「弁護士に相談した方がいい」とはどういうことか

 そもそも弁護士に相談した方がいいというはどういった場合でしょうか。ここでは、私が皆さまからのご相談に対してその判断をお伝えする際にどのようなことを考えているか、①弁護士に解決できるお悩みか、②弁護士に依頼するメリットがあるかという2つの観点からご説明します。

画像1

1 弁護士に解決できる問題である

 弁護士への依頼があなたにとって利益にならなければ依頼をする意味はありません。そのため、(1)法律では解決できない問題や、(2)解決できるとしても勝ち目がない問題については、弁護士に依頼する必要はありませんし、ご依頼をおすすめすることはありません。

(1) 具体的な法律問題である

 法律で解決できない問題に対しては、弁護士はほとんど無力です。たとえば、弁護士は「どうすれば離婚できるか」という問題には答えられても「どうすれば結婚できるか」という問題には答えられません。
 ですが、法律問題かどうかを気にして相談をためらう必要はありません。法律で解決できるかどうかが既に難しい問題だと上記の記事でもご説明しました。このように悩むあなたにこそ来ていただきたいと考えています。

 抽象的な問題についても弁護士が解決することはできません。ときおり「自衛隊は合憲か」といったご自身に関係のない法律論を持ってくる方もいらっしゃいます。私の見解ごときに何の権威も価値もありませんが、具体的な法律問題でないことが明らかな場合はあらかじめ相談料をいただきます。

(2) ある程度の勝ち目がある

 法律で解決できる問題だとしても、そもそも勝てる見込みがない場合や、皆さまに有利な解決することができない場合は往々にしてあります。弁護士は専門的な知見を活かして法律の枠内でうまく立ち回ることはできますが、法律そのものを曲げることはできません。その場合、(3)との兼ね合いはありますが、弁護士にお金を払うだけ無駄といわざるをえないでしょう

2 弁護士に依頼するメリットがある

 法律で解決できる問題だとしても、解決には一定の費用や時間がかかります。これらを考えると、(3)弁護士に依頼してもなお得られるだけの利益がなければ、あなたに損をさせてしまうことがあります。ただし、利益があったとしても、掛けた時間や手間に照らして割に合わないこともあります。

(3) 利益が費用を上回る

 多くの法律事務所の最低料金は11万円です。こちらが完全に勝ったとしてもそれ以下の利益しかないような場合、弁護士保険に加入されているなどの事情がなければ経済的には損ということにならざるをえません。
 弁護士が入っても赤字になる可能性が高い場合は、基本的に依頼する必要はないでしょう。大雑把な目安として、あなたの希望が全て通っても30~50万円の利益にならないような場合は、ご依頼いただくよりは他の解決策を検討された方がよいという結論になることが多いと思われます。

 もちろん、弁護士に依頼するメリットは金銭的なものだけではありません。相手方やその弁護士と直接やりとりしなくて済むのがその一つです。あなたがこうしたメリットを重視されるならば、費用面でいくらか割に合わないとしてもご依頼をおすすめすることがあります。

3 まとめ

 「最近は弁護士の仕事も少ないそうだが、報酬ほしさにどんな事件でも依頼した方がいいと言うのではないか」と疑われる方もいらっしゃるでしょう。その疑問も当然です。しかし、もし私がその疑問を向けられたとすれば「そこまで困ってない」とお答えします。弁護士への高い信頼を裏切ってまであなたにメリットのない提案をする必要は私にはありません。

 私にお話いただいた方の中ですぐにでも弁護士に相談した方がいいとお答えした方は1割程度です。皆さまとはLINEでいつでもやりとりができるからです。他の事務所であればその場で料金をいただいていたような方でも、しばらくは様子を見られるようになりました。その間に問題が勝手に解決したこともよくあります。こちらの方が、早々に弁護士料金をお支払いいただくよりもずっとよい解決ではないでしょうか。戦争で利益を得るのは武器屋の弁護士だということを、私は忘れてはいけないと思っています。

画像2

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?