デジタル医療, 規制が阻む‐法律と政令って何が違う?-

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66784320Z21C20A1TJC000

ゆー「記事の中に薬機法と薬機法施行令の関する規制[1]の話題が出てきたけど、前者は法律で、後者は政令なんだよね。二人は法律と政令の違いってわかるかな?」
えふ「えーー、わかんねーー笑
知らんよそんなもんww
法律?は、ギリわかる。政令?何それ美味しいの?」

ゆー「意外と知られていないよね~。法律と政令の違いが、今回の記事で指摘されている申請から承認までの期間の長期化とも関係しているから、これらの違いについて少し解説を加えるね!」
えふ「わっしょい!!!」

ゆー「中学生の頃の公民の授業で、『国会は唯一の立法機関である』って習わなかった?」
えふ「なっつーー、やったわwww」

ゆー「憲法41条には、、、」
えふ「素数ww」

ゆー「『国会は唯一の立法機関である』と規定されているんだけど、僕らが習った内容は、まさにこの憲法41条の内容だったんだよ。」
えふ「ふむふむ」

ゆー「薬事法施行令の冒頭の記載を確認してみよう!確認してみるとこんなことが書かれている。
『内閣は…この政令を制定する』」
えふ「ん?ん?」
けー「国会が唯一の立法機関のはずなのに、内閣が立法してるじゃん!そうすると、憲法98条に反して、薬事法施行令ってもしかして違憲なんじゃないの?」

ゆー「けーまた、するどいwww」
けー「学部時代の教養でもわかるよ!(ドヤァ)」
ゆー「甘い甘い、基本事項だから社会に出て恥ずかしい思いをする前に俺が教えてあげよう!」
けー「・・・」

ゆー「憲法73条を確認してみて欲しい!
柱書には、『内閣は左の義務を行う』。6号には、『憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。ただし、その法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。』と記載されている。」
えふ「やばいやばい。すでにちょっと怪しいwww」
(えふは日本語に弱い)

ゆー「73条6号を解釈すると、法律の委任があることを前提に、内閣による政令の制定が予定されているんだ[2]。日本語に弱いえふにはわからないかもしれないけれど、優秀なけーは理解しているよ。」
えふ「僕、がんばる」
けー「余裕余裕、えふはプログラミング言語しかわかんないからな」

ゆー「つまるところ、、、」
えふ「最初からつまれや!!」
ゆー「憲法は国会による立法だけでなくて、行政機関による立法を許容しているんだよ。」
えふ「それならわかった!」

ゆー「法律は国会が制定したものである一方、政令は内閣が制定したものであると言えるね。今回の記事で、触れられている法律について改めて整理すると、薬機法は国会立法である一方、薬機法施行令は行政立法ということになるね。[3]」
えふ「ふむふむ。えふ納得。」。

ゆー「冒頭の記事では、承認までに申請から半年間もの時間が必要であることについて言及されているね!承認までの間に、多くの時間が必要になるのは、薬機法施行令が行政立法であって、行政機関が「人の生命及び健康に与える恐れがほとんどないもの」(薬機法施行令別表第一のプログラム各号参照)に当たるか否か等について、さまざまな資料等を参考にしながら専門的判断を要することが強く影響しているんだよ!![4]」。
えふ「承認まで時間がかかるのもやむを得ないのか…」

ゆー「次回は今回の薬機法改正の概要について今回の記事の内容を踏まえて解説するよ!!」
けー「ちょうど、この前、お客さんと話題になったから関心があるな~」



[1] 「医療機器」(薬機法第2条第4項)の製造販売には、厚生労働大臣の承認が必要になる(薬機法第23条の2の5第1項)んだけど、「医療機器」の定義は法律によって政令に委任されているんだよ!薬機法施行令の別表第一のプログラム各号では、「人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの」(薬機法施行令別表第一のプログラム各号参照)が除かれているね!すなわち、一般的に国民がイメージする医療機器のうち「人の生命及び健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの」は、薬機法が定義するところの「医療機器」にはあたらないことになって、厚生労働大臣の承認は不要ということになるね!
[2] 憲法73条6号ただし書を解釈すると、委任がある場合には、政令で罰則を設けることができることになる。罰則ですら、制定できるんだから、当然、その他の事項に関する立法についても、委任がある場合には、内閣は政令を制定することができると解釈するのが通説。
[3] 行政立法も法律の一種なので、「法律」という言葉が、国会により立法されたものを指すのか、行政立法を含むのかどうかは、文脈に依存するね!
[4] 厚生省は以下のような内容の通知を発しているよ!!「プログラム医療機器の該当性の判断を行うに当たり、次の2点について 考慮すべきものであると考えられる。(1)プログラム医療機器により得られた結果の重要性に鑑みて疾病の治療、診 断等にどの程度寄与するのか。(2)プログラム医療機器の機能の障害等が生じた場合において人の生命及び健康に影響を与えるおそれ(不具合があった場合のリスク)を含めた総合的なリスクの蓋然性がどの程度あるか。 以上を踏まえ、汎用コンピュータ等に組み込まれて使用されるプログラムのうち、(1)医療機器に該当すると考えられるプログラム及び(2)医療機器に該当しないと考えられるプログラムの代表的なものについて、別添のとおり例示する。」 https://www.pmda.go.jp/files/000159993.pdf
厚生労働省の職員の皆さんが、これらの考慮要素を踏まえ、プログラム機器に当たるか否かを判断した上で、承認に値するか否かを半年間かけてじっくりと審査してくれているんだよ!!