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「黒田製作所物語」を読んで【創作大賞感想】


私は今、静かに押し寄せる感動の波に身を任せている。

それをたった一言で言い表すとしたら「読んで良かった」しかない。そもそも、私のようなド素人が、福島太郎さんの「ビジネス小説」に対して、感想を書くこと自体が間違っているのかもしれない。でも敢えて無謀にも挑戦させて頂きたい。





「黒田製作所物語を読んで」

人は生きる為に、飯を食う為に働かなくてはならない。しかし、どれほどの人達が自分の好きな職業に就いて、そこに生き甲斐を得られているだろうか。

黒田虎一と言う一人の人物が、戦争から復員を果たして来るところから、この物語は始まる。出だしは、当時の日本の説明が丁寧で地味である。地味と言う表現は失礼かもしれない。とにかく真面目だ。福島太郎さんが、この物語を書くにあたって、どれほどの地道な取材、調査に労力を費やしたかがよく窺える。

この物語には咲き誇るような華はないが、努力と苦労の上に実を結んだ「実」がある。どこまでも骨太なビジネス小説だ。
ビジネス小説と言う言葉さえ、軽々しいと思う。
戦後の日本の復興を目指して、虎一と言う職人に出来た事は「溶接」だけだった。
しかし、この「溶接」と言う確かな技術が、人を救い、人を育み、最後には「日本一きれいなステンレス専用工場」へと発展させていくのだ。

あぁ、こうして日本と言う国は育っていったんだと感銘を受ける。
顧客を従業員を、「人」を思う気持ちを第一にしてきた職人が築き上げた会社だったからこそ、見事な成長を遂げたのだと思う。
大切にされていたから、人は彼が亡くなった後も、その遺志を引き継いでいったのだ。

繋ぐ、繋がっていく……

戦後、焼け野原だった工場跡地に途方に暮れて立っていた虎一の思いが、今「日本一きれいなステンレス溶接専用工場」として福島の地に建っている。
戦後を生き抜き乗り越え、東日本大震災に襲われたにも関わらず、今度は父(虎一)の遺志を継いだ娘 美希が再建を果たした。

「黒田製作所物語」は、お仕事小説であって、お仕事小説ではないと私は思う(何を言いたいのだ、私は)
福島太郎さんの筆によって、生き生きと生きてきた「人間」の物語だ。
それも地に足の着いた堂々とした感動巨編である。

冒頭で私は「押し寄せる静かな感動の波」と言った。
それは何かを成し遂げた人達に対する生への賞賛と引き際の美だったのかもしれない。
虎一と言う一人の腕のいい職人が居て昭和という時代を生き抜き去って行った、しかしその後には「人」という財産が遺された。「縁」の数々も福島太郎さんは描いている。
この物語を読むと「生きる」ことの素晴らしさ、一人の人間の持つ可能性を感じずにはいられない。

号泣するのではなく、目頭に薄っすらと涙が浮かび上がってくるような温かな人間ドラマをあなたにも是非味わってもらいたい。




福島太郎さんへ

今の私では、こんな感想しか書けなかったよ(泣)来年は、もっと上手に書けるようになるから、きっとなるから、紡いでいきましょうね、一緒に、言の葉の物語を。

読ませて頂いて、ありがとうございますm(__)m
素晴らしい人々の生き様を描かれましたね。そして、これからも「黒田製作所」は繋がっていくんですね……


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