲の協力を得ながら行動をし、できる限り多くの皆様のお役に立ちたいものです。
今回の記事は以上です。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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