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小説(卑怯者)

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#卑怯者

卑怯者(最終話)

卑怯者(最終話)

翌日、テレビで大々的に取り上げられたのは日本中を大混乱させた黒幕である俺がビルの屋上から落ちて死んだというニュースだった。報道によると、俺は自分が起こした事件を後悔し、SNS上での誹謗中傷に耐えきれず、自ら命を絶ったという形で報じられた。

そして、もう一つのビッグニュースとして報じられたのは、昨日のサイトで映された人物は高田大臣ではなく人形だったということ。高田大臣は配信終了後に居場所を突き止め

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卑怯者(7話目)

卑怯者(7話目)

「さて、先ほど話した件ですが、やはり私が思った通りの結果になりましたね。では、約束はしっかりと守ってもらいますよ、高田大臣。」
「あぁ、分かっている。しかし、我々の想像以上の結果が出たものだな。今回の結果があれば簡単に法整備が進められそうだ。」

高田大臣は非常に満足げな顔をしていた。

「では、俺は今回の動画と誹謗中傷のコメントを持って、正式に被害届も出してくる。今回の件は、総理大臣を始めとして

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卑怯者(6話目)

卑怯者(6話目)

「閲覧者の皆さんから、コメントで諸々のご指摘を頂いたので、そろそろ私の自己紹介もしようかと思います。今から準備しますので、少々お待ちくださいね。私の自己紹介中もコメント機能は使えますので、コメント残したい人は存分に残してください。ただ、投稿した人は自分の個人情報が私たちに筒抜けになることは頭の片隅に置いてください。」

俺はマイクを切ると先ほどまで高田大臣が監禁されていた部屋に移動した。

「今か

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卑怯者(5話目)

卑怯者(5話目)

人間が死ぬ瞬間を見せられると、人はその驚愕の現実を受け入れることが出来ないらしい。暴れている瞬間までは、コメント欄で『殺せ』といった主張をしていた人たちや『早く誰か通報しろよ』と止めようとしていた人たち、様々な人がいたが、全く動かなくなった様子が映しだされた瞬間、ピタッとコメントが止んだ。

そして、俺のアナウンスが終わると、現実として受け入れることが怖いのか、『本当に死んだのか?』といった事態を

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卑怯者(4話目)

卑怯者(4話目)

「リーダー、サイト閲覧数もかなりの数が行きましたし、SNS上では炎上なんてレベルではなく大炎上状態になってます。」
「怖いほど順調だな。さて、別動隊の様子はどうなっているかな?」

俺はスマホを取り出し、とある所に連絡した。
「今の様子はどうだ?」
「そろそろ片付きそうです。でも、これ本当にやるんですか?」
「やると決めたらやるのが俺たちだろ?今更ビビってんじゃねーよ。」
「分かったよ。あと5分で

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卑怯者(3話目)

卑怯者(3話目)

「では、1発目のサプライズを発表します。」
アナウンスが終わり、テンションを上げるようなBGMが流れた後、誰もが予想していなかった光景がサイト上に映し出された。

高田大臣が脅されていた動画が消え、数十名程度の顔写真とイニシャル、年齢などの個人情報が次々と表示されていった。

突然の出来事に視聴者の戸惑いがコメントに反映されていた。コメントが洪水のように流れていく中、幾つかのコメントに違和感を感じ

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卑怯者(2話目)

卑怯者(2話目)

大臣が監禁されている動画は、なんの前触れもなく突如として日本中に配信された。配信には独自に作られたWebサイト上に掲げられ、誰でも動画に対するコメントを投稿できる仕組みになっていた。

「今、ネット上に動画配信されました。コメント投稿も問題なく出来ています。」
「よし、各所の準備は万端だな。じゃあ、今から最高のショーを開演しようか。」

リーダーがSNSにサイトを共有するように指示した。すると、1

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卑怯者(1話目)

卑怯者(1話目)

「目が覚めましたか、高田総務大臣」
頬を冷たい刃物か何かで叩かれながら、高田は目を開けた。しかし、すぐには視界がハッキリせず、自分が何処にいるのかがイマイチ理解出来なかった。手を動かそうと思った時、自分が縛られている事に気付いた。

視界も徐々にハッキリしてきて、自分が置かれている状況を理解してきた。どうやら俺は何処かの馬鹿どもに拉致監禁されているらしい。目の前にはカメラが設置されていることから、

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