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南インドでわたしは⑦-わたしの体を通り抜けていった風-

ふわっと、風が吹いた。
その風は、そのまま、わたしの体を通り抜けていった。

南インド。タミルナードゥ州マハーバリプラム。
チェンナイから海沿いに南へ約60km。ベンガル湾を望むのんびりとしたリゾート地。
南インド最終日は、この世界遺産の街にやってきた。

正直なところ、遺跡にはあんまり興味がなくて。歴史の授業をしていても縄文時代だの弥生時代だのはよく分かんなかったし、地球の歩き方をパラパラとめくっても「ここには行かないかな」なんてなんとなく思っていた。
でも、わたしの恩人valsalanさんをはじめ泊めてくれた友人もこぞって勧めてくれたものだから、ちょっと行ってみることにしたのだ。

到着すると、壮大な彫刻。
「アルジュナの苦行」
幅29m、高さ13mの岩に掘られた彫刻で、石を彫ったレリーフとしては世界最大規模の芸術。
とにかく、圧巻された。大型機械なんてない7世紀ごろ。日本の法隆寺も圧巻だけど、それとはまた違った趣。

所々にこんな可愛いゾウさんも彫られている。ゾウさんひとつひとつに、ちゃんと表情がある。

少し進むと、巨大な丸い岩が坂の途中で止まっていた。
「クリシュナのバターボール」
昔々、王様がゾウを使って動かしてみようとしたけれど、ビクともしなかった奇妙な岩。こんなにも傾斜があるというのに。
あんまりにも不思議で、思わず見入ってしまった。

東はインド洋を超えて、西は遠くアラビア海を渡って来る商人によって大いに賑わったというこの地。人々の生活にとってなくてはならなかったこの地で営まれていたという生活に、想いを馳せる。

「なんで」で説明のつかないものがたくさんある。理由はないけれど、ただそこに昔からある。
いや、わたしたちには分からないだけで、れっきとした理由があるのかもしれない。
外港から渡ってくる商人はいなくても、マハーバリプラムののどかで明るい雰囲気には、何か惹きつけられるものがある。

高台だからなのか、海の近くだからなのか、とにかく気持ちの良い風が吹く場所だった。その場に座って風を感じていると、わたしの体全体をその風が通り抜けていった。
灼熱のインドにいるはずなのに、暑さよりも気持ち良さが優って、いつまででも風を感じていたい。ただそう思った。

このままチェンナイに戻ったら、夜の飛行機で日本に帰る。それが惜しかったのかもしれない。
インドに来て、人の温かさに触れて、美味しいビリヤニを食べて、インド英語の奥深さを知って。。。
あと少し、いや、もっと。インドを知りたい。

インドから帰国して早2ヶ月。日本は、急に秋めいた風が吹くようになってきた。
今でもふと、灼熱の中のあのマハーバリプラムの風を思い出す。また、わたしの体を通り抜けていく風を感じたい。

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