広瀬和生の「この落語を観た!」Vol.144

7月14日(金)「擬古典落語の夕べ5」@深川江戸資料館


広瀬和生「この落語を観た!」
7月14日(金)の演目はこちら。

三遊亭けろよん『元犬』
立川寸志『の日』
春風亭昇羊『吉原の祖』
三遊亭兼好『夫婦岩』
~仲入り~
立川笑二『八五郎永劫回帰』
三遊亭わん丈『花魁の野望』

笑二・寸志・わん丈・昇羊の4人の二ツ目が自作の擬古典新作落語を披露する会。兼好は荻野さちこ作『夫婦岩』を演じた。

寸志の『の日』は江戸の大店「伊勢屋」の創業90周年を記念して「数字の語呂合わせで“伊勢屋の日”を決めるように」と主人に命じられた番頭の噺。あれこれ苦労しているうちに番頭には人の言葉が数字に聞こえるようになってしまい、さらには自分の発言まで数字に変換され……というバカバカしい発想を台詞として演じる大変さそのものが可笑しい、という仕組み。

昇羊の『吉原の祖』は、世間知らずの坊ちゃんが悪友の嘘を真に受けたのがきっかけで大人の階段を上る噺。

兼好が演じた『夫婦岩』は喧嘩した夫婦が隠居の知恵で仲直りする噺。夫婦がそれぞれ語る喧嘩の経緯が堪らなく可笑しいのは、兼好の演じる女房のキャラの楽しさがあればこそ。兼好の巧さが光る。

笑二の『八五郎永劫回帰』は『道灌』の冒頭の「まあまあ、おあがり」という隠居の台詞を「まんまおあがり」と聞き違える八五郎、というお馴染みのやり取りを、亡くなった八五郎がその都度転生しては隠居を訪ねて何度も繰り返す噺。転生した八五郎と対面する隠居はずっと同じ隠居、という不思議さを強引に乗り越える力技に感服。“転生”というテーマをここまでバカバカしく落語化するあたり、さすが笑二。

わん丈の『花魁の野望』は奉行に身請けされた花魁が「私もお裁きがしてみたい!」と奉行にせがんで次々に訴えを処理していく噺。花魁を思いっきり戯画化することで、荒唐無稽な設定を聴き手に納得させるわん丈の得意ネタ。

順調に軌道に乗っている「擬古典落語の夕べ」。次回「擬古典落語の夕べ6」は12月13日(水)日本橋社会教育会館にて、春風亭一蔵・柳亭小燕枝・入船亭扇橋が出演。


次回の広瀬和生「この落語を観た!」もお楽しみに!

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