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「エッセイ」通りゃんせ

このアパートに越してきて六年、四季折々の周りの変化にも慣れてきた。

オタクの私は、とにかく「お家時間」が長い(笑)と言うより大好きなんだから仕方ない。
だから「緊急事態宣言」や「マンボウ」の時は大手を振って家に居られて、すっごく嬉しかった(不謹慎でごめんなさい)
ハイ、変人です!

家の中に居ても季節の変化は感じることが出来る。
夏の間、エアコンを効かすために閉め切っていた窓を秋になって開け放す。
網戸になった寝室の出窓から、向かいの家のお爺さんの尺八の練習音が聞こえてくる。

「あ~、今年も元気だ!」

しかし時刻は午前5時!辺りはまだ薄暗い(笑)もう少し、もう少しだけ近隣住民の事を考えられないものか(苦笑)だから私が万年寝不足に…
いや、このくらい我慢しよう、お爺さんが元気なんだから。

「はる♪こうろうの〜♪はなのえん〜♪、めぐる、さ、さ、さ、……」

ガクッ(私がズッコケた音だ)

あ、今年もまた「荒城の月」おんなじところで、つっかえてる(笑)私が知る限りもう四年も「荒城の月」を練習中だ。

死ぬまでにコンプしろよ!(決してブラックで無し!)

そっと心で応援する(笑)

居間の大きな窓は決して開けない。
空気清浄機に頼っている。だって裏のお婆さんが怖いから(苦笑)
引っ越して来た当初、垣根を分けて勝手に私の住むアパートの敷地内に踏み込んで来た。満面の笑みをたたえて……

ひ、ヒェ~、なんだ!このお婆さん!!

「あんたの旦那さん、〇〇に単身赴任?」

いきなりのご質問!こ、怖っ!
本人は仲良くしたいご挨拶のつもりらしい。正直言って顔自体が
「何十年も私、性格悪いの〜」
って物語っている。

「いえ、主人は今、入院中です」
「へぇ~、じゃあ、あっちの駐車場に停まってた車は?」
「電気工事の業者さんですけど…シドロモドロ」
「ふーん、あ、私、裏の家の〇〇、仲良くしようね」

……

出来るかーーーーい!!


田舎「あるある」である(苦笑)
それからも洗濯を干す度に下着をチェックされ(派手で悪かったな)物は此処に置かないように!(私の家の敷地内だ)とご忠告を受ける。
精神衛生上よろしくないので、私はそのお婆さんとのご近所付き合いを辞めた。

ところが最近、そのお婆さん庭石に座って歌を歌い出した。窓を閉めていても聞こえてくる。
確か最初は「あの子が欲しい、あの子じゃ分からん」って動揺だったと思う。題名は分からない。

つ、遂にキタか?!
お爺さん、止めろ!お婆さんが呆け始めたぞ!
外でデカイ声で歌ってるぞ!!

先日は「通りゃんせ」だった。
これがまた怖い。日本の動揺って怖い歌多いよな~
庭石に座り、ビブラートを効かせ…
「ここは何処の細道じゃ、天神様の…」
あぁ、怖い!!


お爺さん!!
あんた、いい人じゃん、冬は私と一緒に灯油買う仲でしょ?
「婆さんがキツくてねぇ~」
ってよくこぼしてたじゃん。
お爺さん、頼む!出て来て止めてよーーー!!


某先日、お婆さんが何故、庭石に座り歌を歌っているのか、その謎が解けた。


私が朝風呂に入ろうとお風呂掃除を始めた時、普段は少ししか開けていない窓を秋の清々しい空気を入れようと大きく開けた。

「えっ!」


腰が抜けそうになった。
お爺さんが小さなお風呂場の窓のフチにしがみつき、風呂場の下に居た。

「キャーーー!!」


お婆さんは歌うのを辞め垣根を越えて、物凄いスピードでお爺さんに駆け寄って来た。

「このエロジジィ!!」

ビシッ!バシッ!

お爺さんを頭からぶん殴った。


呆けてしまったのはお爺さんの方だった。
お婆さんはお爺さんを庭で散歩させる時、暇なので歌っていたのだ(それにしてももう少しマシな曲の選択を)
六年の歳月は子供にも大きな変化をもたらすが、老人にも大きな変化をもたらすらしい。

もう二度と派手な下着は外へは干すまい!いや、お粗末なものですが冥途の土産で一度くらい(オイ!)
固く心に誓う秋であった。


さて、お風呂洗って来……





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