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#8 ハイスクール・ララバイ/イモ欽トリオ

家にポータブルのレコードプレイヤーがあった。殿さまキングスの「なみだの操」、中条きよし「うそ」、宮史郎とぴんからトリオ「女のみち」など、ヒットレコードが無造作に置いてあり、8トラの北島三郎なども見た記憶があるので、親が好きだったのかもしれない。

小学生のころ、欽ちゃん番組のファンだった。欽ドン良い子悪い子普通の子、どこまでやるの、週刊欽曜日、とり舵いっぱい。ラジオもノイズに負けずLFの「ここからトコトン」を聴いていた。

小学生ターゲットという意味では、ひょうきん族やドリフなどの身体を張ったわかりやすい笑いに行きがちで、当然そちらにも大きな影響を受けたのだが、欽ちゃんがまわりを上手にアテンドしながら仕上げていく笑いにも興味があった。

山口良一は佐藤B作の東京ボードビルショー出身で、のちにオールナイトニッポン2部でも活躍、私の寝不足のタネとなる。〈深夜のふるさと案内〉が好きだった。長江健次はアイドル的人気を博し、突然ガバチョで鶴瓶の相方としても人気を得る。〈テレビにらめっこ〉は不滅のコンテンツだ。西山浩司はスタ誕時代からの欽ちゃん劇団のメンバーであり、のちに太陽にほえろ!で愛称:DJ刑事を務める。小柳美由紀とのニックじゃがあずとして松本-筒美作「ヨロシク原宿」の名曲を出す。


町に唯一のレコード店で探してみる。とはいっても、おもちゃ、書籍、文房具、化粧品などなんでも売っている町の雑貨屋さんである。その一角に盤見せのラックが2台ほどあるだけ。欽ドンの番組内では、イモ欽と中原理恵が歌を披露するコーナーも定着していた。

中原さんは大瀧さん作「風が吹いたら恋もうけ」も歌っていたような気がする。「ハイスクール・ララバイ」はチャートを駆けあがっていた。初めて買ったレコード。3人が両手のひらをこちらに向けてポーズをとるジャケット。小さなポータブルプレイヤーで聴いてみる。そのなんともいえない頼りない音質だけはしっかりと覚えている。

ビートは幸宏さんのライディーン。イントロのニュー・オーダーみたいな下世話な音色。TVのチャート番組も欠かさずチェックする。山口と西山のコミカルなエアバンドぶりが見事だった。

サウンドがアレなので細野さんによるYMOのセルフパロディであることは容易に想像できたが、山口良一が松武秀樹のパッチングの動作まで入れていたとは、大人になるまで気づかなかった。

「ルビーの指環」「奥飛騨慕情」と並ぶ81年を代表する曲となったわけだが、細野さんが30分で書き上げた曲が彼にとって初の1位楽曲となるわけなので、タイミングというのは恐ろしい。

欽ちゃんファミリーの音楽ユニットではさらなるモンスターヒットを生み出す“わらべ”。「めだかの兄妹」のアレンジは坂本龍一。アイドル的人気博したイモ欽を、細野はさらにダシに使う。83年、オッサンがアイドルをやってみる、というコンセプトのもと「君に胸キュン。」をヒットさせる。細野さん恐るべしである。


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