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借入金を住宅購入以外の用途にも用いている場合など【住宅資金特別条項付き個人再生⑤】

 例えば、住宅購入時に金融機関から借り入れをし、その借入金を住宅購入費用以外にも、諸費用の支払いに充てる場合があります。

 住特条項付き個人再生を行う場合、抵当権によって担保されている被担保債権が「住宅資金貸付債権」(民事再生法196条3号)に該当しなければなりません。
 借入金の中に純粋な建物購入資金以外のための資金が含まれている場合、どの範囲であれば「住宅資金貸付債権」に該当すると認められるでしょうか。

 今回は、「住宅資金貸付債権」の範囲について取り扱います。

1 「住宅資金貸付債権」の定義

 民事再生法196条3項では、住宅資金貸付債権は、次のように定義されています。

三 住宅資金貸付債権 住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいう。

 この定義は、次の3つの要素に分解できます。

① 住宅の建設もしくは購入に必要な資金又は住宅の改良に必要な資金貸し付けによって生じた債権であること

② 分割払いの定めのある再生債権であること

③ 当該債権又は当該債権に係る債務の保証会社の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されていること。

 今回は、どのような場合であれば①の要件を満たすのかについて説明をします。

2 住宅ローンの借り換え(〇)

 新たな住宅ローンが従前の住宅ローンと入れ替わるにすぎませんので、①の要件を満たし、「住宅資金貸付債権」に該当します

3 リフォームローン(〇)

 住宅資金貸付債権の中には、「住宅の改良に必要な資金の貸付け」によって生じた債権も含まれます
 したがって、リフォームローンも「住宅資金貸付債権」に該当します
 リフォームローンも、住宅ローン減税の対象であることなどに配慮されているとのことです。

4 諸費用ローン(×となる可能性)

 りそな銀行のホームページによれば、諸費用ローンは、

不動産仲介手数料、保証料、火災保険料、登記料、引越費用をはじめとした住宅取得に関わる諸費用をサポートするためのローン

です。

 このように、諸費用ローンは住宅購入資金とは別の用途に用いられるものですので、「住宅の建設もしくは購入に必要な資金」とはいいがたいです。

 ただし、諸費用ローンの使途が契約上明確で、その額が住宅ローンと比較してかなり少額である場合などには、住宅資金特別条項の利用が認められている例もあるようです。

5 住宅ローンの使途の一部に諸費用の支払いが含まれている場合(×となる可能性)

 「諸費用ローン」と同様、直ちに「住宅の建設もしくは購入に必要な資金」に該当するとはいいがたいです。

 諸費用に充てられた比率などによって住宅資金貸付債権に該当するか判断されるようです。

6 住宅購入代金を長期分割払いとしている場合(〇と解される)

 住宅販売業者に対し、住宅購入代金を長期分割払いとして支払う約束をし、割賦売買代金債務を被担保債権として抵当権を設定するケースもあります。

 このような場合、①の要件の「貸し付けによって生じた債権」にカチッと当てはまるわけではありません。

 しかし、住宅販売業者による割賦売買でも、金融機関が住宅購入資金を融資する住宅ローンも、経済的な実質は異なりません

 また、租税特措法41条1項1号では、宅地建物取引業者から住宅を取得した場合の業者に対する割賦売買代金債務は、住宅ローン減税の対象とされています(住宅資金貸付債権の範囲は、住宅ローン減税の適用対象を参考に決められています)。

 このような理由から、住宅の割賦売買代金債務も、「住宅資金貸付債権」に該当するのが相当と考えられています

7 分割払いの請負代金債権(〇と解される)

 建築業者に対する住宅の建築請負代金債権が分割払いになっており、この請負代金債権を被担保債権として抵当権が設定されている場合もあります。

 この問題も、住宅購入代金が分割払いとなっている場合と同様、「住宅資金貸付債権」に該当するのが相当と考えられています


 今回の記事は以上です。
 別の用途に資金が利用されている場合には住宅資金貸付債権に該当すると言い難くなるようですが、住宅を取得するために負担した債務が借入金でなくとも比較的救済されそうです。

 記事をご覧いただきありがとうございました。
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