世界標準の経営理論:第2部マクロ心理学ディシプリンの経営理論
以前講義を受けたことがあり、その内容がとてもわかりやすかった入山章栄先生の著書「世界標準の経営理論」を購入しました。
800頁以上もある非常に分厚い本なので、読み始めることがないま本棚に置きっぱなしになっていましたが、ようやく最近少しずつ読み始めました。
読み始めて感じたのが、講義同様、非常にわかりやすくとても面白いということです!帯に書かれている通り、どの章も驚くほど一気に読めます。
まずは「第2部 マクロ心理学ディシプリンの経営理論」から読み進めてみたので、以下、自分の業務に役立てることができそうだと思ったことをメモ的に記します。
1 人の認知の限界
まず、人の認知には制限が無いと暗黙に仮定する古典的な経済学とカーネギー学派の考えとの違いに触れられた部分です(208頁)。
人の認知には限界があると考えるカーネギー学派では、人は行動によって徐々に認知を外に広げると考える((別の箇所で触れられている)サーチや、「知の探索」がそれに当たる)。行動の結果として新しいことを知った人は認知の範囲を少し広げるので、それを頼りにまた行動範囲を広げ、またさらに認知の範囲を広げていく、ととらえる。
引用している記事等で出口治明氏が述べている『「メシ・風呂・寝る」から「人・本・旅」へ』に近いものと感じました。
私も、同じ場所にとどまることなくいろいろな行動をし、認知の範囲を少しずつ広げたいと思います。
2 人・組織は合理的であるがゆえに、慢心する/うまくいっている時に、目線を高く保つ
213頁に次のような記載があります。
組織は満足度が低いほどサーチをする傾向がある。逆に言えば、満足度が高まれば企業はサーチをしなくなるということでもある。もちろん実際には、組織にとってさらに満足できる選択肢がこの世には存在するはずだ。しかし、サーチ行動はコストも、時間も、認知的な負担もかかる。したがって企業は現状に満足してしまうほど、「これ以上のサーチは行わない方が合理的」と考えてしまう。
組織の話ではありませんが、私の経験上も、現状がうまくいっていると思い込み始めると、気が緩んで現状を維持するだけで向上することを怠ってしまい、気が付くと周りに置いて行かれている、ということが何度もあります。
自分は良くできていると思い込まずに、向上心を持ち続けることが何より重要ですね。
3 ダイバーシティは、一人でもできる
最近、よく取りざたされているダイバーシティ(人材の多様性)ですが、243頁では「一人ダイバーシティ」という考え方が披露されています。
「ダイバーシティは一人でもできる」。知の探索・深化の理論に基づけば、ダイバーシティの本質は、知の探索を促すためにある。だとすれば、「一つの組織に多様な人がいる」(=組織ダイバーシティ)ことも重要だが、「一人の人間が多様な、幅広い知見や経験を持っている」のなら、その人の中で離れた知と知の組み合わせが進み、新しい知が創造できるのだ。
私が所属しているような小さな組織では、絶対的な人数が少ないので、人材の多様性と言っても限界があるように思います(思い込みかもしれませんが)。
そのため、このような組織では、それぞれが「一人ダイバーシティ」を実践することが重要なのではないかと思いました。
4 ルーティン
この本では、組織・集団が繰り返す行動パターンすなわち「ルーティン」を「組織のメンバーが同じ行動を繰り返すことで共有する、暗黙知と形式知を土台にした行動プロセスのパターン」と定義しています。287頁では、
得られた知が、組織内で「当然のように埋め込まれた習慣」にまでなってしまえば、認知負担は大幅に下がる。すると組織の認知キャパシティに余力が生まれるので、さらに学習を続けられる。進化理論のルーティンは、組織メンバーが似た行動を繰り返すことで、それが「意識しなくても、この組織では当然の行動」としてパターン化され、埋め込まれていくことだ。
とされています。
私の身近なところで考えると、同僚同士がどこでも情報を共有できるようにこういうツールで情報の管理を行うと決めておく、誰が事案を引き継いでもすぐに中身を把握できるように記録の管理の仕方を決めておく、事案が解決したら機械的に顧客にアンケートを送付し顧客の声を聴くようにする、等、一つ一つは小さなことかもしれないですが、途方もない作業ですね。
入山先生は、もっと大きな話をしているのでしょうが、この程度しか思いつきません。
5 まとめ
「世界標準の経営理論」の第2部から読んでみましたが、とても面白く、日々の業務で役立てられそうな情報・アイディアが散りばめられていました。
他の部も読了次第、役に立ちそうだと思ったことを記事にしてみたいと思います。
記事をご覧いただきありがとうございました。
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