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天国の貴方に送るラブレター#贈りnote


ダーちゃん、そちらでも元気にしていますか?
天国は貴方が言っていたように快適ですか?
私は少し風邪を引いて長引かせています。でも元気だから心配しないでね。
付き合ってた時も結婚してからも、よく考えたら一度も貴方に手紙を書かなかったね。
今日、初めて貴方へラブレターを贈ります。

ねぇ、覚えてる?初めてのデート。
貴方はお気に入りのブルーのベレットで私を迎えに来てくれたね。
「何?この古い車?!」
って私が高ピシャに言うと
「これが好きなんだよ」
って、ドライブに出掛けたよね。
楽しかったね、本当にあの頃。
私のお誕生日パーティーで皆がそれぞれ沢山の薔薇の花束をくれたのに貴方だけは、いつまで経っても何もくれなかったよね。後からそっと外へ私を呼び出してベレットのトランクから「かすみ草」の大きな花束を恥ずかしそうにくれたっけ。
「華やかじゃないけど俺が好きな花だから」
って。
あのお花、ずっとドライフラワーにして飾ってたのに結婚する時のお引越しで、貴方が捨てちゃったんだよ。覚えてる?
「これからはもっともっと買ってやるから」
って。

嘘つき

お花なんて一度も買ってくれなかったじゃない。

「十本の指、全部にダイヤの指輪をはめてやるからな」

嘘つき

貴方が買ってくれたのは、2本だけだったよ。私の指は後8本残ってるよ。

私の婚礼家具がマンションに届いた日、ダーちゃんはダブルのお布団に真っ先に飛び込んで私を呼んだっけ。
「いいから、入ってみろよ!」
貴方の隣りに滑りこんだ私に
「ねぇ、sanngo、ふかふかで雲の中に居るみたいだろ」
って言ったよね。
あの時の少年のように嬉しそうな笑顔が、まだ私の瞼の奥に焼きついてるよ。
私達、いつもお金はなかったけど二人で工夫して乗り越えて楽しかったね〜。
貴方は皆の人気者で出掛けてばっかりだったけど、日曜日のお昼にはパスタとコーンポタージュを作って、必ず一緒に食べたよね。
色んなパスタを作りたいのに、貴方のリクエストはいっつも決まって「ミートソース!」
本当は子供みたいで、お洒落じゃなくて嫌だったんだよ。
食べた後は映画を観ながら、お酒を飲んだね。
幸せだったよね?
少なくとも私は幸せだったよ、ダーちゃん。

人が良いばっかりでお金儲けが下手で、だからいつもお財布の中はピーピーしてたけど、ダーちゃんが居るだけで幸せだった。
笑わせ上手で、おかしな話ばっかりしてて本当に太陽のようだったよ。酔うと大切なギターを引っ張り出して来てフォークソングを歌ってくれたね。
私はそんな貴方が誇りだった。

なのに、あの日
突然、私の目の前で貴方は倒れちゃった。
痛かったでしょう?
苦しかったでしょう?
でも最後の最後、意識が無くなるまで一言も「痛い」って言わなかったよね。

「男は痛いだ、痒いだ、暑いだ、寒いだって言わないの」
貴方の口癖。

意地っ張り

ダーちゃんは倒れた年、正月休みを抜かしてGWもお盆も全部仕事だったね。
ブラックもいいところだよ。
だから疲れちゃったのが原因なんて、私は言わないよ。だって本当の理由を知ってるもん。
6月のあの日、建て前が終わったダーちゃんは頭から血を流して帰って来た。
大工さんが誤って貴方の頭に木のトンカチみたいなのを落としたんだよね。
でも元請業者の建設屋さんの「労災」になるからって、ダーちゃんは
「大丈夫大丈夫」
って私の口を塞いだ。
大工さんのせいになっちゃうからって…。
あの時、もっと強く私が病院に行くように言っていたら、大工さんが心配してくれたら……
でも人生に「たら、れば」はない!

半年後にそこに出来た脳動脈瘤が破裂したんだよ。
だって私は見たもん。頭蓋骨を外した後の手術箇所はピッタリ、あの日の傷痕の下だったよ。

意地っ張り

バカバカバカ

どこまで人の為に生きたの?
どこまでお人好しだったの?ダーちゃん

でもダーちゃんとの約束だから、このラブレターで言うのは最初で最後にするね。
私は我慢強い貴方の女房だもん。

本当に一生懸命よく働いたから神様が休息を与えてくれたんだって信じてた。きっといつか目を覚ましてくれるって……

嘘つき

これがダーちゃんが人生で付いた最大で最高の嘘だよ。
いつもどんなに遊んでいても、必ず私の元へ帰るって言ってたじゃない。

なのに貴方はお骨になって帰って来た。

嘘つきでも意地っ張りでも、ダーちゃんが好きだよ、大好き。
もし来世があるなら、また私を探してね。
きっと探してね。
また夫婦になろうね、約束。


ダーちゃん、今度は守ってね、約束…

愛してる


sanngo



おだんご様の素敵な企画に参加させて頂きました。
生きている人へじゃなきゃ、ダメなんでしょうね。
でも私がラブレターを書く相手は一人しか居ないんです。
参加資格が無くても構いません。
ただ私が贈りたかったので…

よろしくお願いいたします。


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