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実は根に持っていた事

私の親友には以前、だいぶ歳の離れた恋人がいた。友人達が付き合い始めた時、彼女はまだ23歳になろうかと言うところで、お相手は17歳年上、独身ではあったが、お付き合いが発覚したら間違い無く大問題になるお立場であった。
私は付き合い出す前の微妙な関係の頃から彼女がその方に入れ込んでいるのを見ていたし、彼女がだんだん特別扱いされているのも見ていた為に、彼女らがお付き合いしているのを知る、ほぼ唯一の存在になってしまった。

彼女のその方への入れ込み方は半ば宗教に近かったし、彼氏となった方にしたら彼女は17歳下のちょっとお馬鹿なところすら可愛くて可愛くて…という、お互いにとってはまさにこの世の春であったのだろう。秘密にせねばならぬ関係であったはずだが繁華街で頻繁にくっついて歩いていたようで知人とニアミスしては

どうしようバレたかも
見られたかも‼︎と

彼女は私にこぼすので、
一応秘密にしないと彼の方はお立場的に問題になるのではないの?もう少し考えて振る舞えないの?と至極真っ当な苦言を呈した。
すると滅多にキレない彼女がキレた。

なんでお互い成人していて悪いことをしてるわけでも無いのに周りにとやかく言われなきゃいけないの⁈と

当時の私、キレ返して良いと今でも思うが、その時は割と穏やかに宥めたと思う。私偉いな…。

だがその時思ったのだ。彼女が彼の年齢…40代になる頃まで私がこれを覚えていたならば
貴女今、17歳年下と20代前半と付き合えるの⁇と、聞こうと。

世間の歳の差カップルにとやかく言いたい訳でもないし、素晴らしいご夫婦もいる。悪い事でないのはもちろん、彼女が歳上趣味なのも個人の自由だ。
だがしかし、行きがかり上仕方ないとはいえ、私を唯一秘密を知る者として背負わせておいて、本人達はこの世の春よと好き放題、さらに逆ギレ。根に持つくらい許されると思う。

彼女とその方の恋は死別という結末で、彼女はとても苦しんだし、最近でもその方を忘れられないとこぼした。(実はそれで聞いてやろうと思い出した)
私は個人的にお相手に思うところがありすぎるので質問をぶつける躊躇はしなかった。

彼女は来年不惑。ちなみにあと四・五年は宿命大殺界である。新宿の街を歩きながら聞いた。
今、20代前半と付き合えるの?と

えっ…無理だね。無理無理…淫行罪が心配になっちゃう。

ふーん…と言いながら質問の意味が伝わって無いなと思った。

正確には17歳年下と付き合えるか聞いてる。あの方はあの時40歳だったはずよね、うちのパパと同い年だったわよね?と
(その頃私には40歳の自称パパがいた。身体の関係は一切なく、ご飯やお茶に連れ出してくれたりバイトの後送ってくださったりし、不安定な時は膝枕してくれ、愚痴を聞いてくれた奇跡のような存在だった。)

彼女は漫画のようにぐっ…と声を漏らし、
いや…無理…っていうかさ、私だって色々考えてなかったわけじゃないんだよ。思う事もあるよ。こんな急にぶつけて来ないでよ…
と言った。

ラデュレでイスパハンを買った。

イスパハンと改札を抜けながら私はキレられた事と経緯を話した。何分、彼女は驚異的に忘れやすいので先程の発言といい、私にキレた事は間違いなく覚えていない。

事の経緯を聞いた彼女は、ごめん…すまん…はい、大変申し訳ございませんでした。言葉を尽くしたので、
ま、付き合うの無理なのはわかってたの貴女だって歳上趣味だし。と言った後で、シニア俳句に歳上が好きだがもういないって句があった話しで笑いあってイスパハンにかぶりついた。

薔薇とラズベリーの香りとともに17年越しの溜飲は下がった。

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